湖の自然再生」カテゴリーアーカイブ

アサザの絶滅に再生を誓う 私達の世界湖沼会議

「アサザの絶滅に再生を誓う 私達の世界湖沼会議」
~本会議では語られない霞ケ浦の真実~

日時:  10月14日 15:00~18:00
場所:  つくばイノベーションプラザ 大会議室(100席)
(ノバホールの隣です)
つくば市吾妻1-10-1 電話029-852-6789
TXつくば駅 徒歩3分  駐車場は近隣の有料駐車場

話題提供者:
飯島博 NPO法人アサザ基金代表理事
吉田寛 公会計研究所代表 千葉商科大学教授
安冨歩 東京大学教授

会場にお集まりいただいた皆様による自由討論
参加費は無料

霞ケ浦開発の運用開始以来、減少したアサザが今年ついに消滅しました。霞ケ浦のダム化は霞ケ浦導水事業によってさらに強化されます。このままでは霞ケ浦は死の湖となります。

世界湖沼会議では、「人と湖沼の共生」が議論されますが、福島第一原発事故による湖沼への影響についても厳しい現実を無視しています。アサザ基金が、再三会議のテーマに取り上げるよう要望したにもかかわらず拒否されてしまいました。プログラムから放射性物質というキーワードさえ消されています。
霞ケ浦の再生を実現するためには、主催者が議論したがらない不都合な真実に正面から向き合いオープンに議論することが不可欠です。

ご多忙の折とは存じますが、皆さんのご参加をお待ちしています。
また、お知り合いの方々、心ある方々への拡散をお願い致します。
NPO法人アサザ基金 事務局(諏訪)
029-871-7166
asaza@jcom.home.ne.jp

ネットワーク型社会の構築による湖沼保全

 21世紀はネットワーク型社会になるとよく聞く。わたしなりに湖沼保全に向けたネットワーク型社会を展望してみたい。霞ヶ浦の環境問題と向き合う中で、わたしが分かったことは環境問題は環境行政や環境保護運動の枠の中に収まっている限り解決できないということである。そこで、アサザプロジェクトでは、既存の枠組みを越えて展開する広域ネットワークによって、流域全体を被う総合的な施策を実現する方法を考えてきた。

 社会が複雑化し同時に組織の機能が専門分化したことで、相互の関係性が見失われた結果、社会の課題を個別の技術や対策では解決できなくなった。それは、環境に限らず、福祉などの他の政策についても云える。生活者の立場から見れば、環境保全や福祉はすべての分野に開かれたシステムであることの方が自然である。

 個人を核とした現代社会では環境保全が人々の生き方や価値観と結び付かないかぎり、人々の主体的な行動を引き出すことは難しい。つまり、自分の生活の中で起きる様々な出来事を総合化し、人格をとおして統合しようとする意志を持つ個々人が核となったネットワークこそが、自然と共存する社会の基礎となるものである。

 今、湖沼の保全や再生をめざすわたし達に求められているのは、まさに人格が機能するネットワーク型社会の構築であると考える。アサザプロジェクトが目標とする21世紀型社会は、総合化する主体を権力に頼らない、力にはよらない、中心に組織をもたないネットワーク型の社会であり、個々の人格が機能する社会である。

Q&A なぜアサザをシンボルに?

アサザプロジェクトは、アサザをただ増やすことや、アサザで水質を浄化することを目的とした運動ではありません。
アサザをプロジェクトのシンボルにした理由は以下のように多岐にわたります。

1.アサザとの出会いから始まったプロジェクトだからです。
1994年頃、霞ヶ浦再生の方法を模索していた時期に、湖岸全周を歩いて調査した折にアサザの美しい花畑に出会い、その時に受けた感動と発想の転換からアサザプロジェクトは始まりました。
このアサザとの出会いをきっかけに、湖に眠る様々な価値を見付けだしていく取組みがはじまり、現在の価値創造的なアサザプロジェクトへと発展していきました。
当時は霞ヶ浦で大発生を繰り返していたアオコが湖のシンボルとなっていました。水質汚濁を表すアオコがシンボルになっていては、湖のマイナスイメージばかりが先行し、湖の可能性が見えてこないと考え、人々の意識をマイナス思考からプラス思考に転換するきっかけのひとつとしてアサザをシンボルとして位置付けました。

2.自然の働きを活かした湖の再生を考えるきっかけを作ってくれたからです。
1990年頃から霞ヶ浦ではコンクリート護岸の影響などから大きくなった波浪への対策として、石積みの消波堤が造成されはじめ、新たな環境破壊が懸念されていました。当時は湖の波浪対策として石積み消波堤が各地に作られ、生態系を分断したりヘドロの堆積や水質汚濁などの問題を起こしていました。
このような破壊を食い止める方法を考えていた時に、アサザからひとつの発想を得ました。ヨシ原の前面沖側に生育するアサザ群落が波を弱め、波浪による浸食からヨシ原を守る様子を観察していて、アサザのようなヨシ原の沖側に広がる植生帯の形成(再生)が石積み消波堤の代替案になると考えました。それには、現在の水質でも生育できるアサザだけではなく湖本来の植生を、とくに水質改善を進めながら沈水植物群落を拡大していくことで石積み消波堤は必要無くなります。石積み消波堤に対するもうひとつの代替案「粗朶消波施設」は、上記のような植生帯による消波が実現するまでの暫定的な措置として位置付けています。したがって、粗朶消波施設の設計にあたっては、沈水植物群落の消波効果や透水性を参考にしています。
これらの代替案によって、一時期石積み消波堤の造成を止めることができましたが、一部の団体関係者によってアサザや粗朶消波施設への意図的な批判や中止の申し入れが行われた結果、再び延長数十㎞にも及ぶ石積み消波堤の造成が始まり大規模な環境破壊が生じています(上記の団体関係者は石積み消波堤の中止は申し入れていません)。

3.アサザの生態が湖の水位管理や護岸の問題を明らかにするからです。
霞ヶ浦では、湖岸のコンクリート護岸化や不自然な水位管理が湖の生態系全体に大きな影響を与えています。状況を改善するには、このような問題が湖の様々な生物にどのような影響を与えているのかを、多くの人たちに理解してもらうことが必要です。
アサザの生態はよく研究されていたため、アサザがコンクリート護岸や不自然な水位管理によって大きな影響を受ける理由も分かりやすく解説することができました。アサザの生態と環境との関わりを知ることを入り口にして、湖の環境を様々な生物の目になって見直す取組みへと発展させたいと考えました。
また、1996年から実施が計画されていた霞ヶ浦開発運用による極めて不自然な水位管理による生態系への影響を明らかにするために、その影響を受けやすいと考えられていたアサザを指標生物として、湖の変化を調べることにしました。アサザは当時湖全域での分布状況が正確に分かっていた数少ない種だったので指標として最適でした。
私たちの予測どおりに、運用計画に基づく水位管理が開始された1996年から2000年までに、湖全域でアサザが激減しました。このアサザの調査結果を基に水位管理の中止を国に申し入れ(2000年)、一時凍結が実現しました。(しかし、上記の団体関係者によるアサザは元々あまり湖になかったといった根拠の無い批判が行われ、2006年から水位管理が本格的に再開されてしまいました。その結果、アサザをはじめとした湖の生態系はさらに危機的な状況に置かれています。)

4.人々が直接湖に関わるきっかけとして。
霞ヶ浦の環境が悪化すると共に、湖周辺の人々の湖への関心が薄れ、湖に実際に足を運ぶ人も減っていきました。湖への関心を取り戻すためには、まず実際に湖に行って、その環境に触れることが必要です。できれば、湖の水の中に入って体感してもらいたいものです。
絶滅に瀕していたアサザは、多くの人たちに実際に湖に入ってもらうきっかけを作ってくれました。すでに、1万人を超える人たちがアサザの保護活動をきっかけに実際に湖に入り、湖の自然を体験しています。
アサザをきっかけに湖の再生に直接関わった経験が、多くの人々に霞ヶ浦を意識した生活スタイルへの転換を促すことにもなります。

5.環境教育の導入として。
霞ヶ浦の環境を理解するためには、様々な生物の目になって湖の環境を見直すことが必要です。アサザの生態を学ぶ学習は、湖の環境を生物の目で見ることの意味を子ども達に理解してもらう導入として位置付けています。アサザと水質汚濁や護岸、水位管理、ゴミなどの関係を知ることで、湖に生息する魚類や昆虫、植物などへと視野を広げていきます。さらに、霞ヶ浦の再生につながる町づくりの学習にも発展していきます。これまでに、流域の200を越える小中学校で様々なテーマの出前授業を行なってきました。この学習をモデルにした取組みが全国に広がっています。

6.個別縦割り型の発想から抜け出せない研究者や専門家に発想の転換を促す。
アサザプロジェクトがアサザをシンボルとしていることに対する批判をする研究者が一部にいます。これらの研究者に共通していることは、アサザという水草が有するある一部分(要素)だけを抽出して「水質に影響がある」、「ある生物に影響がある」といった的外れな批判を繰り返すことです。また、何度も説明しても、アサザプロジェクトは「アサザで水をきれいにする運動だ」「アサザを増やす運動だ」といった評価(決め付け)から抜け出せない研究者もいます。このような研究者(一部団体関係者)による批判活動(反対運動)によって、先述したように石積み消波堤の造成や不自然な水位管理が再開されてしまいました。
部分だけを見て相手に評価を下して決め付けたり、全体のつながりの中での多様な要素を視野に評価出来ないというような研究者が存在する背景には、あまりにも専門分化した今日の科学のあり方や、要素還元主義(部分知・領域知)に偏った知識体系の中での教育の在り方にも問題があると考えます。総合知をどのように構築するのかが今日の課題となっています。
対象からある一の機能を抽出して、単純に他と比べ、優劣や良否の評価を下す(しかも権威を背景にして)傾向は、研究者のみならず、マスコミをはじめ社会にひろく見られます。このような風潮は、差異の多様性を重視するこれからの社会に逆行するものです。このような単純思考はまさに哲学なき科学主義の弊害といえるでしょう。これはまた、この国では輸入学問である近代科学の知的基盤の脆弱さを示すものでもあります。実際に、その弊害が霞ヶ浦で生じていることは先述したとおりです。
このように、アサザの再生をきっかけに湖の生態系の保全から社会システムの再構築まで展開したアサザプロジェクトの事例は、アサザを多様なつながり(中心の無いネットワーク)の中に溶け込む多義的なシンボル=メタファーとして位置付けた取組みとして、多様性の時代におけるシンボルの新しい在り方を示すものであり、上記の個別縦割り型の発想や単純思考(決め付け)への転換を促すものです。もちろんアサザは、数多くあるシンボルのひとつに過ぎません。
これまで述べてきたように、私たちは社会が抱える問題や課題を強く意識しながらアサザプロジェクトを展開してきました。社会の様々な分野で、アサザがプロジェクトのシンボルになった意味をしっかりと主張していくことが、あらゆる分野に発想の転換を促し、今後の社会の在り方を示していくことになると考えています。同時に、それは新たな時代の知としての「総合知」を生み出していくことでもあります。
以上のように、アサザはシンボルとして様々な要素を持っていることを御理解下さい。

「湖がよろこぶ野菜たち」

霞ヶ浦の外来魚対策事業
( 生物多様性の回復と水質浄化、漁業の振興のための外来魚魚粉化・利活用、農作物ブランド化事業 )
農林水産業、加工業、流通業、小売業、消費者、NPOによる協働事業

湖がよろこぶ野菜たちとは?


