脱温暖化・循環型社会形成(バイオマスタウン構想)

バイオマスタウン構想

 

牛久市バイオマスタウン構想とは

地域の人々の参加や子どもたちの総合学習の成果を活かしながら、バイオマスを活用する循環型のまちづくりを行う構想です。この構想は、地球温暖化や水質汚濁などの環境問題を解決するだけではなく、農業や観光など地域の活性化も目指します。それぞれが独立しているのではなく循環しているのが特徴です。
アサザ基金は牛久市と協働で作成段階から構想を進めています。植物油を原料にした燃料で、軽油の代わりにディーゼルエンジンに使えるバイオディーゼル燃料(Bio Diesel Fuel 略してBDF)の製造から供給を、牛久市の委託を受けて2009年8月から始めました。

バイオマスタウン構想の取り組み


ナタネの栽培:耕作放棄地を活用して菜の花を育て、油を絞ります

学校給食で使用:牛久市の食材のみで作った「牛久の日」に使います

使い終わった油の回収:学校給食の他、各家庭や飲食店から出る廃油を回収します

BDF化:集められた廃油を牛久市クリーンセンターにあるBDF製造装置で燃料にします

車へ給油:クリーンセンターのトラックやバスなどに使用しています

廃油の回収

現在、廃油の回収は牛久市内の小中学校の学校給食や飲食店、スーパーカスミなど48ヶ所で行っています。
また、市役所や公民館などに回収ボックスを設置し、家庭で使い終わった油を集めています。
毎月3000~4000Lの油が集まっており、BDFを2600~3400L(ドラム缶13~17本)製造することができます。

下根中学校の1年生が作成し、市役所などの施設に掲示したポスター

一般家庭からの廃油回収は以下の施設はで行っています。
牛久市役所・中央生涯学習センター・三日月橋生涯学習センター・奥野生涯学習センター・牛久運動公園体育館・総合福祉センター・牛久クリーンセンター・カスミ 牛久店・カスミ ししこ店・刈谷自治会館
お近くに回収スポットがある方は、廃油の回収にご協力お願いします。

その他に、牛久市内で廃油回収を行っている場所はこちらからご覧になれます。

BDFを燃料として使うとCO2が増えないってどういうこと?

BDFを燃料として使ったときに排出されるCO2は、油の原料となる植物(ナタネ)が大気中から吸収したものなので、大気中のCO2は増えません。これをカーボンニュートラルと言います。
化石燃料(軽油)とBDFを比較すると、1Lあたり約2.6kgのCO2の発生を抑えることができます。

BDF製造装置の製造能力

製造時間・・・約7時間
製造量・・・200L/回
製造率・・・約87%
(油1.2Lで約1LのBDFを製造)

下根中学校の生徒達の学習

 

環境教育 (こどもと大人協働のまちづくり)

わたしたちは総合学習を、子どもと大人の協働が創る新たな学習の場と捉えています。
子どもの感性(全体認識など)と大人の知性(分析評価など)が協働することで新しい社会を創ることができると考えるからです。このように、子どもたちの総合学習の成果を活かしたまちづくりに向けた取り組みは潮来市などの他の市町村でも始まっています。アサザプロジェクトの総合学習紹介記事

アサザ基金は牛久市内全小中学校を対象に「人と河童が出会うまちづくり」を提案し、2004年4月から牛久市教育委員会と協働で年間を通じて長期・短期・単発の総合学習プランを提供し、様々な立場から地域を見直すことで地域の可能性を再発見し、人と人、人と地域のネットワークを結びなおす取り組みを進めてきました。
子供達の学習意欲や感性を原動力に地域を結び付けてゆくその過程で、福祉・治安・防災といったコミュニティ本来の機能が再生し、自立したコミュニティが築かれてゆくことを目指します。ESDの視点から見た学校教育変革の可能性
環境保全の仕組みを自己完結した形ではなく、まちづくりの中にしっかりと位置付けようという取り組みです。

さまざまな学習プログラムを活かし、子供たちとの活動を展開しています。
 学習プログラム集を見る 

学習プログラム(全国展開事例1)

学習環境事例集(全国展開2)

牛久市教育委員会

『人と河童が出会うまちづくり』

牛久市立神谷小学校の取り組み

牛久市立南中学校の取り組み

山之上谷津田再生協議会・UBS証券会社

トキの住む鹿嶋市を目指して

稲荷山再生協議会

稲荷山公園・八反田 『歌枕の森構想』

国際交流・平和学習

生き物の道地球儀

流域外での展開

岡山エコサポーターズ

シマフロウ・エイド

秋田県地域振興局

長野県天龍村ブッポウソウと相談する村づくり

沖縄 キジムナーと一緒に島づくり

三重県大紀町元気村

宮城県南三陸町

北九州市

東京都原宿

東京都内

京都

エッセイ人間は考える膜である

エッセイ問いの力を再生する

エッセイ竜動的知性

生物多様性保全(学校ビオトープネットワーク)

ビオトープの位置づけ

霞ヶ浦再生の担い手として。地域の環境を学ぶ場として。

まず、足元の環境を学ぶ!

学校ビオトープって
学区内のいろんな環境から生きものたちがやってきます。

これらの生きものを観察することで地域の環境を知ることができます。

子ども達の関心を地域の環境へと広げていきます。
※ メダカとタニシだけは最初から入れてもいいことにしています。地域ごとの遺伝子形態が守られるよう、原則として学区内のものだけです。

霞ヶ浦再生に役立てる!

さあ植付け。
ビオトープの水草は、霞ヶ浦湖畔から少しだけ採取して植えたものです。
ビオトープの環境がよければ、水草は勢い良く増えます。
3年もすると水面全体を覆い、他の生きものが住みづらくなるほどです。
生きものの空間を作るために間引き、それを霞ヶ浦に植えます。
小さなビオトープで育った水草と、子どもたちの小さな手が、大きな霞ヶ浦を、うんと元気にしてくれます。
植生帯復元の甲斐あって、生きものは流域にどんどん戻っています。
アサザの由来証明書
※系統保存について
地域ごとの遺伝子特性(=系統保存)を守るため、採取した場所と違う場所に植えてしまって遺伝子特性を乱さないよう、注意深く管理をします。 そのために、由来証明書を発行します。いつどこから何を採取して、どこのビオトープで育てているかが書かれています。

生きものの道ネットワークをつくろう!

~学校→流域→地球~

学校間を結ぶ生き物の道

大型のトンボなどは、隣のビオトープとの間を行き来します。ビオトープ同士はトンボの道でつながっているのです。他にも生きものの道があるでしょうか?どんな生きものが見られたか、観察したことを隣の学校と教えあってみませんか?

