国内最大の天然ウナギ産地であった霞ヶ浦の自然再生に向けて、
老朽化している逆水門を
柔軟運用が可能な河口堰に変更することを求める要望書 2013/08/05
茨城県知事 橋本 昌 様
2013年8月5日
いのちの水・霞ヶ浦を守る市民ネットワーク
共同代表 助川 弘之
共同代表 飯島 博
逆水門(常陸川水門)は設置からすでに50年を越え老朽化が進んでいます。また、一昨年の東日本大震災以降、逆水門の機能に問題が生じ対策が講じられています。そのため、新たな水門の設置が検討されていると聞いています。
逆水門の設置から半世紀以上が経ち、霞ヶ浦をめぐる状況も大きく変化しています。設置当時は、十分に配慮されなかった水質保全や生物多様性保全、さらには放射能汚染という新たな問題も今日は生じています。とくに、3.11以降わたしたちの社会全体と同様に、霞ヶ浦の保全や管理のあり方も大きな見直しを迫られているのが現状です。
霞ヶ浦は資源枯渇が危惧され環境省によって絶滅危惧種に指定されたニホンウナギの保護を行う上でも、極めて重要な位置付けにあります。シラスウナギの採捕量(全国)は、1960年代に平均で130トンから現在では10数トン(全国)に減少しています。このように危機的な状況にあるニホンウナギの保護・再生を行うためには、かつて全国一のウナギ漁獲量を誇った利根川水系、その中でも主要な産地であった霞ヶ浦のウナギ生息地としても再生が鍵になります。
1960年代には全国で漁獲されたウナギの67%は利根川・霞ヶ浦産でした。天然ウナギの全国の漁獲量は、1960年代後半で3000トンを越え、そのうち霞ヶ浦・利根川で1/3を漁獲し、北浦(霞ヶ浦)ではそのうちの半分以上の漁獲がありました。
しかし、1963年に霞ヶ浦と利根川をむすぶ常陸利根川の河口部に常陸川水門(逆水門)が施工され、1973年に水門が完全閉鎖されて以降に、ウナギの漁獲量は激減しています。霞ヶ浦での漁獲量の激減にあわせて全国のウナギ漁獲量の減少が起きているように、国内のウナギ保護を考えていく上で、霞ヶ浦のウナギ生息地としての再生は極めて重要な課題となっています。
日本におけるウナギ復活の決め手は、いうまでもなく霞ヶ浦の逆水門の管理を見直すことにあります。日本におけるウナギ資源の再生は、霞ヶ浦の今後にかかっていると言っても過言ではありません。
ご存知のように、ウナギ生息地の復活のため逆水門の柔軟運用の実施を求める動きは、すでに流域各地に広がっており、土浦市議会や阿見町議会、つくば市議会、東海村議会、茨城県市議会議長会などが次々と、この提案を全会一致で採択しています。霞ヶ浦のウナギ産地としての復活は、地域経済にも大きな影響が期待できます。茨城県の活性化という視点からも、霞ヶ浦のウナギ産地復活に期待する世論は日に日に大きくなっています。
現在の逆水門には魚道が設置されていますが、この魚道設置にあたってもシラスウナギは対象外となっています。新たな水門の設置も検討されている今日、霞ヶ浦の再生に向けて、逆水門を逆流(海側から湖への流れ)の管理が可能な堰に変更しシラスウナギなどの魚類が遡上でき、湖の流動性を高めることが可能な構造にするよう国に要望されるよう求めます。
1.常陸川水門(逆水門)を、より柔軟運用が可能(ウナギなどの生物が湖と海の移動可能)で、塩害を防止できる河口堰に変更することを国に求めること。
2.上記の河口堰の設計にあたっては、堰の構造や設置場所等を、湖水の流動性を高め、シラスウナギなどの魚類の遡上等の可能なものにするよう国に要望すること。
3.アサザ基金が提案(添付資料参照)を参考にして、塩害の恐れの無い形での逆水門の柔軟運用実施に向けた検討を始めるよう国に要望すること。
以上の3項目の申し入れについて、 8月22日までに文書にてご回答ください。
連絡先 認定NPO法人アサザ基金事務所
〒300-1222 牛久市南3-4-21
でんわ 029-871-7166
メール asaza@jcom.home.ne.jp