霞ヶ浦で増加する外来魚の問題は解決が難しいとても大きな問題です。
この問題を解決していくためには問題を資源化するという新しい発想が必要です。
またひとつの事業で多面的な効果が期待できる取り組みによって広域的かつ継続的に対策が行われていくことが必要です。
そしてその取り組みを拡大、継続していくためには年度単位で事業が終了する行政主導による取り組みではなく、
事業を発展させるビジネスモデルを用いた取り組みを行っていく必要があります。
そのビジネスモデルをつくりあげていく取り組みが本事業です。

このビジネスモデルをつくためには、流域で生活を営む漁業・加工・農業・流通・小売・消費者・NPOなどさまざまな主体がかかわる霞ヶ浦再生に向けた新たなつながりを生み出すことが必要です。
そのつながりを作っていくのは霞ヶ浦再生を実現する仕組みから生まれる「野菜」です。この野菜が作られ、流通消費されていく、この流れから生まれる価値を商品に付加してブランド化を図り、事業を拡大、継続させていくビジネスモデルです。
霞ヶ浦再生を実現する仕組みとは、具体的には以下の図のような流れになっています。スライド1

1.市場価値のない外来魚は漁業によって捕獲されずその量は増える一方です。
そこで外来魚に市場価値を付与することで、漁業者に外来魚増加に対する抑制効果のあるまとまった量を水揚げしてもらいます。(漁業収入となる)
s水揚げ1 s水揚げ2

2.その外来魚を肥飼料(魚粉)へと加工してもらい、それを流域の農畜産業で化学肥料等の代わりに活用いただきます。
湖の魚たちは成長過程で窒素やリンといった湖の富栄養化物質を体内に蓄積しています。
水から取り出すことが難しい富栄養化物質を漁獲を通じて取り出し、活用することができます。
これは霞ヶ浦の水質改善になります。
s魚粉写真 sハス田魚粉施肥

3.できあがる農作物に上記1.2の費用を組み込み、このシステムの周知を図った上で、「湖がよろこぶ野菜たち」という霞ヶ浦再生ブランドとして地元スーパーで流通、消費者が購入、消費することで、持続可能な霞ヶ浦の再生と活性化をビジネスモデルとして実現しています。
このビジネスモデルの規模が大きくなるほど生まれる効果も増していくので、この問題の解決にビジネスモデルで取り組むことは効果的であると思われます。
この野菜が売れれば売れるほど外来魚を減らすことができるシステムです。
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特徴


この事業は従来、行政が行ってきたような外来魚の駆除にも処分や費用をかけて実施する自己完結型の取り組みではなく、市場価値のない外来魚を肥飼料へと変えること(問題の資源化)で価値を生み出すことから始まる一石何丁もの効果が生まれる取り組みです。
またこの取り組みはそれぞれ役割を担う人々の生産意欲を引き出すことができ、事業が拡大継続していくポテンシャルを持っています。
また社会の中で各主体が潜在的に持っている社会的機能を発揮することで、部分最適化ではなく、全体最適化が民間によって進む社会システムづくりにもなっています。

効果


・霞ヶ浦の生物多様性保全効果:漁師による大量捕獲による生態系レベルでの外来魚駆除効果を実現。これまでに約409tの外来魚の駆除を実現。
・霞ヶ浦の水質改善効果:外来魚の水揚げを通じた富栄養化物質の回収
これまでに窒素約10.2t、リン2.8tを湖から回収。行政による水質浄化事業(底泥浚渫)は窒素100kg回収するためにかかる費用は2161万円に対して、本事業は28万円、同様にリンは2億1千万円程に対して、137万円とケタ違いの費用対効果となっています。
・漁業振興:市場価値のない外来魚に価値を付与して水揚げを実施。これまでに約2000万円の漁業収入が生まれた。
・霞ヶ浦の水質保全効果:外来魚からできあがる肥料を流域で化学肥料の代わりに活用することで、新たに流域外から栄養が供給されることを防ぐことができます。
・環境保全型農業の推進・農業の活性化:有機農産物の規格に乗せることができない大多数の農家にも、この魚粉を使用することで、霞ヶ浦の自然再生・水質改善に参加できるシステムを提供し、環境保全型農業への意識が高まります。この事業は、以上のような一石何鳥の効果を生みだすことができる取り組みです。

活動内容


この取り組みの企画運営・連絡調整等をアサザ基金が担っています。
従来つながりのなかった多様な分野をつなげるビジネスモデルを構築し、それぞれの参加主体には本業を通じてこのビジネスモデルシステムへの参画をいただいています。
具体的には、霞ヶ浦漁業協同組合やきたうら広域漁協の漁師さんに外来魚の捕獲を依頼し、捕獲された外来魚を魚粉へと加工していただきます。(中央飼料株式会社
外来魚の水揚げ現場での運搬車への荷入れ作業などの現場作業を行います。
できた肥料はJAやさと、武井蓮根農園などの農業生産者の方に活用いただき、出来上がる産品のブランド化とその流通については株式会社カスミさん(スーパー)に協力をいただいています。
また新規にご参加いただけるパートナーの募集、開拓にも取り組んでいます。

位置づけ


地域活性化: 外来魚問題というマイナスをプラスに変換すること(問題を資源化する発想)で、霞ヶ浦の外来魚問題に流域の多様な主体が協働で取り組むビジネスモデルを構築できます。この発想の転換によって地域に新たなブランドを構築することを実現しました。
環境教育: 従来の「外来魚駆除を行っています」といった自己完結型・問題解決型の取り組みの限界を知り、真の問題解決には、多様な主体の協働による価値創造型事業による取り組みが必要であることを学習できます。また問題を資源に転換する発想を理解する場として活かすことができます。
社会を変える: 行政主導の取り組みの限界を明らかにし、民間主導による価値創造型の取り組みに転換するモデルとなる。環境問題と地域活性化を同時に実現できることを示すことで、霞ヶ浦の外来魚問題や水質改善に対してビジネスモデルの特性である事業の発展性や拡大への意欲、持続性を活かした実物大社会モデルの構築を、社会全体を視野に入れた上で行うことができます。
企業との協働: NPOが社会のホルモンとして機能を果たし、企業と多様な主体を結びつけ、企業の本業を生かした社会の問題解決に結びつけることができます。
循環型社会: この取り組みにより湖から活用できるアウトプット(漁獲や窒素・リン)を増大させ、経済効果を生み出し、行政による公共事業以上の効果を生み出すことで、社会的費用の削減といった効果を生み出します。さらに新たな社会システムの構築を通して湖をめぐる物質循環システムも構築できるようになりました。
自然再生・生物多様性: 外来種・移入種問題という従来の取り組みや行政施策の限界を踏まえたうえで、民間の発想を生かすことで、霞ヶ浦の外来魚や水質汚濁といった解決が難しい問題にも取り組むことができる実物大社会モデルとなりました。

カムバックウナギプロジェクト

ウナギは海と湖と里山を結ぶシンボル。
「カムバックウナギプロジェクト アンケート調査」にご協力お願いします!
unagi

霞ヶ浦・北浦にもう一度ウナギを呼び戻そう!!

50年ほど前までは、身の回りの水辺でウナギ採りを楽しみ、そして夕飯のおかずに、
というような光景が当たり前でした。
それが今、ウナギは世界的に絶滅が心配される状況で、霞ヶ浦・北浦もまた同様です。
霞ヶ浦・北浦の場合、海へとつながる常陸利根川にある常陸川水門(逆水門)が閉ざされ、海からの遡上が不可能になってしまったことが原因のひとつとなっています。
(この問題に対して、私たちは「逆水門の柔軟運用」を提案しています。)

そこで、ウナギを流域に呼び戻し豊かな自然を取り戻すため、アンケート調査を企画しました。
アンケート結果は湖や里山の自然再生事業や提案に活かしていきます。

霞ヶ浦・北浦の豊かな自然と文化を取り戻し、天然ウナギで漁業や地域経済の活性化、水辺文化の再生を実現するために、どうぞご協力をお願い致します。

アンケートの参加方法
アンケートの回答方法は、3つあります。
郵送、FAX、メールのいずれかの方法でお答え下さい。
下記のボタンをクリックするとアンケートに進みます。

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※郵送・FAXで答えるボタン(PDFファイル)が開けない方は、お手数ですが、
コチラより、Adobe Readerをダウンロードして下さい。

ウナギの一生

ウナギは南洋の深海で生まれ、利根川から霞ヶ浦・北浦へとやって来ます。
更に川を遡上し、谷津田やため池のある里山まで移動して成長します。
やがて産卵のために海へ戻り、卵を産んで一生を終えます。
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海・湖・川・里山の全てが、ウナギの生息地であり、どれも欠かすことのできない場所です。