流域を結ぶ生きものの道

ビオトープは流域に116にものぼり、それらは大きなネットワークになって流域をすっぽりと包んでいます。
>>学校一覧表

隣の学校だけでなく、流域のほかの学校とも、情報を交換してみませんか?
もっとたくさんの生きものの道が見えてきます。
生きものの道がたくさんあるまちは、生きものにとって優しいまち。
人にとっても優しいまちです。
実際のまちづくりに生かす取り組みが始まっています。
>>牛久市との協働

学校ビオトープ学習から地球を覆う生きものの道へ展開

学区を飛び越える生きものの道が見えたら、もっと大きな、国境も飛び越える生きものの道にも思いを馳せてみましょう。
たとえば、南半球と北半球を往復し、途中で日本にも立ち寄るムナグロ。
立ち寄る先の水辺環境は悪化していたり、戦乱で荒れて、その道は途絶えがち。
でも、ムナグロの道に生きるわたしたちで、道をつなげてあげたいですね。
外国のお友達とも、観察したことや考えを交換しあい、話し合って自分たちのまちに生きものの道を取り戻そうとする仲間を増やしましょう。
世界中で生きものの道がつながれば、地球環境も守ることができます。
思いやりの心で、平和な世界が自然に形作られるでしょう。
そしてもっとたくさんの生きものと暮らせるようになるでしょう。
>>生きものの道地球儀プロジェクト

ビオトープを作ろう

~基本は生きものの体のつくり・くらし・すみか~

出前授業

生きものとお話しよう
ビオトープの役割をしっかりと理解するため、出前授業で勉強をします。
研修を受けたアサザ基金のスタッフが学校まで出向きます。
生きものが暮らせるビオトープは、生きものの気持ちになって作ろう。
そのためには生きものとお話ができなくちゃ。授業を受けると、みんなは生きものとお話できるようになるんです。
受身の知識を溜め込むのではありません。自分が生きものになったつもりで真剣に考えます。

いっしょに作ります

ビオトープ造成
みんなで力を合わせてビオトープを作り、草を植えます。
生きものによって、好む環境は違います。
だから、明るい場所や暗い場所など、できるだけいろいろな環境がある場所を選んで作ります。
池の形も、生きものが気持ちよく暮らせるように工夫します。

観察をし、毎日の学習の成果を役立てます

ビオトープを観察
毎日観察して、やってくる生きものを調べます。
生き物同士の関係を知ることができ、どんな水環境が良いかを考えることができ、生息に必要な環境を学ぶことができます。
来る生きものを調べることで、学区の環境へと関心を広げます。
別の学校や外国の学校と観察結果を交換して、広い規模の環境を考える学習へと発展させることができます。
外来種が入った時にもすぐ対応できます。

楽しい観察日記


ビオトープでは毎日たくさんの子ども達が目を光らせています。
そのため、とても貴重な地域の環境情報も得られるのです。
これにはどんな専門家もかないません。
子供たちは生きもの観察が大好き。
元気に泳ぐメダカ、トンボの羽化、今日はどんな生きものに会えるかな?
観察の報告が、アサザ基金にもたくさん寄せられています。
絵をクリックしてください。

谷津田の再生・保全

よみがえれ水源

再生前
再生前の荒れた谷津田

再生後
再生後の谷津田

『100年後、トキの舞う霞ヶ浦・北浦』を再生するために、湖だけでなく水源地の保全も行っています。

『谷津田』は、霞ヶ浦・北浦のとても重要な水源地です。
大型の流入河川がない霞ヶ浦・北浦では、主な水源は流域に数多く分布する谷津田と呼ばれる場所です。
また、谷津田は野生生物の重要な生息地です。

水源地が健全であることは、霞ヶ浦・北浦の再生には不可欠です。
しかし、現在、谷津田は耕作放棄が増え、荒れています。
水源地として美しい水を湖に届けることが出来なくなりつつある上、水質や治水についても悪化が心配されています。

谷津田が本来持つ、水源としての役割、水質保全、そして生物多様性保全の機能はどうしたら取り戻せるでしょうか?
企業や地域と協働で行っている水源地での取り組みをご紹介します!

1.谷津田とは?

2.谷津田が蘇ると?

3.よみがえれ、谷津田;
– 企業や地域との協働の谷津田再生の実例

カムバックウナギプロジェクト

ウナギは海と湖と里山を結ぶシンボル。
「カムバックウナギプロジェクト アンケート調査」にご協力お願いします!
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霞ヶ浦・北浦にもう一度ウナギを呼び戻そう!!

50年ほど前までは、身の回りの水辺でウナギ採りを楽しみ、そして夕飯のおかずに、
というような光景が当たり前でした。
それが今、ウナギは世界的に絶滅が心配される状況で、霞ヶ浦・北浦もまた同様です。
霞ヶ浦・北浦の場合、海へとつながる常陸利根川にある常陸川水門(逆水門)が閉ざされ、海からの遡上が不可能になってしまったことが原因のひとつとなっています。
(この問題に対して、私たちは「逆水門の柔軟運用」を提案しています。)

そこで、ウナギを流域に呼び戻し豊かな自然を取り戻すため、アンケート調査を企画しました。
アンケート結果は湖や里山の自然再生事業や提案に活かしていきます。

霞ヶ浦・北浦の豊かな自然と文化を取り戻し、天然ウナギで漁業や地域経済の活性化、水辺文化の再生を実現するために、どうぞご協力をお願い致します。

アンケートの参加方法
アンケートの回答方法は、3つあります。
郵送、FAX、メールのいずれかの方法でお答え下さい。
下記のボタンをクリックするとアンケートに進みます。

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※郵送・FAXで答えるボタン(PDFファイル)が開けない方は、お手数ですが、
コチラより、Adobe Readerをダウンロードして下さい。

ウナギの一生

ウナギは南洋の深海で生まれ、利根川から霞ヶ浦・北浦へとやって来ます。
更に川を遡上し、谷津田やため池のある里山まで移動して成長します。
やがて産卵のために海へ戻り、卵を産んで一生を終えます。
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海・湖・川・里山の全てが、ウナギの生息地であり、どれも欠かすことのできない場所です。

 

過去のアンケート結果

過去のアンケートの結果はこちらからご覧頂けます。

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生物多様性保全(湖がよろこぶ野菜たち)

湖がよろこぶ野菜たち

アサザプロジェクトでは、2005年から霞ヶ浦の漁協や流域の農協、スーパーと共同で、湖の外来魚を捕獲し魚粉肥料にして農産物を栽培、販売する取り組みを行っています。
「湖がよろこぶ野菜たち」というブランド名で販売中の農産物が、多くの消費者の手に渡ることで、湖の生態系に影響を与えている外来魚の駆除や水質浄化を効率的に進めようという取り組みです。

※この事業は現在プロジェクトパートナーを募集しております。詳しくはこちらをご覧ください。

「湖がよろこぶ野菜たち」とは
霞ヶ浦でとれた外来魚や、網に入っても販売できない未利用魚を丸ごと粉末にした肥料を用いて、流域の農家で栽培された野菜たちです。
この野菜をおいしくいただくことで、霞ヶ浦の生物多様性保全、水質浄化など、湖の再生に貢献することができる、という付加価値のある農産物ブランドです。
2006年11月21日(火)からは地元の最大手スーパーマーケット カスミ20店舗で販売されています。

