かすみがうらに自然をとりもどそう

keroかすみがうらに豊かな自然ときれいな水をとりもどそう

かすみがうらは、日本で二番目に大きなみずうみです。
50年くらい前までは、かすみがうらには豊かな自然があって水もきれいでした。
魚が日本で一ばんとれる湖でした。
ところが、人間がよごれた水をたくさん湖に流すようになったり、ごがん工事をしてみずべの自然をこわしたり、湖と海の間にぎゃく水門というものを作ってしめてしまったりしたことで、どんどん水がよごれていき自然もへってしまいました。
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一度、自然がこわれたり水をよごれたりした大きな湖を、もう一度もとにもどすのはたいへんです。
それでも、湖のまわりの人々は何十年もの間、湖の水をきれいしようとがんばってきましたが、水はなかなかきれいにはなりませんでした。
お金もたくさん使いました。
いろいろなことをやってみました。
でも、うまくいきませんでした。

もう何をやってもだめだと、みんながあきらめかけていた時に始まったのが、アサザプロジェクトです。
かすみがうらの悪くなったところばかりを見ていないで、少しでも良いところを見つけ出して、良いところをみんなで大きく育てていけば、きっと湖はよみがるというのが、アサザプロジェクトの考え方です。

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かすみがうらの良いところをさがしに、1993年ころから子どもたちが中心となって歩いて調べる「お宝さがし」がはじまりました。
かすみがうらのまわりを歩いて一周すると250キロメートルもあります。それまでは、湖のまわりを歩いて一周した人はいませんでした。
子どもたちは、大人が見落としていた小さな宝物をたくさん見つけ出しました。大人たちが、もうかすみがうらからはいなくなったと言っていたトンボや水草や水鳥などが、まだかすみがうらに生きていることが分かってきました。
しかし、それらの生き物たちは、湖に残されたほんとうに小さなすみかをたよりにやっと生きているという状態(じょうたい)でした。
子どもたちは、この生き物たちが、いつかきっと湖に自然がよみがえり、昔のようにすみかが広がる時が来ることを信じてまっているように見えたのです。

湖の生き物たちにはどんなすみかがひつようなのか、どのようなことで困っているのか、子どもたちはいっしょうけんめい考えました。
かすみがうらのかんきょうを良くしていくために何をしたらいいのか。
それは、湖に住んでいる生き物たちに教えてもらうのが一番です。
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これまで大人たちは、かすみがうらの生き物たちのことを無視して自分勝手にかすみがうらを利用してきました。
だから、かすみがうらの水がよごしたり自然をこわしたりしてしまったのです。もしも、大人たちがもっとかすみがうらの生き物たちの声を聞き、生き物たちとそうだんしながら、湖を利用しようとしていたら、水をよごしたり自然をこわしたりしなかったとおもいます。
だから、アサザプロジェクトでは学校で「生き物とお話しするほうほう」の学習をやっているのです。

アサザプロジェクトでは、生き物とお話するほうほうの学習をした子どもたちが、かすみがうらの生き物たちがこまっている理由を見つけ出し、どうしたら生き物たちがこまっている理由をなくすことできるのかを考えます。
そして、生き物たちがどのようなすみかを求めているかを考えます。これらのことは、生き物たちの気持ちになって考えないとできません。
それが、生き物とお話しするという意味です。

子どもたちは、かすみがうらの生き物たちとそうだんして考えたていあんを大人たちにします。そうやって、かすみがうらにきれいな水とゆたかな自然をとりもどすプロジェクト(アサザプロジェクト)が始まりました。
いまでは、子どもと大人がいっしょになって、かすみがうらのところどころに水草を植えたり、浅い場所をつくったりしながら、生き物たちのすみかをふやしています。
もう1万人をこえる子どもたちが、かすみがうらに入って水草を植えたりしました。
その時に、湖に植える水草のひとつがアサザです。
アサザはぜつめつしそうな水草なので、みんなで守っているのです。
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湖や川には、じぶんで汚れた水をきれいにする力があります。
かすみがうらも同じです。
昔かすみがうらにたくさんの水草や生き物がいたころには、よごれた水をきれいにする力がありました。水草や生き物たちが協力し合って水をきれいにしていたのです。
けれども、いまは人間が水草や生き物をへらしてしまったので、水をきれいにする力が弱ってしまいました。