 

過去のアンケート結果

過去のアンケートの結果はこちらからご覧頂けます。

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生物多様性保全(湖がよろこぶ野菜たち)

湖がよろこぶ野菜たち

アサザプロジェクトでは、2005年から霞ヶ浦の漁協や流域の農協、スーパーと共同で、湖の外来魚を捕獲し魚粉肥料にして農産物を栽培、販売する取り組みを行っています。
「湖がよろこぶ野菜たち」というブランド名で販売中の農産物が、多くの消費者の手に渡ることで、湖の生態系に影響を与えている外来魚の駆除や水質浄化を効率的に進めようという取り組みです。

※この事業は現在プロジェクトパートナーを募集しております。詳しくはこちらをご覧ください。

「湖がよろこぶ野菜たち」とは
霞ヶ浦でとれた外来魚や、網に入っても販売できない未利用魚を丸ごと粉末にした肥料を用いて、流域の農家で栽培された野菜たちです。
この野菜をおいしくいただくことで、霞ヶ浦の生物多様性保全、水質浄化など、湖の再生に貢献することができる、という付加価値のある農産物ブランドです。
2006年11月21日(火)からは地元の最大手スーパーマーケット カスミ20店舗で販売されています。

生物多様性保全への効果
霞ヶ浦では、外国から持ち込まれたブラックバスやハクレンなどの外来魚が増え、在来の魚や様々な生きものは生存競争に勝てず減ってしまうという問題があります。
そこで、外来魚・未利用魚を漁師さんに捕獲してもらい、この魚体を魚粉に加工して、肥料や飼料として流域での農畜産業に利用してもらえるようにしました。
これまで接点の少なかった漁業と農業がコラボレーションし、外来魚を魚粉肥料として有効に活用することで、根絶が不可能に近い外来魚を持続的に駆除するシステムができます。

2005年から2009年12月現在までに合計約350tの外来魚、未利用魚を水揚げしています。チッソやリンの除去量に換算すると、チッソ約8,5t、リン約2,5tを湖から取り出したことになります。

水質浄化への効果
魚体が成長するときに体内にチッ素やリンを蓄積していくので、この魚体を湖から取り出すことで、効率的に湖の富栄養化の要因となっているチッ素やリンを取り出すことができるというしくみです。
霞ヶ浦は広さ220km2、水の量は約8億トンもあります。
これだけの水をきれいにするのは一見大変そうですが、魚粉肥料の普及をさらに広げ、外来魚の捕獲数量を増やしていくことで、霞ヶ浦の水質浄化を進めていくことができると考えています。

「北浦・霞ヶ浦環境パートナーシップ市民事業」
「湖がよろこぶ野菜たち」の生産、販売、外来魚捕獲、魚粉肥料の生産などの一連の取り組みは、流域の様々な主体が連携した「北浦・霞ヶ浦環境パートナーシップ市民事業」として行っています。
漁業-農業-流通-消費がひとつの輪になり、湖を再生させる大きなつながりが生まれました。
この循環によって、漁業・農業の活性化、生態系保全、水質浄化、地域活性化という多面的な効果が期待されます。

漁師の皆さんのご紹介
きたうら広域漁業協同組合の皆さんと霞ヶ浦漁業協同組合連合会の皆さんが外来魚水揚げにご協力くださっています。

とっているのはこんな魚です。

チャネルキャットフィッシュ(アメリカナマズ)
北アメリカ原産 オオクチバス(ブラックバス)
北アメリカ原産

ブルーギル
北アメリカ原産 ハクレン
中国原産

魚粉肥料
外来魚は工場で魚粉に加工されます。

魚体を丸ごと使っているうえに淡水魚由来なので塩分が少なく、肥料、飼料として一級品です。
専門機関で検査を行い環境基準を満たしていることを確認済みです。
家庭菜園にも利用できますので、魚粉肥料お求めになりたい方はアサザ基金asaza@jcom.home.ne.jpまでご連絡ください。

農家の皆さんのご紹介
JAやさとのキュウリ農家の皆さん

JAやさとの所在地は、茨城県石岡市の旧八郷地区。
霞ヶ浦の水源である恋瀬川の流域に位置し、筑波山の山並みに囲まれています。
絵になりそうな美しい風景に囲まれたキュウリ畑で、生産者の皆さんが丹精こめたブルームきゅうりが、「湖がよろこぶ野菜たち」の第一弾として2006年11月、スーパーカスミの店頭に並びました。

JAやさとでは、環境保全型の農業に早くから取り組んでいます。
(「湖がよろこぶ野菜たち」のトレーサビリティのページもご覧ください。)

湖がよろこぶ料理
湖がよろこぶ野菜をおいしくいただくためのレシピをご紹介します。

ごま油、いり胡麻の「ごま」が食欲をそそる
きゅうりどんぶり
面倒な白和えがキュウリで簡単
かわり白和え

レンコンが彩り豊かに変身
甘すっぱい大地の恵み
家族そろって、一日の元気を楽しくもらう
ポパイの巣ごもり煮

目から鱗の小松菜の新たな旅立ち
エスニックand小松菜

海と湖を結ぶ( うなぎの復活を目指して )

逆水門の柔軟運用提案

逆水門(常陸利根川水門)とは、利根川河口から18.5km付近に位置する水門です。
1973年以来、水需要の確保(霞ヶ浦のダム化)のため完全に閉鎖され、霞ヶ浦と海との繋がりが絶たれています。
逆水門を柔軟に開閉することによって霞ヶ浦と海とのつながりを取り戻し、漁業の振興、地域経済の活性化、水質浄化を実現するために、アサザプロジェクトでは1997年から逆水門の柔軟運用(上げ潮に合わせて逆水門を柔軟に開閉し生物が遡上できるようにする運用方法)を提案しています。
逆水門の柔軟運用提案に関して詳しい解説は以下の資料をご覧ください。
その1 ・ その2 ・ その3
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常陸川水門建設の経緯

昭和33年 利根川地流域の降雨が少なく、異常渇水のため、霞ヶ浦下流域に大規模な塩害が発生。
昭和34年2月 利根川からの洪水・逆流防止。渇水時に利根川河口から遡上する塩水の流入防止のために『常陸川水門』建設に国土交通省が着工。
昭和38年5月 利根川からの洪水・逆流防止。渇水時に利根川河口から遡上する塩水の流入防止のために『常陸川水門』建設に国土交通省が着工。
昭和48年 湖を完全に淡水化、ダム化して工業用水、生活用水を確保するのを目的として水門を完全閉鎖。茨城県、千葉県、東京都へ上水道、工業用水、農業用水として利用。

逆水門完全閉鎖による影響

逆水門の閉鎖、霞ヶ浦の淡水化によって産業・生活用水の確保はされましたが、同時に多くの弊害が生まれました。

1.漁獲量の減少
霞ヶ浦・北浦はウナギの産地として有名でしたが、逆水門の閉鎖後4年目から漁獲量が激減しました。
ウナギの稚魚(シラスウナギ)やスズキなどの多くの魚は、上げ潮に乗って海から湖に上がってきます。これらの魚は塩水くさびと呼ばれる上げ潮の先端と一緒に川の中央部を遡上してきますが、逆水門が閉鎖され遡上が不可能になってしまったため、霞ヶ浦における漁業は大きな打撃を受けています。また、逆水門の完全閉鎖によって汽水域が失われたため、汽水域に多く生息するヤマトシジミやマハゼなども減少しています。

2.水質悪化と水生植物の減少
逆水門を閉鎖することで水の動きが少なくなり、湖にヘドロが大量に堆積するため水質にも悪影響を与えています。水質悪化対策としてしゅんせつが行われ、そのために多額の費用が発生しています。また、自然の変動に反した冬の水位上昇管理によって、湖の水生植物にも影響を与えています。

3.農作物への塩害
農産物への塩害を防止するために逆水門を閉鎖していますが、実際には農業用水の取水口が水門に近く、塩分が入りやすいという状態は完全には解決されていません。

4.工業用水の水余り
将来見込まれる水需要を確保するために逆水門を閉鎖・霞ヶ浦をダム化し水位を上昇する管理がなされていますが、現在上流部で取水している工業用水は水余りの状態です。余剰水廃棄の費用が企業の大きな負担となっています。

逆水門の柔軟運用とは

霞ヶ浦と海とのつながりを取り戻し、漁業の振興、地域経済の活性化、水質浄化を実現するために、上げ潮に合わせて逆水門を柔軟に開閉し生物が遡上できるようにする運用方法です。
そのための具体策として、上流部で取水している工業用水の余剰分を農業用水に転用するという計画を提案しています。
これにより、農作物への塩害の不安を解消し、企業は余剰水廃棄の費用を軽減することができます。この計画では、既存の施設の運用を転換するだけなので、かかる費用は最低限です。
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逆水門から上流約20kmの北浦には、下流の鹿嶋工業地帯に工業用水を送る取水口があります。この工業用水の取水口から鹿嶋南部農業用水を取水できれば、塩害の心配をせずに、逆水門を開けることができます。実は、上流で取水している鹿嶋第三期工水の送水管と鹿嶋南部農業用水の送水管は同じ県道の下を並行して敷設されており、ふたつの送水管の間は図のように数メートルしか離れていません。このふたつの送水管をつなげば、工業用水を転用して農業用水を上流から簡単にとることができるようになるのです。

詳細は
常陸川水門(逆水門)の柔軟運用に関する提案
逆水門の柔軟運用と取水方法の変更(より詳しい内容 その1 その2 )
をご覧ください。

逆水門の柔軟運用による効果

1.漁業の振興
上げ潮に合わせて逆水門を柔軟に開閉することで、魚類の遡上が可能になります。また、常陸利根川に汽水域を生み出すことができ、水産物として商品価値の高いヤマトシジミの生産が期待できます。逆水門閉鎖前まで漁獲が回復すると、漁業だけでも年間193億円もの経済効果が期待されます(UFJ総研試算)。