生物多様性保全への効果
霞ヶ浦では、外国から持ち込まれたブラックバスやハクレンなどの外来魚が増え、在来の魚や様々な生きものは生存競争に勝てず減ってしまうという問題があります。
そこで、外来魚・未利用魚を漁師さんに捕獲してもらい、この魚体を魚粉に加工して、肥料や飼料として流域での農畜産業に利用してもらえるようにしました。
これまで接点の少なかった漁業と農業がコラボレーションし、外来魚を魚粉肥料として有効に活用することで、根絶が不可能に近い外来魚を持続的に駆除するシステムができます。

2005年から2009年12月現在までに合計約350tの外来魚、未利用魚を水揚げしています。チッソやリンの除去量に換算すると、チッソ約8,5t、リン約2,5tを湖から取り出したことになります。

水質浄化への効果
魚体が成長するときに体内にチッ素やリンを蓄積していくので、この魚体を湖から取り出すことで、効率的に湖の富栄養化の要因となっているチッ素やリンを取り出すことができるというしくみです。
霞ヶ浦は広さ220km2、水の量は約8億トンもあります。
これだけの水をきれいにするのは一見大変そうですが、魚粉肥料の普及をさらに広げ、外来魚の捕獲数量を増やしていくことで、霞ヶ浦の水質浄化を進めていくことができると考えています。

「北浦・霞ヶ浦環境パートナーシップ市民事業」
「湖がよろこぶ野菜たち」の生産、販売、外来魚捕獲、魚粉肥料の生産などの一連の取り組みは、流域の様々な主体が連携した「北浦・霞ヶ浦環境パートナーシップ市民事業」として行っています。
漁業-農業-流通-消費がひとつの輪になり、湖を再生させる大きなつながりが生まれました。
この循環によって、漁業・農業の活性化、生態系保全、水質浄化、地域活性化という多面的な効果が期待されます。

漁師の皆さんのご紹介
きたうら広域漁業協同組合の皆さんと霞ヶ浦漁業協同組合連合会の皆さんが外来魚水揚げにご協力くださっています。

とっているのはこんな魚です。

チャネルキャットフィッシュ(アメリカナマズ)
北アメリカ原産 オオクチバス(ブラックバス)
北アメリカ原産

ブルーギル
北アメリカ原産 ハクレン
中国原産

魚粉肥料
外来魚は工場で魚粉に加工されます。

魚体を丸ごと使っているうえに淡水魚由来なので塩分が少なく、肥料、飼料として一級品です。
専門機関で検査を行い環境基準を満たしていることを確認済みです。
家庭菜園にも利用できますので、魚粉肥料お求めになりたい方はアサザ基金asaza@jcom.home.ne.jpまでご連絡ください。

農家の皆さんのご紹介
JAやさとのキュウリ農家の皆さん

JAやさとの所在地は、茨城県石岡市の旧八郷地区。
霞ヶ浦の水源である恋瀬川の流域に位置し、筑波山の山並みに囲まれています。
絵になりそうな美しい風景に囲まれたキュウリ畑で、生産者の皆さんが丹精こめたブルームきゅうりが、「湖がよろこぶ野菜たち」の第一弾として2006年11月、スーパーカスミの店頭に並びました。

JAやさとでは、環境保全型の農業に早くから取り組んでいます。
(「湖がよろこぶ野菜たち」のトレーサビリティのページもご覧ください。)

湖がよろこぶ料理
湖がよろこぶ野菜をおいしくいただくためのレシピをご紹介します。

ごま油、いり胡麻の「ごま」が食欲をそそる
きゅうりどんぶり
面倒な白和えがキュウリで簡単
かわり白和え

レンコンが彩り豊かに変身
甘すっぱい大地の恵み
家族そろって、一日の元気を楽しくもらう
ポパイの巣ごもり煮

目から鱗の小松菜の新たな旅立ち
エスニックand小松菜

海と湖を結ぶ( うなぎの復活を目指して )

逆水門の柔軟運用提案   霞ヶ浦ウナギ再生特区を政府に提案

提案に関する国会質疑参院2002.12.3

エッセイ開かずの門を溶かして開ける~上げ潮が湖に命を吹き込む~

エッセイウナギからの問い

逆水門(常陸利根川水門)とは、利根川河口から18.5km付近に位置する水門です。
1973年以来、水需要の確保(霞ヶ浦のダム化)のため完全に閉鎖され、霞ヶ浦と海との繋がりが絶たれています。
逆水門を柔軟に開閉することによって霞ヶ浦と海とのつながりを取り戻し、漁業の振興、地域経済の活性化、水質浄化を実現するために、アサザプロジェクトでは1997年から逆水門の柔軟運用(上げ潮に合わせて逆水門を柔軟に開閉し生物が遡上できるようにする運用方法)を提案しています。
逆水門の柔軟運用提案に関して詳しい解説は以下の資料をご覧ください。
その1 ・ その2 ・ その3
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常陸川水門建設の経緯

昭和33年 利根川地流域の降雨が少なく、異常渇水のため、霞ヶ浦下流域に大規模な塩害が発生。
昭和34年2月 利根川からの洪水・逆流防止。渇水時に利根川河口から遡上する塩水の流入防止のために『常陸川水門』建設に国土交通省が着工。
昭和38年5月 利根川からの洪水・逆流防止。渇水時に利根川河口から遡上する塩水の流入防止のために『常陸川水門』建設に国土交通省が着工。
昭和48年 湖を完全に淡水化、ダム化して工業用水、生活用水を確保するのを目的として水門を完全閉鎖。茨城県、千葉県、東京都へ上水道、工業用水、農業用水として利用。

逆水門完全閉鎖による影響

逆水門の閉鎖、霞ヶ浦の淡水化によって産業・生活用水の確保はされましたが、同時に多くの弊害が生まれました。

1.漁獲量の減少
霞ヶ浦・北浦はウナギの産地として有名でしたが、逆水門の閉鎖後4年目から漁獲量が激減しました。
ウナギの稚魚(シラスウナギ)やスズキなどの多くの魚は、上げ潮に乗って海から湖に上がってきます。これらの魚は塩水くさびと呼ばれる上げ潮の先端と一緒に川の中央部を遡上してきますが、逆水門が閉鎖され遡上が不可能になってしまったため、霞ヶ浦における漁業は大きな打撃を受けています。また、逆水門の完全閉鎖によって汽水域が失われたため、汽水域に多く生息するヤマトシジミやマハゼなども減少しています。

2.水質悪化と水生植物の減少
逆水門を閉鎖することで水の動きが少なくなり、湖にヘドロが大量に堆積するため水質にも悪影響を与えています。水質悪化対策としてしゅんせつが行われ、そのために多額の費用が発生しています。また、自然の変動に反した冬の水位上昇管理によって、湖の水生植物にも影響を与えています。

3.農作物への塩害
農産物への塩害を防止するために逆水門を閉鎖していますが、実際には農業用水の取水口が水門に近く、塩分が入りやすいという状態は完全には解決されていません。