だから、アサザプロジェクトでは、湖にみんなで水草を植えたり浅いところを作ったりして、生き物のすみかをふやしているのです。
もちろん、それいがいにも、よごれた水を湖に流さないように人々によびかけることもしています。
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それから、かすみがうらに流れ込む川の上流にいくつもある谷津田という場所が荒れないようにすることもやっています。
谷津田には森からのわき水が流れ込みます。
このきれいな水がよごれないようにして、湖に送るようにしています。そのために、むのうやくでお米をさいばいしたり、ホタルやトンボやメダカなどの生き物がすみやすいかんきょうを作ったり守っています。
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そして、かすみがうらと海の間に作られた逆水門(ぎゃくすいもん)も、魚たちが海から湖へと入って来ることができるように上手に開けるほうほうをていあんしています。
この提案がじつげんしたら、湖の水もきれいになります。

このように、アサザプロジェクトではかすみがうらの中でも、そして湖のまわりでも、水をきれいにしてゆたかなしぜんがもどってくるように、多くの人たちがきょうりょくし合ってがんばっています。
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アサザってなあに?

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アサザは、春から秋まで、水面に手のひらくらいの大きさのハートの形をした葉をたくさんうかべます。
葉はくきにつながっていて、くきは水のそこの地面にはった根につながっています。そして夏から秋にかけて、黄色いかわいい花をつぎつぎに咲かせます。花びらは5枚あります。
アサザのタネは水にういて、ヨシ原やすなはまにはこばれ芽をだします。
水のそこに沈んでしまうと芽は出ません。
だから、アサザが育つにはヨシ原も必要です。
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アサザはむかしから日本中の湖や沼でみられましたが、さいきんになって人間がよごれた水をたくさん湖に流すようになったり、水辺をコンクリートでかためる工事をしたりすることで減ってしまいました。
さらに、季節にあわせて自然に変わる水かさ(春から夏に水かさがふえ、冬には雨がふらないので水かさがへる)を人間の都合で変えることで減ってしまいました。
アサザだけではなく他の生き物も、湖の水かさが自然にふえたりへったりするのに合わせてくらしてきました。
だから、人間が勝手に水かさのふえたりへったりを変えてしますと、生き物が困ってしまいます。
アサザの住みやすかった自然を人間がこわしたために、今ではアサザをあまり見ることができなくなってしまいました。
アサザは全国に61株(人間でいえば1株はひとりです)あり、そのうち20株がかすみがうらに残っています。
かすみがうらにしか残っていない株もあるのです。かすみがうら以外のところでは、ひとつの湖にひとつの株しか残っていないところがほとんどです。

このままではアサザがぜつめつしてしまいます。
そのため、かすみがうらでは1995年からアサザを守る活動が、いろいろな人たちの協力で行われています。
この活動は、小学生からおじいちゃんおばあちゃんまで、だれでも参加することができ、かすみがうら流域の小学校を中心に170校が参加しています。
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かすみがうらでアサザがへっていくのをなんとかしようと、検討会がひらかれ、たくさんの話し合いが行われました。
2000年に、湖の水かさを人間の都合で高くすることをやめたあとは、アサザが少しふえはじめました。
ところが2004年には国土交通省が、また水かさを変えることをはじめたので、一度ふえたアサザがどんどん減っていきました。

アサザがぜつめつすることを防ぐためには、まずアサザの困っている理由を多くの人たちが知る必要があります。
また、アサザだけでなく他の生き物が困っていることに気づくことも必要です。
わたしたち人間がこわしてしまった自然、それをとりもどすためには、いま目の前に広がっている自然とどう向きあっていくかを考えることから始まります。
そして身近な湖とのつきあいかたや、社会のありかたに目を向け、多くの人たちが一緒になって変えていこうと協力することが必要なのです。
みんなが力を合わせて、生き物たちのよろこぶかんきょうを湖の中にふやしていけば、むかしいたたくさんの生き物も、一面に広がるアサザの花畑もとりもどせるかもしれないのです。
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[オマケ]
アサザはめしべが長くて、おしべが短いものと、その逆のめしべが短くて、おしべが長いものがあります。この花の形がちがう2つのアサザどうしでの花粉のやりとりがないと、ふえていくことができません。2つの形の花がそろっているのは、全国でかすみがうらだけになってしまいました。

 
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