2.水質浄化・自然再生
逆水門の柔軟運用が実現した場合には、年間16959トン(UFJ総研試算)もの漁獲増が期待されます。魚類は食物連鎖を通して湖内の栄養分(チッソやリン)を摂取して成長するため、湖から取り出す魚が増えると、同時に多くのチッソやリンも効率的に取り除くことができます。

3.塩害解消・余剰工業用水に対する費用負担の軽減
上流部で取水している工業用水の余剰分を農業用水に転用することで、農作物への塩害の不安を解消し、企業は余剰水廃棄の費用を軽減することができます。

漁業に対する経済効果について、UFJ総合研究所と京都大学大学院地球環境学舎が評価・試算を行っています。詳細は報告書をご覧ください。
霞ヶ浦・北浦の自然再生によって見込まれる経済効果の試算~アサザプロジェクトによる逆水門柔軟運用、植生帯復元事業を対象として~

逆水門の柔軟運用に関する経緯

時期 内容
1997/12 霞ヶ浦・北浦をよくする市民連絡会議が建設省と県に逆水門の柔軟運用を提案。その後も要望を続ける。
2002/10/04 国土交通省霞ヶ浦工事事務所「平成15年度冬期から水位上昇を伴う水位管理の再開通告」
2002/10/08 アサザ基金「霞ヶ浦の水位管理および逆水門の柔軟運用(逆水門の改築計画を含む)についての円卓会議開催を求める申し入れ」 を国土交通省霞ヶ浦工事事務所所長宛でおこなう
2002/10/08 アサザ基金「霞ヶ浦の水位変動試験の中止と水位管理および逆水門の柔軟運用(逆水門の改築計画を含む)についての円卓会議開催を求める申し入れ」を国土交通省河川局長宛でおこなう
2002/10/16 参議院決算委員会で民主党の谷博之議員が「霞ヶ浦で来年冬から計画されている水位上昇管理について」質問し、これを受けて扇千景国土交通大臣が「アサザ基金が申し入れをしている霞ヶ浦の水位管理および逆水門に関して」円卓会議で話し合いその結果を見守りたいと答弁(答弁の内容は「民主党谷議員HPの活動報告」として掲載されています。(11/1時点))
アサザ基金「常陸川水門(逆水門)の柔軟運用に関する提案と要望」を国土交通省霞ヶ浦工事事務所所長宛でおこなう
2002/10/17 アサザ基金「円卓会議共同開催のための協議の申し入れ」を国土交通省霞ヶ浦工事事務所所長宛でおこなう
2002/10/22 アサザ基金「円卓会議共同開催のための協議の申し入れ」を国土交通省河川局長宛でおこなう
2002/10/25 国土交通省霞ヶ浦工事事務所「円卓会議ではなく、意見交換会を行う」と記者会見
アサザ基金同日国土交通省霞ヶ浦工事事務所記者会見を受け緊急記者会見をおこなう
「円卓会議申し入れに関する突然の記者発表に対する抗議」を国土交通省霞ヶ浦工事事務所所長に提出
2002/10/30 アサザ基金「円卓会議開催を求める申し入れ」を国土交通省霞ヶ浦工事事務所所長宛でおこなう
2002/12/13 アサザ基金「意見交換会についての経緯と見解」を掲載
2002/12 国交省が意見交換会を開催。円卓会議は意見交換会にすり替えられた。
2003/2 第155回国会衆議院国土交通委員会において、逆水門柔軟運用と円卓会議に関する質疑。
2003/7 民主党や公共事業チェック議員の会が現地を視察。逆水門の提案について関係行政機関(国交省、厚労省、環境省、農水省、経産省、茨城県)等を集めた話し合いの場が現地で持たれる。
2003/11 コイヘルペスの発生に伴い「霞ヶ浦・北浦の環境改善と漁業存続のために常陸川水門の柔軟運用を求める要望書」を提出。
2004/6/17 常陸川水門(逆水門)の柔軟運用に関する提案
2005/8 パンフレットを作成しました
2009/8/10 衆議院・茨城県知事選挙において全立候補者に逆水門柔軟運用をマニフェストに盛込むよう要望書を送付。
2009/10/1 霞ヶ浦導水事業の代替案として常陸川水門(逆水門)の柔軟運用による水質浄化の実施を求める要望書を提出
2010/6/22 常陸川水門の柔軟運用が、土浦市議会第2回定例会にて地元の市民団体によって請願され採択される。

常陸川水門(逆水門)の柔軟運用について、よくある質問と回答

常陸川水門(以下逆水門)の柔軟運用の提案については、このホームページで詳しく紹介していますが、今年(2010年6月)の土浦市議会での同提案に関する全会一致での採択などがあり、注目を集めています。この提案が具体化に向けて動き出したことを機会に、提案に関する質問も寄せられるようになっています。ここでは、とくに逆水門の柔軟運用を実施すると塩害が生じるのではないかという質問等について、お答えします。

Q1.常陸川水門(逆水門)の柔軟運用による塩害の心配は?湖を汽水化するのですか?
A1:逆水門の柔軟運用は塩害を生じないように実施します。逆水門を完全開放して湖全域を汽水化する提案ではありません。

逆水門の柔軟運用では、現在は一切行なわれていない上げ潮による海水の湖への遡上を、塩害が生じない方法で実施します。上げ潮によって海水を含んだ水は逆水門に向かって利根川をさかのぼります。この時に、海水を含んだ水と淡水(真水)は比重が違うので混ざらずに、海水を含んだ水が上流側の淡水を押し上げる形で湖に向かって遡上をします。
このときに、海から上がってきた海水と淡水の間には境目ができますが、海からの水の方が淡水よりも比重が重いために、海から上がってきた水は先端がくさび状になります。これを塩水くさびと云います。この塩水くさびの移動を観測することは難しくありません。
逆水門の柔軟運用では、この塩水くさびの先端部の遡上を観測し、逆水門を先端が通過した時点で、それまで開放していた逆水門を閉鎖します。したがって、海水の湖への進入は塩水くさびの先端部分だけであり、それにより湖に入る塩分は最小限に抑えられます。(さらに、8枚あるゲートの中から開放するゲートの数を調整することができます。このような操作は他の湖の水門でも実施されています。)つまり、このような塩水くさびの湖への導入方法と、実施時期を非灌漑期とすることで農業等への塩害を十分に防止できます。
また、柔軟運用は逆水門の下流側の塩分濃度のあまり高くない時に、また、湖の水位のあまり低くない時に実施するなど、条件の良い時にあわせて行ないます。項目4に示すように、柔軟運用実施後に、順流放流を行ない湖下流の塩分濃度を元に戻します。(2005年の例では、約1週間で元の塩分濃度まで戻っています。)

Q2.塩水くさびの先端を湖に導入するだけで効果があるのですか?
A2:塩水くさびと一緒に多くの水産資源が湖に入ることができます。

塩水くさびの先端部を湖に導入するだけでは、大した効果はないのではないのかという疑問を持たれる方々も多いと思います。しかし、私たちはその効果はかなり大きいと考えています。
海から湖へ河川をさかのぼって来る魚類等は、上記の塩水くさびの海水と淡水の境界つまり塩水くさびの先端部に乗って上流に向かって押し上げられるようにして、移動します。したがって、魚類の遡上時期に逆水門を開けて塩水くさびの先端を湖に入れれば、多くの魚類が湖に入ることができます。このような逆水門の操作(柔軟運用)を何度か実施すれば、湖の魚類、水産資源の回復を促すことができ、提案にあるように漁獲の回復・漁業の活性化によって魚体をとおして、湖の富栄養化の原因となる窒素やリンの回収を効率良くかつ低コストで行なうことができ、効果的な水質浄化を持続的に行なうことが可能となります。
また、塩水くさびと共に湖に遡上する代表的な魚種であるシラスウナギは、近年世界的に減少しており貴重な資源となっています。このシラスウナギを海から湖に導入することで、霞ヶ浦を世界有数の天然ウナギ産地にすることも可能です。漁業関係者によれば、現在も毎冬多くのシラスウナギが逆水門前まで来ているそうです。したがって、逆水門を少し開けるだけで、かなりの数のシラスウナギが湖に入ることが期待できます。
ウナギと同じく近年減少し高値で取引されているヤマトシジミも、湖での再生を図ることが可能ではないかと考えています。ヤマトシジミの産卵時期にあわせて逆水門の柔軟運用を実施すれば、塩水くさびに乗って遡上するヤマトシジミの受精卵や幼生を湖に入れることができるかもしれません。ヤマトシジミは受精卵や幼生の時期を汽水で過ごし、その後は淡水域でも生育することができると考えられます。霞ヶ浦でも逆水門が閉鎖され湖が汽水ではなくなり淡水化した後にもしばらくヤマトシジミが漁獲されていたことが、県の漁獲統計から分かります。また、他の例では、1987年に霞ヶ浦同様に淡水化が行われた秋田県の八郎湖で防潮水門(逆水門)が工事中に水門を開放していた時に大潮が湖に遡上しています。1989年~1994年までの6年もの間、再び淡水化した後も湖内ではヤマトシジミの豊漁が続き約50億円(約2万7千トン)の漁業利益があがりました。このような過去の事例も参考にして、霞ヶ浦を汽水化しなくてもヤマトシジミを再生する方法を探っていきたいと思います。
ヤマトシジミは水をろ過することで水質の改善に大きく寄与することが期待されます。宍道湖ではヤマトシジミが生息する水域では透明度が高く維持されていると聞いています。私たちは、アサザプロジェクトの目標のひとつである沈水植物群落の再生に向けて、このヤマトシジミによる水質改善も期待しています。
このように地域経済の活性化と一体になった水質改善策は持続性も発展性もあります。

Q3.国交省が魚道を作ったので、柔軟運用をしなくてもいいのでは?
A3:魚道を作ってもシラスウナギやヤマトシジミなどの遡上は期待できません。その効果は限定的です。湖全体の再生にはつながりません。