4.工業用水の水余り
将来見込まれる水需要を確保するために逆水門を閉鎖・霞ヶ浦をダム化し水位を上昇する管理がなされていますが、現在上流部で取水している工業用水は水余りの状態です。余剰水廃棄の費用が企業の大きな負担となっています。

逆水門の柔軟運用とは

霞ヶ浦と海とのつながりを取り戻し、漁業の振興、地域経済の活性化、水質浄化を実現するために、上げ潮に合わせて逆水門を柔軟に開閉し生物が遡上できるようにする運用方法です。
そのための具体策として、上流部で取水している工業用水の余剰分を農業用水に転用するという計画を提案しています。
これにより、農作物への塩害の不安を解消し、企業は余剰水廃棄の費用を軽減することができます。この計画では、既存の施設の運用を転換するだけなので、かかる費用は最低限です。
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逆水門から上流約20kmの北浦には、下流の鹿嶋工業地帯に工業用水を送る取水口があります。この工業用水の取水口から鹿嶋南部農業用水を取水できれば、塩害の心配をせずに、逆水門を開けることができます。実は、上流で取水している鹿嶋第三期工水の送水管と鹿嶋南部農業用水の送水管は同じ県道の下を並行して敷設されており、ふたつの送水管の間は図のように数メートルしか離れていません。このふたつの送水管をつなげば、工業用水を転用して農業用水を上流から簡単にとることができるようになるのです。

詳細は
常陸川水門(逆水門)の柔軟運用に関する提案
逆水門の柔軟運用と取水方法の変更(より詳しい内容 その1 その2 )
をご覧ください。

逆水門の柔軟運用による効果

1.漁業の振興
上げ潮に合わせて逆水門を柔軟に開閉することで、魚類の遡上が可能になります。また、常陸利根川に汽水域を生み出すことができ、水産物として商品価値の高いヤマトシジミの生産が期待できます。逆水門閉鎖前まで漁獲が回復すると、漁業だけでも年間193億円もの経済効果が期待されます(UFJ総研試算)。

2.水質浄化・自然再生
逆水門の柔軟運用が実現した場合には、年間16959トン(UFJ総研試算)もの漁獲増が期待されます。魚類は食物連鎖を通して湖内の栄養分(チッソやリン)を摂取して成長するため、湖から取り出す魚が増えると、同時に多くのチッソやリンも効率的に取り除くことができます。

3.塩害解消・余剰工業用水に対する費用負担の軽減
上流部で取水している工業用水の余剰分を農業用水に転用することで、農作物への塩害の不安を解消し、企業は余剰水廃棄の費用を軽減することができます。

漁業に対する経済効果について、UFJ総合研究所と京都大学大学院地球環境学舎が評価・試算を行っています。詳細は報告書をご覧ください。
霞ヶ浦・北浦の自然再生によって見込まれる経済効果の試算~アサザプロジェクトによる逆水門柔軟運用、植生帯復元事業を対象として~

逆水門の柔軟運用に関する経緯

時期 内容
1997/12 霞ヶ浦・北浦をよくする市民連絡会議が建設省と県に逆水門の柔軟運用を提案。その後も要望を続ける。逆水門提案記事
2002/10/04 国土交通省霞ヶ浦工事事務所「平成15年度冬期から水位上昇を伴う水位管理の再開通告」
2002/10/08 アサザ基金「霞ヶ浦の水位管理および逆水門の柔軟運用(逆水門の改築計画を含む)についての円卓会議開催を求める申し入れ」 を国土交通省霞ヶ浦工事事務所所長宛でおこなう
2002/10/08 アサザ基金「霞ヶ浦の水位変動試験の中止と水位管理および逆水門の柔軟運用(逆水門の改築計画を含む)についての円卓会議開催を求める申し入れ」を国土交通省河川局長宛でおこなう
2002/10/16 参議院決算委員会で民主党の谷博之議員が「霞ヶ浦で来年冬から計画されている水位上昇管理について」質問し、これを受けて扇千景国土交通大臣が「アサザ基金が申し入れをしている霞ヶ浦の水位管理および逆水門に関して」円卓会議で話し合いその結果を見守りたいと答弁(答弁の内容は「民主党谷議員HPの活動報告」として掲載されています。(11/1時点))国交大臣答弁参院決算委員会2002.10.16
アサザ基金「常陸川水門(逆水門)の柔軟運用に関する提案と要望」を国土交通省霞ヶ浦工事事務所所長宛でおこなう 関連記事逆水門提案
2002/10/17 アサザ基金「円卓会議共同開催のための協議の申し入れ」を国土交通省霞ヶ浦工事事務所所長宛でおこなう
2002/10/22 アサザ基金「円卓会議共同開催のための協議の申し入れ」を国土交通省河川局長宛でおこなう
2002/10/25 国土交通省霞ヶ浦工事事務所「円卓会議ではなく、意見交換会を行う」と記者会見
アサザ基金同日国土交通省霞ヶ浦工事事務所記者会見を受け緊急記者会見をおこなう
「円卓会議申し入れに関する突然の記者発表に対する抗議」を国土交通省霞ヶ浦工事事務所所長に提出
2002/10/30 アサザ基金「円卓会議開催を求める申し入れ」を国土交通省霞ヶ浦工事事務所所長宛でおこなう
2002/12/13 アサザ基金「意見交換会についての経緯と見解」を掲載
2002/12 国交省が意見交換会を開催。円卓会議は意見交換会にすり替えられた。
2003/2 第155回国会衆議院国土交通委員会において、逆水門柔軟運用と円卓会議に関する質疑。
2003/7 民主党や公共事業チェック議員の会が現地を視察。逆水門の提案について関係行政機関(国交省、厚労省、環境省、農水省、経産省、茨城県)等を集めた話し合いの場が現地で持たれる。
2003/11 コイヘルペスの発生に伴い「霞ヶ浦・北浦の環境改善と漁業存続のために常陸川水門の柔軟運用を求める要望書」を提出。
2004/6/17 常陸川水門(逆水門)の柔軟運用に関する提案
2005/8 パンフレットを作成しました
2009/8/10 衆議院・茨城県知事選挙において全立候補者に逆水門柔軟運用をマニフェストに盛込むよう要望書を送付。
2009/10/1 霞ヶ浦導水事業の代替案として常陸川水門(逆水門)の柔軟運用による水質浄化の実施を求める要望書を提出
2010/6/22 常陸川水門の柔軟運用が、土浦市議会第2回定例会にて地元の市民団体によって請願され採択される。

常陸川水門(逆水門)の柔軟運用について、よくある質問と回答

常陸川水門(以下逆水門)の柔軟運用の提案については、このホームページで詳しく紹介していますが、今年(2010年6月)の土浦市議会での同提案に関する全会一致での採択などがあり、注目を集めています。この提案が具体化に向けて動き出したことを機会に、提案に関する質問も寄せられるようになっています。ここでは、とくに逆水門の柔軟運用を実施すると塩害が生じるのではないかという質問等について、お答えします。

Q1.常陸川水門(逆水門)の柔軟運用による塩害の心配は?湖を汽水化するのですか?
A1:逆水門の柔軟運用は塩害を生じないように実施します。逆水門を完全開放して湖全域を汽水化する提案ではありません。

逆水門の柔軟運用では、現在は一切行なわれていない上げ潮による海水の湖への遡上を、塩害が生じない方法で実施します。上げ潮によって海水を含んだ水は逆水門に向かって利根川をさかのぼります。この時に、海水を含んだ水と淡水(真水)は比重が違うので混ざらずに、海水を含んだ水が上流側の淡水を押し上げる形で湖に向かって遡上をします。
このときに、海から上がってきた海水と淡水の間には境目ができますが、海からの水の方が淡水よりも比重が重いために、海から上がってきた水は先端がくさび状になります。これを塩水くさびと云います。この塩水くさびの移動を観測することは難しくありません。
逆水門の柔軟運用では、この塩水くさびの先端部の遡上を観測し、逆水門を先端が通過した時点で、それまで開放していた逆水門を閉鎖します。したがって、海水の湖への進入は塩水くさびの先端部分だけであり、それにより湖に入る塩分は最小限に抑えられます。(さらに、8枚あるゲートの中から開放するゲートの数を調整することができます。このような操作は他の湖の水門でも実施されています。)つまり、このような塩水くさびの湖への導入方法と、実施時期を非灌漑期とすることで農業等への塩害を十分に防止できます。
また、柔軟運用は逆水門の下流側の塩分濃度のあまり高くない時に、また、湖の水位のあまり低くない時に実施するなど、条件の良い時にあわせて行ないます。項目4に示すように、柔軟運用実施後に、順流放流を行ない湖下流の塩分濃度を元に戻します。(2005年の例では、約1週間で元の塩分濃度まで戻っています。)

Q2.塩水くさびの先端を湖に導入するだけで効果があるのですか?
A2:塩水くさびと一緒に多くの水産資源が湖に入ることができます。

塩水くさびの先端部を湖に導入するだけでは、大した効果はないのではないのかという疑問を持たれる方々も多いと思います。しかし、私たちはその効果はかなり大きいと考えています。
海から湖へ河川をさかのぼって来る魚類等は、上記の塩水くさびの海水と淡水の境界つまり塩水くさびの先端部に乗って上流に向かって押し上げられるようにして、移動します。したがって、魚類の遡上時期に逆水門を開けて塩水くさびの先端を湖に入れれば、多くの魚類が湖に入ることができます。このような逆水門の操作(柔軟運用)を何度か実施すれば、湖の魚類、水産資源の回復を促すことができ、提案にあるように漁獲の回復・漁業の活性化によって魚体をとおして、湖の富栄養化の原因となる窒素やリンの回収を効率良くかつ低コストで行なうことができ、効果的な水質浄化を持続的に行なうことが可能となります。
また、塩水くさびと共に湖に遡上する代表的な魚種であるシラスウナギは、近年世界的に減少しており貴重な資源となっています。このシラスウナギを海から湖に導入することで、霞ヶ浦を世界有数の天然ウナギ産地にすることも可能です。漁業関係者によれば、現在も毎冬多くのシラスウナギが逆水門前まで来ているそうです。したがって、逆水門を少し開けるだけで、かなりの数のシラスウナギが湖に入ることが期待できます。
ウナギと同じく近年減少し高値で取引されているヤマトシジミも、湖での再生を図ることが可能ではないかと考えています。ヤマトシジミの産卵時期にあわせて逆水門の柔軟運用を実施すれば、塩水くさびに乗って遡上するヤマトシジミの受精卵や幼生を湖に入れることができるかもしれません。ヤマトシジミは受精卵や幼生の時期を汽水で過ごし、その後は淡水域でも生育することができると考えられます。霞ヶ浦でも逆水門が閉鎖され湖が汽水ではなくなり淡水化した後にもしばらくヤマトシジミが漁獲されていたことが、県の漁獲統計から分かります。また、他の例では、1987年に霞ヶ浦同様に淡水化が行われた秋田県の八郎湖で防潮水門(逆水門)が工事中に水門を開放していた時に大潮が湖に遡上しています。1989年~1994年までの6年もの間、再び淡水化した後も湖内ではヤマトシジミの豊漁が続き約50億円(約2万7千トン)の漁業利益があがりました。このような過去の事例も参考にして、霞ヶ浦を汽水化しなくてもヤマトシジミを再生する方法を探っていきたいと思います。
ヤマトシジミは水をろ過することで水質の改善に大きく寄与することが期待されます。宍道湖ではヤマトシジミが生息する水域では透明度が高く維持されていると聞いています。私たちは、アサザプロジェクトの目標のひとつである沈水植物群落の再生に向けて、このヤマトシジミによる水質改善も期待しています。
このように地域経済の活性化と一体になった水質改善策は持続性も発展性もあります。

Q3.国交省が魚道を作ったので、柔軟運用をしなくてもいいのでは?
A3:魚道を作ってもシラスウナギやヤマトシジミなどの遡上は期待できません。その効果は限定的です。湖全体の再生にはつながりません。

逆水門では岸にそって魚道を設置しています。しかし、国交省も認めているように、この魚道をシラスウナギが遡上することはできません。シラスウナギなど塩水くさびに乗って湖へと遡上する魚類やヤマトシジミ(受精卵・幼生)などは、魚道を使って湖に上がることは魚道の構造上不可能です。また、河川の中央部を遡上するスズキなど多くの魚類も魚道では湖への遡上を促がすことは期待できません。このように、汽水域と淡水域をつなぐ魚道の効果には限界があり限定されます。
逆水門の柔軟運用では、8門ある水門のゲートの内の河川中央部にある1門か2門を塩水くさびが遡上するのに合わせて開放し、通過後にすぐに閉鎖をすることで、塩害の生じない方法で多くの魚類を湖に招き入れますので、魚道に較べ大きな効果を期待することができるのです。

Q4.塩水くさびの先端が入っただけでも塩害が生じるのでは?
A4:過去の事例などから予測できるので、塩害の心配はありません。

塩水くさびの先端部が湖に入っただけでも農業などへの塩害が生じるのではないかという心配をされる方もおられると思います。しかし、そのような心配はないことを示す事例があります。2005年11月から国交省が逆水門の補修工事を行なった際に、一時海水が湖に入るということがありました。この時に観測された逆水門から上流部での塩分濃度は、日川地区(水門から上流に3.5kmほど離れています)で464mg/?でしたが、とくに塩害が生じたという報告もなく、灌漑期までには上昇した塩分濃度も十分に低下することができました。この件については、どこからも苦情が無かったと聞いています。
この時には、工事によるもので水門の開放ではないので効果は限定されますが、それでも湖内でサケやマハゼが獲れるなどの変化が見られました。
このような事例を参考に、また、塩水くさびの進入による塩分濃度の上昇を予測することも技術的には可能ですので、十分なシュミレーションを行なうことで、塩害の心配の無い状態で逆水門を柔軟運用することは可能であると考えます。
また、柔軟運用を逆水門下流の塩分濃度のあまり高くない時期に行なうことで、湖への塩分の進入を調整することも可能になります。
さらに塩害の防止を強化するために、鹿島工業用水の余剰水を逆水門周辺の農業地域への農業用水に転用(転売)することで、塩害を100%防止する方法も提案しています。該当する工業用水路と農業用水路は同じ国道に沿って隣接しているので二つの水路をつなぐ工事は用地買収の必要もなく、比較的簡単に、しかも安価で実現できます。

Q5.やはり湖を汽水化するべきではないのか?
A5:逆水門の管理を柔軟化することで、未来への可能性をつなぎます。霞ケ浦を世界一の湖に!