逆水門では岸にそって魚道を設置しています。しかし、国交省も認めているように、この魚道をシラスウナギが遡上することはできません。シラスウナギなど塩水くさびに乗って湖へと遡上する魚類やヤマトシジミ(受精卵・幼生)などは、魚道を使って湖に上がることは魚道の構造上不可能です。また、河川の中央部を遡上するスズキなど多くの魚類も魚道では湖への遡上を促がすことは期待できません。このように、汽水域と淡水域をつなぐ魚道の効果には限界があり限定されます。
逆水門の柔軟運用では、8門ある水門のゲートの内の河川中央部にある1門か2門を塩水くさびが遡上するのに合わせて開放し、通過後にすぐに閉鎖をすることで、塩害の生じない方法で多くの魚類を湖に招き入れますので、魚道に較べ大きな効果を期待することができるのです。

Q4.塩水くさびの先端が入っただけでも塩害が生じるのでは?
A4:過去の事例などから予測できるので、塩害の心配はありません。

塩水くさびの先端部が湖に入っただけでも農業などへの塩害が生じるのではないかという心配をされる方もおられると思います。しかし、そのような心配はないことを示す事例があります。2005年11月から国交省が逆水門の補修工事を行なった際に、一時海水が湖に入るということがありました。この時に観測された逆水門から上流部での塩分濃度は、日川地区(水門から上流に3.5kmほど離れています)で464mg/?でしたが、とくに塩害が生じたという報告もなく、灌漑期までには上昇した塩分濃度も十分に低下することができました。この件については、どこからも苦情が無かったと聞いています。
この時には、工事によるもので水門の開放ではないので効果は限定されますが、それでも湖内でサケやマハゼが獲れるなどの変化が見られました。
このような事例を参考に、また、塩水くさびの進入による塩分濃度の上昇を予測することも技術的には可能ですので、十分なシュミレーションを行なうことで、塩害の心配の無い状態で逆水門を柔軟運用することは可能であると考えます。
また、柔軟運用を逆水門下流の塩分濃度のあまり高くない時期に行なうことで、湖への塩分の進入を調整することも可能になります。
さらに塩害の防止を強化するために、鹿島工業用水の余剰水を逆水門周辺の農業地域への農業用水に転用(転売)することで、塩害を100%防止する方法も提案しています。該当する工業用水路と農業用水路は同じ国道に沿って隣接しているので二つの水路をつなぐ工事は用地買収の必要もなく、比較的簡単に、しかも安価で実現できます。

Q5.やはり湖を汽水化するべきではないのか?
A5:逆水門の管理を柔軟化することで、未来への可能性をつなぎます。霞ケ浦を世界一の湖に!

逆水門の管理は、現在霞ヶ浦開発事業の運用規則(操作規則)に則って国交省によって行なわれています。その規則によれば、湖から海側への放流時には逆水門を開放するが、逆に海から湖側への塩水くさび遡上時には一切開放をしない、つまり閉鎖するとしています。このような海側からの遡上を一切認めない状態を完全閉鎖と呼んでいます。この完全閉鎖は1973年から実施され、今日まで一切の見直しが行われていません。1973年以前に逆水門は設置されていましたが、それ以前は一定の日数での開放(海から水を上げること)は継続されていました。
私たちが提案する逆水門の柔軟運用は、湖の汽水化を実施するものではありませんが、逆水門の硬直化した管理方法を見直すことにはつながります。これは、ひとつのターニングポイントであり、未来に向けて湖内にある程度の汽水域を再生することが可能な社会的な条件が整った場合には、かつての汽水域の生物多様性を回復できる可能性への道をひらくものと考えます。まず、霞ヶ浦・北浦を世界一のウナギ産地にして、そのブランド力を高め、再生に向けた大きな流れを作っていきましょう。
霞ヶ浦が世界一を目指すことは、地域の人々に湖への関心と誇りを取り戻すきっかけになり、湖の水質浄化を流域ぐるみで推進することにもつながります。
霞ヶ浦にかつての汽水域を取り戻すことは、多くの関係者による合意形成プロセスとそのための新たな社会システムの構築を前提とする大きな社会実験となるでしょう。わたしたちは、いつの日かそのような取組みが動き出すことを期待して、この逆水門の柔軟運用を提案しています。

湖と森を結ぶ(粗朶消波堤)

霞ヶ浦・北浦流域では、森林面積が流域面積の2割までに減少し、また近年荒廃しています。
この里山・森林を手入れし、切り出された枝や間伐材を、湖岸再生に役立てます。
森林の手入れは、顧用創出、地域活性化に結びつきます。
里山文化も育ちます。
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湖と森と人とがつながる

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<H2>雑木林の手入れは、主に一般市民のボランティアで行われる</H2>
「一日きこり」です。
冬の恒例行事になったこの行事には毎回多くの参加者が集まります。
流域の里山が、こんなにたくさん元気になりました(▲)。kikorimap

粗朶消波施設設置計画の概念

伝統工法が、アサザやヨシを波から守る

市民による公共事業:湖岸自然再生事業。
植えつけたばかりのアサザやヨシは、まだ赤ちゃん。
自立できるまでは波から守る必要があります。
すぐに思い浮かぶのは、コンクリートの壁や石積みの設備による消波施設です。
確かに波は抑えられますが、アサザが自立して増えようとした時、邪魔になってしまいます。
魚も沖と浅瀬を行き来できなくなってしまいます。
そこでどのような施設がいいのかと考えると・・・
・アサザの広がりや生物の移動を阻害しない構造が必要です。
・アサザが自立して自分で波を弱められるようになる頃、無くなってくれたらベストです。
・さらに、余分なお金や資源がかからず
・作るのが難しくなく
・魚床にもなる
・・・こんな消波施設があったらいい。
答えはちゃんと見つかりました。
川の堤防を守るために使われていた、江戸時代の伝統技術、粗朶消波施設です。
粗朶消波施設とは、水底に丸太を打ち込んで枠を作り、中に雑木の枝の束(=粗朶)を入れたものです。(農文協「日本農書全集」)

アサザが自立する頃には枝が抜け、崩れて消失します。
隙間が適度にあるので水はよどまず、魚も通り抜けられます。

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見えにくかった沈水植物の役割に気づく

大きな気づきがありました。
上で延べた粗朶の役割は、実は自然界では、沈水植物が果たしているということです。
自然界では、下の図のようにアサザなどの浮葉植物のすぐ沖側に沈水植物が繁り、沖からの強い波の衝撃を最初に吸収するのです。
粗朶消波施設はまさにこの役割の肩代わりだったのです。
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残念ながら、沈水植物は現在の霞ヶ浦ではアサザ以上に見られなくなっています。
水の透明度が悪い霞ヶ浦では、太陽光が届かないので育つことができないのです。
アサザプロジェクトによる効果がもっと出て、水の透明度が高くなったら沈水植物も育つことができるようになるでしょう。
それまでは粗朶消波施設の出番は続きそうです。

粗朶を設置して4年、植生帯が広がりました

効果はご覧の通りです。目に見えて植生帯が豊かになりました。
●粗朶消波施設による波消し 1998年
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●湖岸に多様な植物群落を再生 2001年
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伝統工法の今日的な意味~農書にみる「人格を持った技術」

近代土木技術は、河川や湖沼の日常的維持管理を市民の手の届かないものにした。
行政や研究者が寄って立つ科学知には普遍性はあっても、専門分化が著しく地域を総体として把握できないという欠点がある。
数値のみで構成した施策を地域に持ち込むことで、自然や生活のあらゆる場面での分断が生じ、地域の一体感が失われてしまう例が少なくない。
実際に多くの河川や湖沼はこのような施策によって、地域の生活や文化から切り離されていった。
河川や湖沼における水質汚濁や生物多様性の低下といった問題の背景には、この「分断化」がある。
近代土木技術に偏重した発想を転換しない限り、水辺の再生を願う人々は主体的に水辺の保全や再生に関わることはできない。

伝統河川工法では、材料は現地調達が原則であり、技術もその土地に合った構造と仕組みを作り上げるもので、人々の生活とのつながりを意識したものであった。
伝統工法には土地や住民と関係性をもった技術が使われていた。
そこにはまた、生活者の経験知が生かされる場があった。
今河川や湖沼と地域住民との結び付きを取り戻そうとする活動に必要なのは、伝統工法に見るような関係性を生み出す技術である。

アサザプロジェクトを構想したときには伝統工法に関する文献や資料なども参考にしたが、とくに、多くの示唆を得ることができたのが三河国の「百姓伝記」や甲斐国の「川除仕様帳」などの農書だった。
農書は江戸時代に日本各地で作られた民間の農業技術書である。現代の技術書とは違い自然のきめ細かな観察や人間の五感を重視した技術が論じられ、またその内容は人生論にまで及び、実に多岐にわたる。
とくに、わたしが農書から強く感じたことは、多様な分野を総合する個々の人格について論じている点である。
つまり、技術が経験知の集成である人格と切り離されては語られていないことだ。
このことは、20世紀に起きた技術の暴走(大量殺戮や自然破壊)を体験したわたしたちにはとりわけ大きな意味を持つのではないか。
わたしたちに必要なのは、科学知と経験知の協働である。

粗朶消波施設の設置について

霞ヶ浦では1990年頃から石積みの大規模な消波堤が各地で設置され始めていました。
この石積み消波堤は水域を分断し、水流を妨げ、ヘドロの堆積を促すなどの環境への影響が大きいため、私たちは危機感を強め、それらの設置を中止するように国交省(建設省)に再三申し入れてきました(申し入れ書等で中止を申し入れてきたのは私たちの市民団体だけです)。
しかし、石積み消波堤の設置がその後も継続されたため、波浪に対して治水上や住民からの強い要望等がありやむを得ない場合に代替案として、恒久的に水域を分断し透過性の無い石積み消波施設による決定的な破壊を回避することを目的に、将来撤去可能で透過性が高い粗朶消波施設の設置を行なうように国交省に提案をしてきました。
国交省では波浪対策として一部を粗朶消波施設にしましたが(大半の対策地域は石積み消波堤)、これらについてはアサザ基金が要望をして設置されたものではありません。
アサザ基金は原則として波浪対策事業に反対を表明しています。
さらに、これらの波浪対策事業に対しては事前調査と事後調査を行ない公表するように申し入れ書を再三国交省に提出しています。
霞ヶ浦で設置されている大規模石積み消波施設に関する申し入れ(pdf)
蓮河原地区・境島地区波浪対策工事(石積み消波堤設置)の中止を求める申し入れ書(pdf)

アサザ基金が提案をして設置した粗朶消波施設もありますが、それらは主に1996年以来の水位上昇管理によって衰退が進んでいたアサザ群落や抽水植物群落の再生を促すために設置したもので、その中でも境島(旧東町・潮来町)や根田(旧出島村)などは湖内で特に波浪が大きい地域です。その他にも波浪の強い地域にアサザの群落が見られますが、それらすべてに粗朶消波施設を設置したわけではありません。

さらに、アサザ保全のために設置した粗朶消波施設は、アサザが群落を形成した段階で撤去することを前提にしています。

また、それらの粗朶消波施設の設置にあたっては、事前の調査が行われ当時国交省が設置した各分野の専門家が参加した委員会において設置の必要性や効果の予測、環境への影響等の議論を公開で行なっています。設置後もモニタリングが継続されています。
詳しくは国土交通省霞ヶ浦事務所WEB内、「霞ヶ浦の湖岸植生帯の保全にかかる検討会」会議資料や「霞ヶ浦湖岸植生帯の緊急保全対策評価検討会;中間評価 」、河川環境管理財団のWEB内の資料等をご覧ください。

アサザ基金による独自の調査も専門家の協力を得て実施してきました。
アサザ基金では粗朶消波施設を水質改善が進むまで再生の見込めない沈水植物群落の代替機能として位置付けています。
調査の結果、粗朶消波施設は沈水植物群落に近い消波効果があり、在来の魚類(ワカサギの稚魚など)の生息場所として機能することも分かって来ました。
実際に、粗朶は最近まで湖内の漁業で利用されてきました。同時に、石積み消波堤での調査も行ない、底質のヘドロ化や生息環境の悪化を確認しています。

沈水植物群落の再生はアサザプロジェクトの目標のひとつですが、そのためには湖の水質改善が不可欠です。アサザプロジェクトはその目標達成へ向けて流域ぐるみでの水質改善を進める取組みを行なっています。
例えば、水源地・谷津田の再生事業や外来魚駆除と魚粉の肥料化、環境保全型農業の推進、流域全域での環境教育の推進、廃食油の回収事業、森林保全と再生などを広域展開する努力を続けています(これらの取組みについては、アサザ基金のホームページをご覧ください)。

尚、一部に上記の波浪対策事業による粗朶消波施設や石積み消波堤の設置をアサザ基金が国交省に要望してきたといった意図的に誤解を広めようとする情報が流されていますが、これらは全く事実に反するものです。また、これらの消波施設で起きている現象(砂浜が消滅した、水質が悪化した、粗朶の流出、トチカガミなどが過繁茂など)を、アサザ基金が関わる粗朶消波施設で起きているかのように伝え批判する一部市民団体関係者があることは残念です。
この関係者には8年ほど前から事実関係を示し事実確認を行なうように求めていますが、「消波施設はみんな同じだ。アサザ基金が国を動かして設置している」等と云った主張を繰り広げ事態を混乱させ続けています。重複しますが、アサザ基金ではそれらの波浪対策事業による消波施設の設置にはこれまで一貫して反対をしてきました。

現在は、上記一部の人によって行なわれた粗朶消波施設への誤解と混乱を招く批判によって、波浪対策事業では現在すべてが石積みの消波堤になってしましました。
今年度も大規模な石積みの消波施設の設置工事が行われ、環境破壊が深刻化しています。
アサザ基金では、継続して国交省にそれらの設置の中止を申し入れていますが、粗朶消波施設を批判する一部市民団体関係者(大学関係者もこの市民団体のメンバーです)からは、これらの石積み消波堤への中止申し入れ等は一切ありません(その一方で、相変わらずアサザ基金が消波堤設置を要望している等の事実に反する批判を続けています。また、事実に忠実であるべき学会等でもこのような主張が繰り広げられていることは科学の信頼性を損なうものであり深刻です)。

誠意ある研究者の皆様には、事実関係をご確認いただき、学問の世界の健全化に向けて、科学的客観的な批判が行われることを期待しています。
また、私たちの取組みは現在多岐にわたっていますので、それらについての科学的な評価をしていただける研究者を求めています。
その他、疑問の点等がありましたら、アサザ基金に問い合わせを頂くようお願いします。

人と湖を結ぶ(アサザの里親制度)

アサザの里親制度

『 アサザを植えつけて、波によるアシ原の後退を食い止めよう!』
1995年、「アサザの里親制度」が始まりました。

アサザの里親と植付けの主役は、子どもたちと公募の市民です。

アサザの種をとり、これを育て湖に植え戻してくれる方に種を配布します。
そして、里親が育てたアサザは、湖に植え戻します。
湖のアサザ群落を回復させ、アサザ群落は波を弱めてヨシ原を再生させます。
市民による自然再生ができるという仕組みです。
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子供たちが支えたアサザの里親制度

アサザの里親は95年200人でスタート。
2人の女の子が、学校ぐるみで参加するため、校長先生に資料を持って
説明したいという動きから、参加者が爆発的に増加しました。
子供たちの自主的な動きがプロジェクトを支えたのです。

湖に生息する野生生物であるアサザを日常の場で育てることで、
湖の自然を理解するきっかけとなり、
自分達が育てたアサザを湖に植えるけることで、湖との絆をつくり、
湖が自然の働きで再生するという物語を共有することができます。

霞ヶ浦再生のシンボル、アサザを育てる里親になりませんか?

satooya2現在、霞ヶ浦のアサザが危機的状況です。アサザを絶滅から救うにはみなさんの協力が必要です!
美しいアサザの花畑を復活させ、様々な生きものが暮らす豊かな湖、「100年後にトキの舞う霞ヶ浦・北浦」を目指して、アサザを守り、育てる取り組みに参加しませんか?アサザの里親になってくださる方を大募集しています。

アサザの里親になるには

アサザの苗(ポット)を無料でお分けします。

里親をご希望の方は、まずはアサザ基金までご連絡ください。
みんなでアサザの苗を育て、夏に湖に植付けに行きましょう。
アサザの苗の配布を行いますので、ご家庭や、学校、職場、グループなどでお申込の上、ご参加ください。
アサザの苗の送付をご希望の方も、下記連絡先へお問合せください。アサザの苗と育て方をお送りします。
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学校の先生方で、アサザを活用した学習をご検討の方は、以下の「霞ヶ浦のアサザを活用した総合学習への取り組み」をご覧下さい。
※この取り組みは生物多様性保全のために行っておりますので、基本的に霞ヶ浦・北流域での募集となります。それ以外の地域の場合はご相談ください。
※アサザの再生は計画的に行っています。植付け会以外で湖への植付けは行わないで下さい。
※育てるのが困難になった場合は、アサザ基金へ全ての苗をお返しください。

アサザの育て方

お渡しした苗は、大きめのバケツにいれて水の中に沈めてください。(葉は表を上向きにして水面に浮かせます。)
あとは、日当たりのよい場所に置いて、茎の成長に合わせて水位を調整してあげてください。
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アサザの苗づくり

アサザの苗が大きくなって茎がたくさんのびてきたら、株分けを行って苗を増やすことができます。
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アサザの苗供給ステーションの協力募集

企業、個人でアサザの苗を育て、里親希望の方に配布していただける方を募集します。
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応募方法
メール、FAX、お電話にて、ご住所、お名前、ご連絡先を明記の上お申込みください。
(郵送での苗のお届けをご希望の場合、送料に関しましてはご負担いただきますようお願いいたします。)
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連絡先
認定NPO法人アサザ基金
   〒300-1222 茨城県牛久市南3丁目4-21
電 話:029-871-7166
FAX:029-801-6677
メール:asaza@jcom.home.ne.jp

アサザとは

アサザとは、ミツガシワ科アサザ属に属する多年性の水草(浮葉植物)で、水面に手のひらくらいの大きさのハート型の葉を浮かべます。
夏から秋には美しい黄色い花をさかせ、湖のアサザにはたくさんの魚や水鳥やトンボなどの生きものが集まります。アサザがあるところは生きものたちの大切なすみかになるのです。
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アサザの種は、水に浮かんで砂浜やアシ原に運ばれます。種はそこで冬を越し、春になると目をだして成長します。
アサザが芽を出した場所は、梅雨の頃には水の中に沈み、アサザは水面に浮葉を広げ、沖に向かってのびていきます。

かつては日本中の湖や沼でみられましたが、現在は水辺のコンクリート護岸、水質悪化の影響で発芽できる場所がなくなってしまい、絶滅の恐れがあるといわれています。
詳細は「霞ヶ浦のアサザが絶滅の危機!」をご覧ください。

アサザが教えてくれた、霞ヶ浦再生へのヒント

アサザは湖岸から沖に向かって水面の広い範囲に浮葉を広げるので、アサザの群落が波を和らげ、岸辺のヨシ原を波による侵食から守ってくれます。
アサザには、自然を少しずつ呼び戻す力があるのです。
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1995年、手探りで「アサザの里親制度」が始まり、アサザをはじめとする水草を霞ヶ浦に植えつける活動をはじめました。そんな中、2人の女の子が、学校ぐるみで参加するために校長先生に資料をもって行って説明したという動きから、参加者が爆発的に増加しました。
プロジェクトを支えたのは子ども達の自主的な動きであり、里親と植付けの主役は小中学校の子ども達や企業・市民団体の方々なのです。

2010年4月現在、取り組みに参加したのは流域の200の学校と20万人もの地域のみなさんです。
流域の小学校を中心に、企業の方々などが里親や植付けをはじめとし、霞ヶ浦の再生を願い、様々な場面でアサザプロジェクトに参加してくださっています。