逆水門の管理は、現在霞ヶ浦開発事業の運用規則(操作規則)に則って国交省によって行なわれています。その規則によれば、湖から海側への放流時には逆水門を開放するが、逆に海から湖側への塩水くさび遡上時には一切開放をしない、つまり閉鎖するとしています。このような海側からの遡上を一切認めない状態を完全閉鎖と呼んでいます。この完全閉鎖は1973年から実施され、今日まで一切の見直しが行われていません。1973年以前に逆水門は設置されていましたが、それ以前は一定の日数での開放(海から水を上げること)は継続されていました。
私たちが提案する逆水門の柔軟運用は、湖の汽水化を実施するものではありませんが、逆水門の硬直化した管理方法を見直すことにはつながります。これは、ひとつのターニングポイントであり、未来に向けて湖内にある程度の汽水域を再生することが可能な社会的な条件が整った場合には、かつての汽水域の生物多様性を回復できる可能性への道をひらくものと考えます。まず、霞ヶ浦・北浦を世界一のウナギ産地にして、そのブランド力を高め、再生に向けた大きな流れを作っていきましょう。
霞ヶ浦が世界一を目指すことは、地域の人々に湖への関心と誇りを取り戻すきっかけになり、湖の水質浄化を流域ぐるみで推進することにもつながります。
霞ヶ浦にかつての汽水域を取り戻すことは、多くの関係者による合意形成プロセスとそのための新たな社会システムの構築を前提とする大きな社会実験となるでしょう。わたしたちは、いつの日かそのような取組みが動き出すことを期待して、この逆水門の柔軟運用を提案しています。

湖と森を結ぶ(粗朶消波堤)

霞ヶ浦・北浦流域では、森林面積が流域面積の2割までに減少し、また近年荒廃しています。
この里山・森林を手入れし、切り出された枝や間伐材を、湖岸再生に役立てます。
森林の手入れは、顧用創出、地域活性化に結びつきます。
里山文化も育ちます。#人格を持つ技術
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湖と森と人とがつながる

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<H2>雑木林の手入れは、主に一般市民のボランティアで行われる</H2>
「一日きこり」です。
冬の恒例行事になったこの行事には毎回多くの参加者が集まります。
流域の里山が、こんなにたくさん元気になりました(▲)。kikorimap

粗朶消波施設設置計画の概念

伝統工法が、アサザやヨシを波から守る

市民による公共事業:湖岸自然再生事業。
植えつけたばかりのアサザやヨシは、まだ赤ちゃん。
自立できるまでは波から守る必要があります。
すぐに思い浮かぶのは、コンクリートの壁や石積みの設備による消波施設です。
確かに波は抑えられますが、アサザが自立して増えようとした時、邪魔になってしまいます。
魚も沖と浅瀬を行き来できなくなってしまいます。
そこでどのような施設がいいのかと考えると・・・
・アサザの広がりや生物の移動を阻害しない構造が必要です。
・アサザが自立して自分で波を弱められるようになる頃、無くなってくれたらベストです。
・さらに、余分なお金や資源がかからず
・作るのが難しくなく
・魚床にもなる
・・・こんな消波施設があったらいい。
答えはちゃんと見つかりました。
川の堤防を守るために使われていた、江戸時代の伝統技術、粗朶消波施設です。
粗朶消波施設とは、水底に丸太を打ち込んで枠を作り、中に雑木の枝の束(=粗朶)を入れたものです。(農文協「日本農書全集」)

アサザが自立する頃には枝が抜け、崩れて消失します。
隙間が適度にあるので水はよどまず、魚も通り抜けられます。

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見えにくかった沈水植物の役割に気づく

大きな気づきがありました。
上で延べた粗朶の役割は、実は自然界では、沈水植物が果たしているということです。
自然界では、下の図のようにアサザなどの浮葉植物のすぐ沖側に沈水植物が繁り、沖からの強い波の衝撃を最初に吸収するのです。
粗朶消波施設はまさにこの役割の肩代わりだったのです。
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残念ながら、沈水植物は現在の霞ヶ浦ではアサザ以上に見られなくなっています。
水の透明度が悪い霞ヶ浦では、太陽光が届かないので育つことができないのです。
アサザプロジェクトによる効果がもっと出て、水の透明度が高くなったら沈水植物も育つことができるようになるでしょう。
それまでは粗朶消波施設の出番は続きそうです。

粗朶を設置して4年、植生帯が広がりました

効果はご覧の通りです。目に見えて植生帯が豊かになりました。
●粗朶消波施設による波消し 1998年
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●湖岸に多様な植物群落を再生 2001年
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伝統工法の今日的な意味~農書にみる「人格を持つ技術」34#人格を持つ技術

近代土木技術は、河川や湖沼の日常的維持管理を市民の手の届かないものにした。
行政や研究者が寄って立つ科学知には普遍性はあっても、専門分化が著しく地域を総体として把握できないという欠点がある。
数値のみで構成した施策を地域に持ち込むことで、自然や生活のあらゆる場面での分断が生じ、地域の一体感が失われてしまう例が少なくない。
実際に多くの河川や湖沼はこのような施策によって、地域の生活や文化から切り離されていった。
河川や湖沼における水質汚濁や生物多様性の低下といった問題の背景には、この「分断化」がある。
近代土木技術に偏重した発想を転換しない限り、水辺の再生を願う人々は主体的に水辺の保全や再生に関わることはできない。

伝統河川工法では、材料は現地調達が原則であり、技術もその土地に合った構造と仕組みを作り上げるもので、人々の生活とのつながりを意識したものであった。
伝統工法には土地や住民と関係性をもった技術が使われていた。
そこにはまた、生活者の経験知が生かされる場があった。
今河川や湖沼と地域住民との結び付きを取り戻そうとする活動に必要なのは、伝統工法に見るような関係性を生み出す技術である。

アサザプロジェクトを構想したときには伝統工法に関する文献や資料なども参考にしたが、とくに、多くの示唆を得ることができたのが三河国の「百姓伝記」や甲斐国の「川除仕様帳」などの農書だった。
農書は江戸時代に日本各地で作られた民間の農業技術書である。現代の技術書とは違い自然のきめ細かな観察や人間の五感を重視した技術が論じられ、またその内容は人生論にまで及び、実に多岐にわたる。
とくに、わたしが農書から強く感じたことは、多様な分野を総合する個々の人格について論じている点である。
つまり、技術が経験知の集成である人格と切り離されては語られていないことだ。
このことは、20世紀に起きた技術の暴走(大量殺戮や自然破壊)を体験したわたしたちにはとりわけ大きな意味を持つのではないか。
わたしたちに必要なのは、科学知と経験知の協働である。

粗朶消波施設の設置について

霞ヶ浦では1990年頃から石積みの大規模な消波堤が各地で設置され始めていました。
この石積み消波堤は水域を分断し、水流を妨げ、ヘドロの堆積を促すなどの環境への影響が大きいため、私たちは危機感を強め、それらの設置を中止するように国交省(建設省)に再三申し入れてきました(申し入れ書等で中止を申し入れてきたのは私たちの市民団体だけです)。
しかし、石積み消波堤の設置がその後も継続されたため、波浪に対して治水上や住民からの強い要望等がありやむを得ない場合に代替案として、恒久的に水域を分断し透過性の無い石積み消波施設による決定的な破壊を回避することを目的に、将来撤去可能で透過性が高い粗朶消波施設の設置を行なうように国交省に提案をしてきました。
国交省では波浪対策として一部を粗朶消波施設にしましたが(大半の対策地域は石積み消波堤)、これらについてはアサザ基金が要望をして設置されたものではありません。
アサザ基金は原則として波浪対策事業に反対を表明しています。
さらに、これらの波浪対策事業に対しては事前調査と事後調査を行ない公表するように申し入れ書を再三国交省に提出しています。
霞ヶ浦で設置されている大規模石積み消波施設に関する申し入れ(pdf)
蓮河原地区・境島地区波浪対策工事(石積み消波堤設置)の中止を求める申し入れ書(pdf)

アサザ基金が提案をして設置した粗朶消波施設もありますが、それらは主に1996年以来の水位上昇管理によって衰退が進んでいたアサザ群落や抽水植物群落の再生を促すために設置したもので、その中でも境島(旧東町・潮来町)や根田(旧出島村)などは湖内で特に波浪が大きい地域です。その他にも波浪の強い地域にアサザの群落が見られますが、それらすべてに粗朶消波施設を設置したわけではありません。

さらに、アサザ保全のために設置した粗朶消波施設は、アサザが群落を形成した段階で撤去することを前提にしています。

また、それらの粗朶消波施設の設置にあたっては、事前の調査が行われ当時国交省が設置した各分野の専門家が参加した委員会において設置の必要性や効果の予測、環境への影響等の議論を公開で行なっています。設置後もモニタリングが継続されています。
詳しくは国土交通省霞ヶ浦事務所WEB内、「霞ヶ浦の湖岸植生帯の保全にかかる検討会」会議資料や「霞ヶ浦湖岸植生帯の緊急保全対策評価検討会;中間評価 」、河川環境管理財団のWEB内の資料等をご覧ください。

アサザ基金による独自の調査も専門家の協力を得て実施してきました。
アサザ基金では粗朶消波施設を水質改善が進むまで再生の見込めない沈水植物群落の代替機能として位置付けています。
調査の結果、粗朶消波施設は沈水植物群落に近い消波効果があり、在来の魚類(ワカサギの稚魚など)の生息場所として機能することも分かって来ました。
実際に、粗朶は最近まで湖内の漁業で利用されてきました。同時に、石積み消波堤での調査も行ない、底質のヘドロ化や生息環境の悪化を確認しています。

沈水植物群落の再生はアサザプロジェクトの目標のひとつですが、そのためには湖の水質改善が不可欠です。アサザプロジェクトはその目標達成へ向けて流域ぐるみでの水質改善を進める取組みを行なっています。
例えば、水源地・谷津田の再生事業や外来魚駆除と魚粉の肥料化、環境保全型農業の推進、流域全域での環境教育の推進、廃食油の回収事業、森林保全と再生などを広域展開する努力を続けています(これらの取組みについては、アサザ基金のホームページをご覧ください)。

尚、一部に上記の波浪対策事業による粗朶消波施設や石積み消波堤の設置をアサザ基金が国交省に要望してきたといった意図的に誤解を広めようとする情報が流されていますが、これらは全く事実に反するものです。また、これらの消波施設で起きている現象(砂浜が消滅した、水質が悪化した、粗朶の流出、トチカガミなどが過繁茂など)を、アサザ基金が関わる粗朶消波施設で起きているかのように伝え批判する一部市民団体関係者があることは残念です。
この関係者には8年ほど前から事実関係を示し事実確認を行なうように求めていますが、「消波施設はみんな同じだ。アサザ基金が国を動かして設置している」等と云った主張を繰り広げ事態を混乱させ続けています。重複しますが、アサザ基金ではそれらの波浪対策事業による消波施設の設置にはこれまで一貫して反対をしてきました。

現在は、上記一部の人によって行なわれた粗朶消波施設への誤解と混乱を招く批判によって、波浪対策事業では現在すべてが石積みの消波堤になってしましました。
今年度も大規模な石積みの消波施設の設置工事が行われ、環境破壊が深刻化しています。
アサザ基金では、継続して国交省にそれらの設置の中止を申し入れていますが、粗朶消波施設を批判する一部市民団体関係者(大学関係者もこの市民団体のメンバーです)からは、これらの石積み消波堤への中止申し入れ等は一切ありません(その一方で、相変わらずアサザ基金が消波堤設置を要望している等の事実に反する批判を続けています。また、事実に忠実であるべき学会等でもこのような主張が繰り広げられていることは科学の信頼性を損なうものであり深刻です)。

誠意ある研究者の皆様には、事実関係をご確認いただき、学問の世界の健全化に向けて、科学的客観的な批判が行われることを期待しています。
また、私たちの取組みは現在多岐にわたっていますので、それらについての科学的な評価をしていただける研究者を求めています。
その他、疑問の点等がありましたら、アサザ基金に問い合わせを頂くようお願いします。

人と湖を結ぶ(アサザの里親制度)

アサザの里親制度

『 アサザを植えつけて、波によるアシ原の後退を食い止めよう!』
1995年、「アサザの里親制度」が始まりました。

アサザの里親と植付けの主役は、子どもたちと公募の市民です。

アサザの種をとり、これを育て湖に植え戻してくれる方に種を配布します。
そして、里親が育てたアサザは、湖に植え戻します。
湖のアサザ群落を回復させ、アサザ群落は波を弱めてヨシ原を再生させます。
市民による自然再生ができるという仕組みです。
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子供たちが支えたアサザの里親制度

アサザの里親は95年200人でスタート。
2人の女の子が、学校ぐるみで参加するため、校長先生に資料を持って
説明したいという動きから、参加者が爆発的に増加しました。
子供たちの自主的な動きがプロジェクトを支えたのです。