霞ヶ浦のアサザを活用した総合学習への取り組み

アサザ基金は、1995年からアサザの苗を育て霞ヶ浦に植えもどす学習プログラムや、学校ビオトープを使っての環境学習を提供させて頂いております。
特にアサザは霞ヶ浦で絶滅の危機に瀕しており、アサザを育てることは霞ヶ浦・北浦という身近な自然を守る取組みへとつながります。また、郷土の湖である霞ヶ浦について学ぶ格好の教材でもあります。
学校や地域特性に合わせた総合的な学習(環境学習、教科学習)を行うことで、地域の未来を担う子供たちの学習意欲を高め、生きる力を育てていきます。
御校のこれまでの学習を活かし広げるプログラムを、学校のご都合に合わせた形でご提供させていただいております。ぜひ、ご活用の程よろしくお願い致します。

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霞ヶ浦の水生植物アサザを活用した学習例

アサザを育てる
アサザを育てて湖に植え付け
植物の育ち方(3年理科)
生きものを調べよう(4年理科)春・夏
植物の成長と肥料・日光(5年理科)
植物の実や種子のでき方(5年理科)
湖での観察 生きものを調べよう(4年生理科)春・夏・秋・冬

出前授業詳細
アサザを活用した学習を採用していただく学校さんには、アサザについてとアサザの育て方についてお伝えする出前授業を提供させていただいております。
この他にも、子供たちの夢“生きものと共生する社会の実現”にむけて、地域レベルから地球レベルまで、さまざまなプログラムをご用意しています。まずは、お気軽にご相談ください。

<アサザの苗づくり>
時期:6月~7月
対象:小学校3年~6年
内容:1コマ目(45分):教室で「霞ヶ浦の環境とアサザのくらし」を勉強します
2コマ目(45分):野外でアサザの苗づくりを行います

<アサザの植付け>
時期:夏休み
内容:2コマ(90分):アサザの植付け
(湖への移動手段は学校さんでご手配いただきますようお願いいたします。)

出前授業を希望される学校さんは、下記に電話にてご相談下さい。
問合せ:TEL 029-871-7166

※出前授業は寄付によって運営しています。学校さんのゲストティーチャー制度の謝金をご用意いただければ幸いです。
※基本的に霞ヶ浦・北浦流域での募集です。
それ以外の地域の学校は、まずはご相談下さい。

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湖岸の自然再生

よみがえれアサザ咲く水辺
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アサザプロジェクトの象徴的な事業「湖の自然再生事業」。
この取り組みを、生きものたちがいま、評価してくれています。

波間のアサザがプロジェクトの原点

霞ヶ浦・北浦は死んだと言われていました。
霞ヶ浦は日本で2番目に大きな湖で、湖面積は220平方キロメートル。
流域面積はその約十倍にもなります。
豊かな湖岸の植生帯をもち、漁業資源も豊富であった霞ヶ浦は、首都圏に位置する霞ヶ浦は、人口増加や経済活動の進展に伴った、工業化や都市化に応じた大規模な水資源開発により、湖岸はコンクリートで固められ、水門が閉鎖にされたことで海との連続性が絶たれたのです。
森林やため池などの身近な水源が失われつつあり、流入する水質も悪化。
霞ヶ浦で暮らしていた生きものたちも、湖の環境悪化により住みにくくなってしまいました。
沈水植物が大幅に減ったことで、沖からの波が減衰せず直接コンクリート護岸に当たり、残っていた植物も打ち返しの波で侵食されて、次々と消滅。
湖に暮らしていた鳥や魚なども減っていきました。霞ヶ浦は死の湖と呼ばれるようになっていました。

湖岸の自然を取り戻すアサザプロジェクトの始まり

とにかく現場である霞ヶ浦と向き合い、もっと知ろう。
そんな思いから、1994年より飯島(アサザ基金代表)と小中学生による約252㎞の湖岸を歩く霞ヶ浦の調査が始まりました。
この霞ヶ浦の宝探しをする中で、死の湖と呼んでいた霞ヶ浦にも小さな命が無数に宿っていることにきづきました。
そこでの出会いの一つがアサザです。
アサザが生えているところでは波が和らげられ、岸近くでは波がほとんど無くなっている。
これを目にしたのがプロジェクトの原点になりました。

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アサザなどの波があっても暮らしていける浮葉植物の群落があるところにはでは、波が穏やかになるため、波に運ばれてきた土砂が堆積し、やがて浅瀬を形成するのです。
まずは、霞ヶ浦に希望を持ち続けている多くの方々と一緒にアサザの復元(アサザの里親制度)に取り組みました。
この湖岸の植生が自らを保つためのしくみを活かして湖の自然再生を市民の手で行おう、という発想からアサザプロジェクトの活動が始まったのです。

ピンチ襲来冬季間の水位上昇で大きなダメージ

1996年、 霞ヶ浦開発事業 の一環として、安定した水資源確保の名目に、冬季間の水位を上げる措置がとられ(しかし、現在実際には水余りが生じています)、その影響を受けたのです。
霞ヶ浦では冬季に水位が下がるのが自然な姿です
生き物たち、特に植物はそれに適応しています。
だから冬季に水位が高いことは、それら生きものにとって致命的。
湖岸の植物は危機的に減りました。
また、自然界は、多様な生物同士のつながりで成り立っています。
一つの種が打撃を受けると、他の種にも影響が連鎖的に広がるのです。

市民の声が国を動かす ~植生帯復元事業~

強い危機感を感じた市民達は、冬季の水位上昇の中止を訴え続けました。
国交省がそれに応えて、水位上昇を中止して湖の再生事業を開始しました。
植生帯の復元を市民との協働で実験的に実施し、その期間中は水位上昇をやめる という内容です。
この公共事業の中で、アサザプロジェクトのネットワークや手法が数多く活かされました。
2000年10月~、11ヶ所で取り組みが始まりました。
地区の特性に応じた自然な復元をめざすものです。

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工事の内容

土をいれて、浅瀬を作ります
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粗朶消波堤を設置します

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底土の流出を防ぐことにより、植物の定着を助ける働きが生まれます。
造成が終わった場所には、植物を植えつけます。
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子どもたちや市民の手でマコモやアサザなどの植付けを行いました
(今までに1万人以上の市民が湖に入って植付けをしています)
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植生帯復元前

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植生帯復元後

生き物が戻った!

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アサザのお花畑

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取り組みの甲斐あって、アサザのお花畑が広がりました。
秋には黄色のお花畑が水面に広がり、素晴らしい光景を楽しんでいただく事ができます。

アサザの植付けについて
アサザ基金では、霞ヶ浦にあった元々の植生帯の中にアサザ咲く景観を取り戻すことを目標に取組んでいます。アサザだけが生えているという不自然な自然再生はまったく最初から考えていません。
現在、絶滅の恐れのある霞ヶ浦のアサザ群落を保護することを目的に、もともとアサザが生育していた場所(34カ所・1996年)の内の9カ所(石田、根田、境島、古渡、鳩崎、永山、梶山、大船津、爪木)で植え付けによる群落の再生を行なっています。それらの再生に使うアサザ株は、流域の各小学校で系統保存されている株(それぞれ由来証明書を付けています)や、市民ボランティアや企業、団体などで保存していただいている株(各アサザの里親には、勝手にアサザを植えるなどの行為を行なわない旨の誓約書を書いてもらっています)を、使用しています。
それらの再生は、専門家による研究を活かしながら実施しています。近年(国交省が湖の生態系に影響がある水位上昇管理を実施以来)アサザが急激に減少し続けています。アサザの群落数は34カ所から2010年現在9カ所(根田、麻生、鳩崎、和田岬、境島、大島、爪木、梶山、大船津)に激減しており、このまま群落数を減らし続けることは、霞ヶ浦のアサザを絶滅に追い込むことにつながることから、研究者のデータを基にアサザの種子が自然状態で定着し群落を形成する可能性の高い場所(セーフサイト)から3カ所で群落再生を試みています。
したがって、最近一部の団体関係者から指摘のあるような「やみくもにアサザを植えている」などということは全くありません。アサザ基金では、霞ヶ浦にあった元々の植生帯の中にアサザが咲く景観を取り戻すことを目標に取組んでいます。アサザだけが生えているという不自然な自然再生は最初から考えていません。
アサザは植生帯のメンバーの一員であり、同時に生態系全体に大きな影響を及ぼす湖の水位管理の影響を受けやすい植物でもあります。アサザについては水位管理前後の分布の変遷が正確に分かっていることや、その生活史に関する研究から人工的な水位の変化に伴う影響を受けるという仮説が立てられていた種であることから、指標のひとつになると考えています。わたし達のようなNPOでは、湖全域の植生帯についての水位による影響を詳細に調査することは労力的に不可能です。現実的に、調査可能なアサザを指標に選んでいます。(霞ヶ浦に関しては、水位管理に対してきちんとした提言を行なう研究者がいないことが問題です。水位管理について具体的な案を示さずアサザを批判をするだけの研究者の責任はとくに重大です。)
また、同様の関係者からは、「アサザ群落の再生が沈水植物の再生を阻害している」といった批判がネット上などに流布されていますが、そのような批判については以下のように考えています。

1.原則アサザ群落がもともと生育していた場所での再生を行なっており、湖全体の中で見れば、アサザが湖面を葉で被うとしても限定された地域になることから、もともと湖のほぼ全域に生育していた沈水植物群落の再生場所は十分に確保されています。

2.アサザ群落が水面を被い水中の沈水植物が再生できないという批判については、水位上昇管理以降にアサザ群落が次々と消滅し、すでに消滅後10年以上経っている地域もありますが、一向に沈水植物は再生してきません。
これは、現在の水質汚濁が進み富栄養化した湖の状態(透明度がきわめて低い→水中の沈水植物に日光が届かない)では、沈水植物の再生は不可能であるということです。また、湖の中に造られた浅瀬に沈水植物が再生することがありますが、2,3年でヨシやヒメガマ、マコモなどの抽水植物が浅瀬を被い尽くしてしまうため、沈水植物は消滅してしまいます。
沈水植物群落の再生には、困難な課題ではありますが流域の社会システムの再構築(環境保全型・循環型社会)を通して湖への流入負荷を減らし、湖の富栄養化を改善する以外にないと考えます。そのため、アサザプロジェクトではホームページで紹介しているような水源地再生事業や環境保全型農業推進、流域全域での環境教育、循環型まちづくり事業、森林保全などの多様な取組みを、流域全体を視野に入れ展開しています。これらの取組みを総合的に評価するのが、湖の沈水植物です。