湖に生息する野生生物であるアサザを日常の場で育てることで、
湖の自然を理解するきっかけとなり、
自分達が育てたアサザを湖に植えるけることで、湖との絆をつくり、
湖が自然の働きで再生するという物語を共有することができます。

霞ヶ浦再生のシンボル、アサザを育てる里親になりませんか?

satooya2現在、霞ヶ浦のアサザが危機的状況です。アサザを絶滅から救うにはみなさんの協力が必要です!
美しいアサザの花畑を復活させ、様々な生きものが暮らす豊かな湖、「100年後にトキの舞う霞ヶ浦・北浦」を目指して、アサザを守り、育てる取り組みに参加しませんか?アサザの里親になってくださる方を大募集しています。

アサザの里親になるには

アサザの苗(ポット)を無料でお分けします。

里親をご希望の方は、まずはアサザ基金までご連絡ください。
みんなでアサザの苗を育て、夏に湖に植付けに行きましょう。
アサザの苗の配布を行いますので、ご家庭や、学校、職場、グループなどでお申込の上、ご参加ください。
アサザの苗の送付をご希望の方も、下記連絡先へお問合せください。アサザの苗と育て方をお送りします。
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学校の先生方で、アサザを活用した学習をご検討の方は、以下の「霞ヶ浦のアサザを活用した総合学習への取り組み」をご覧下さい。
※この取り組みは生物多様性保全のために行っておりますので、基本的に霞ヶ浦・北流域での募集となります。それ以外の地域の場合はご相談ください。
※アサザの再生は計画的に行っています。植付け会以外で湖への植付けは行わないで下さい。
※育てるのが困難になった場合は、アサザ基金へ全ての苗をお返しください。

アサザの育て方

お渡しした苗は、大きめのバケツにいれて水の中に沈めてください。(葉は表を上向きにして水面に浮かせます。)
あとは、日当たりのよい場所に置いて、茎の成長に合わせて水位を調整してあげてください。
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アサザの苗づくり

アサザの苗が大きくなって茎がたくさんのびてきたら、株分けを行って苗を増やすことができます。
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アサザの苗供給ステーションの協力募集

企業、個人でアサザの苗を育て、里親希望の方に配布していただける方を募集します。
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応募方法
メール、FAX、お電話にて、ご住所、お名前、ご連絡先を明記の上お申込みください。
(郵送での苗のお届けをご希望の場合、送料に関しましてはご負担いただきますようお願いいたします。)
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連絡先
認定NPO法人アサザ基金
   〒300-1222 茨城県牛久市南3丁目4-21
電 話:029-871-7166
FAX:029-801-6677
メール:asaza@jcom.home.ne.jp

アサザとは

アサザとは、ミツガシワ科アサザ属に属する多年性の水草(浮葉植物)で、水面に手のひらくらいの大きさのハート型の葉を浮かべます。
夏から秋には美しい黄色い花をさかせ、湖のアサザにはたくさんの魚や水鳥やトンボなどの生きものが集まります。アサザがあるところは生きものたちの大切なすみかになるのです。
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アサザの種は、水に浮かんで砂浜やアシ原に運ばれます。種はそこで冬を越し、春になると目をだして成長します。
アサザが芽を出した場所は、梅雨の頃には水の中に沈み、アサザは水面に浮葉を広げ、沖に向かってのびていきます。

かつては日本中の湖や沼でみられましたが、現在は水辺のコンクリート護岸、水質悪化の影響で発芽できる場所がなくなってしまい、絶滅の恐れがあるといわれています。
詳細は「霞ヶ浦のアサザが絶滅の危機!」をご覧ください。

アサザが教えてくれた、霞ヶ浦再生へのヒント

アサザは湖岸から沖に向かって水面の広い範囲に浮葉を広げるので、アサザの群落が波を和らげ、岸辺のヨシ原を波による侵食から守ってくれます。
アサザには、自然を少しずつ呼び戻す力があるのです。
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1995年、手探りで「アサザの里親制度」が始まり、アサザをはじめとする水草を霞ヶ浦に植えつける活動をはじめました。そんな中、2人の女の子が、学校ぐるみで参加するために校長先生に資料をもって行って説明したという動きから、参加者が爆発的に増加しました。
プロジェクトを支えたのは子ども達の自主的な動きであり、里親と植付けの主役は小中学校の子ども達や企業・市民団体の方々なのです。

2010年4月現在、取り組みに参加したのは流域の200の学校と20万人もの地域のみなさんです。
流域の小学校を中心に、企業の方々などが里親や植付けをはじめとし、霞ヶ浦の再生を願い、様々な場面でアサザプロジェクトに参加してくださっています。

霞ヶ浦のアサザを活用した総合学習への取り組み

アサザ基金は、1995年からアサザの苗を育て霞ヶ浦に植えもどす学習プログラムや、学校ビオトープを使っての環境学習を提供させて頂いております。
特にアサザは霞ヶ浦で絶滅の危機に瀕しており、アサザを育てることは霞ヶ浦・北浦という身近な自然を守る取組みへとつながります。また、郷土の湖である霞ヶ浦について学ぶ格好の教材でもあります。
学校や地域特性に合わせた総合的な学習(環境学習、教科学習)を行うことで、地域の未来を担う子供たちの学習意欲を高め、生きる力を育てていきます。
御校のこれまでの学習を活かし広げるプログラムを、学校のご都合に合わせた形でご提供させていただいております。ぜひ、ご活用の程よろしくお願い致します。

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霞ヶ浦の水生植物アサザを活用した学習例

アサザを育てる
アサザを育てて湖に植え付け
植物の育ち方(3年理科)
生きものを調べよう(4年理科)春・夏
植物の成長と肥料・日光(5年理科)
植物の実や種子のでき方(5年理科)
湖での観察 生きものを調べよう(4年生理科)春・夏・秋・冬

出前授業詳細
アサザを活用した学習を採用していただく学校さんには、アサザについてとアサザの育て方についてお伝えする出前授業を提供させていただいております。
この他にも、子供たちの夢“生きものと共生する社会の実現”にむけて、地域レベルから地球レベルまで、さまざまなプログラムをご用意しています。まずは、お気軽にご相談ください。

<アサザの苗づくり>
時期:6月~7月
対象:小学校3年~6年
内容:1コマ目(45分):教室で「霞ヶ浦の環境とアサザのくらし」を勉強します
2コマ目(45分):野外でアサザの苗づくりを行います

<アサザの植付け>
時期:夏休み
内容:2コマ(90分):アサザの植付け
(湖への移動手段は学校さんでご手配いただきますようお願いいたします。)

出前授業を希望される学校さんは、下記に電話にてご相談下さい。
問合せ:TEL 029-871-7166

※出前授業は寄付によって運営しています。学校さんのゲストティーチャー制度の謝金をご用意いただければ幸いです。
※基本的に霞ヶ浦・北浦流域での募集です。
それ以外の地域の学校は、まずはご相談下さい。

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