3.長期的な視点でアサザの存在を捉えてみた場合、アサザプロジェクトの流域全域での展開が実を結び将来湖の富栄養化が改善された時には、各アサザ群落の大きさ(葉で水面を被う面積)は縮小するでしょう。それは、かつて霞ヶ浦が富栄養化する以前の調査結果を見ても明らかです。それに変わって透明度の高くなった湖内に大規模な沈水植物群落が再生されると考えています。このような状態がアサザプロジェクトの目標となっています。
なお、アサザ基金では、沈水植物群落の再生実験をこれまでにも行なってきました。霞ヶ浦の湖内での実験(日光が届く浅瀬で再生を試みたが失敗)の他にも、学校の使われなくなったプールを利用した実験などを行ない環境教育と一体化した形で調査や観察を実施しています。プールでの実験では透明度の回復に伴い全域を沈水植物で被うことができました。また、一緒に植えたアサザの群落もあまり大きくならないことを確認できました。

4.アサザ群落ができると水面を葉で被うために、水中の酸素が減少し水質を悪化させるという批判があります。その場合よく参考事例として示されるのは、浮草(湖底にまで茎をのばさず湖底に根も張らない)で水面を被われた水域です。たとえば「ボタンウキクサ(外来種)で被われた池を見せて、これに黄色い花を付ければアサザと同じだ」といった乱暴な批判を行なう研究者がいます。
しかし、アサザは浮草とは違い(アサザは水中の茎から多くの根を出すヒシとも異なります・ヒシは一年草でかつ湖底で種子が発芽できるため、前年までに散布された種子から一気に大きい群落をつくることができます。一方アサザは多年草で、種子は湖底では発芽できず、一気に水面を覆うことはありません)、アサザは水面に浮く葉から茎が湖底に向かって伸び、そのまま湖底の土の中の地下茎につながっています。水面に浮くたくさんの葉のそれぞれには小さな穴がいくつも開いていて、ここから酸素の少ない湖底の根にまで空気中の酸素を水中の茎を通して送っています。アサザはこのような通気システムを持っているため、アサザ群落の下の水底には酸素が根から供給されます(Grosse W, Mevi-Shuetz J (1987) A beneficial gas transport system in Nymphoides peltata. American Journal of Botany, 74, 947-952.)。また、アサザ群落の無い水底に較べて、水底に生息する生物の種類・数ともに多くなるという研究があります(Brock TCM, Van der Velde G (1996) Aquatic macroinvertabrate community structure of a Nymphoides peltata-dominated and macrophyte-free site in an oxbow lake. Netherlands Journal of Aquatic Ecology, 30, 151-163.)。
つまり、アサザが水質を悪化させるという評価は、アサザのごく一部分を見た個別縦割り型評価の典型といえます。

いずれにしても、アサザはもともと自然に霞ヶ浦の植生帯の一員として生育していた水草です。そのような植生帯の中でアサザが多様な生物とどのような複雑な相互作用を持つのかはまだ十分に解明はされていません(アサザの葉を食べる魚や水鳥、昆虫等との関係・食物連鎖もその一部です)。しかし、それは、植生帯と構成するアサザ以外の多様な種も同様であり、そのような科学的な視点から見ればある側面を捉え「どの水草は悪い」「どの水草は良い」といった勝手な価値観を声高に主張し、生態系の解明に向けた研究や評価に持ち込むこと自体が、非科学的であり科学の基本を逸脱した行為と言わざるをえません。とくに大学等での科学教育の充実を望みます。
しかも、霞ヶ浦のアサザは現在きわめて危機的状況にあり、これ以上の減少を食い止めなければならない時に、上記のような部分的な評価で「アサザを植えるのは悪いこと」「水質を悪化させる」などと云った情報を流布することは、ただアサザを絶滅に追い込む手助けをしているに過ぎないことになります。

最後に、アサザの保護は霞ヶ浦再生事業の一部ですが、保護の背景には湖の水位管理の在り方や湖の生物多様性の保全等の重要な課題があることを十分に理解して頂き、批判をされる場合には、自分はどのように具体的に湖を再生する(例えば、沈水植物群落や水質改善、水位管理など)ことができると考えているのかを示して頂きたいと思います。一方的に相手を批判する姿勢では、霞ヶ浦再生の取組みの健全な発展は望めません。
みなさまの理解と協力をお願いします。

NPO法人アサザ基金

アサザ群落の分布について
霞ヶ浦のアサザ群落は1994年と1996年では、湖全域の34カ所で確認されています(西廣ほか 2001, 応用生態工学)。地元の方々からはそれ以前には他の場所でも見たという話も聞いています。
また、「霞ヶ浦の水生植物」の中でアサザは「霞ヶ浦では、ほぼ全湖に散発的に分布し、波浪の影響を受ける開水域にも大きな群落をつくる。特に西浦右岸下流の北利根川河口の大群落は、面積3haに及ぶ純群落で、夏秋の頃沖側から眺めると、ガマの群落を背景にして一面に黄色の花を開いた風景はなかなか美しく、見ごたえがある。」と記述されています(桜井義雄、国土交通省霞ヶ浦河川事務所(2004) 霞ヶ浦の水生植物―1972~1993.変遷の記録, 信山社サイテック)。
しかし、一部にアサザは元々霞ヶ浦にはあまりなく、1994年頃に雨が少なく夏が暑い等の条件が重なったことでたまたまアサザの生育に合った条件が重なり、その結果一時的にアサザが多く見られただけであり(一時的な特殊な現象に過ぎない)、そのような一時的で特殊な現象を基にアサザを保護するというのはおかしいという意見(批判)があります。
わたしたちは、このような意見はアサザの生態を無視したものであり、科学的な根拠が示されず検証も行なわれていないため、憶測にすぎないものと考えます。その理由は以下のとおりです。

たとえば、ヒシは1994年頃に湖の各地で突然大きな群落を作りました。その理由は、この頃は上記のような気象条件があり、ヒシの生育に適していたためと考えられます。しかし、それに加えてヒシが一気に湖の各地に群落を作ることができた大きな理由がありました。それは、ヒシは一年草で生育条件の良い年に大量の種子を生産し湖底に広く散布するので、次に条件のよい年が来た時には湖底に蓄えられた種子が一気に広範囲で発芽し茎を水面にまで伸ばし葉を広げることができるからです。実際に、これまでにも好条件の年にヒシ群落は突然湖の各地に出現しています。
上記のように、ヒシが一気に大きな群落を各地に形成できる最も大きな理由は、種子が湖底で発芽できることにあります。
では、ヒシと同じ浮葉植物であるアサザも、批判をしている人が言うように1994年頃、好条件のもとに大発生をしたと考えるべきなのでしょうか。実は、アサザにはヒシのように一気に群落数を増やし群落面積を増やすことができない理由があります。それは、アサザはヒシと違い湖底で種子を発芽させることができないからです。アサザの種子は浜などに打ち上げられ、水辺の陸地部分で発芽する生態をもっています(鷲谷 1994, 科学、高川 2006, 博士論文)。1994年頃に湖で確認された34カ所のアサザ群落の大半は、周囲に種子を発芽させるために必要な浜やヨシ原などの陸地を持っていませんでした。つまり、コンクリート護岸(垂直の壁)に隣接した環境にあったわけです。したがって、大半のアサザは生育に好条件の年であっても、種子から群落を作ることはできない状況にありました。もし仮に、アサザ群落の近くに浜やヨシ原などの陸地があった場合にも、陸地で発芽したアサザの株がランナー(横に伸びる茎)を伸ばして水域に広がり小さな群落を作るにも数年はかかります。実際に私たちが、アサザを植え付けてから、その後の推移を観察した結果、植え付け後にアサザが広がりある程度の群落を形成するには10年近くかかることが分かっています。したがって、どんなに好条件が揃っても、アサザが短期間に種子から発芽して急に各地に群落を形成するとは考えられません。
さらに、陸地部分で発芽したアサザも、ほとんどが大きな波浪や増水などを受けて流されてしまったり、まわりに背の高い草が茂って日が当らなくなって枯れてしまったりして、実際にランナーを伸ばして湖に群落を作ることができる株はほとんどなく、まして、現在の湖ではコンクリート護岸の影響で波が荒くなり、さらに不自然な湖水位の管理の影響も加わっていることを考えれば、アサザの種子が発芽して湖に群落を作ることはほとんど不可能に近い状態になっています。
このようにアサザが種子から群落を作ることがほとんど出来ない状況は、湖岸のコンクリート護岸化が始まった1970年代から1990年ごろまでに湖全域に及びました。(アサザ保護をテーマにした環境学習では、上記のようなアサザを減少に追い込む原因について学ぶことで、湖の多くの生物が同じように護岸や水位管理、水質汚濁等によって大きな影響を受けている現状を知り、改善の方法を考える学習へと展開します。)
以上のような理由から、1994年ころに確認されたアサザ群落は、かなり以前(1970年頃から始まった護岸工事以前)に種子から広がった群落の生き残りであり(アサザは多年草です)、「アサザはもともとそんなに無かった」という批判をする人が言うように、当時の34カ所のアサザ群落が好条件のもとに急に増えた(発生した)と考えることは不可能です。
上記のように、アサザが長い間種子から新しい群落を作ることができない環境にあったと考えられること、また現状でも種子の発芽する条件がほとんどないということは、アサザがいつ絶滅してもおかしくない状況を示しています(高川 2006, 博士論文)。現在生き残っているアサザ群落の寿命が尽きたり、水位上昇(1996年~)のような悪条件によって群落が衰退してしまうと、一気に絶滅してしまう恐れが高いのです。

アサザは湖の生態系の一員です。そのひとつの生物が危機的な状況にあるということは、同じように湖の自然環境に依存してきた他の多くの生物も、人間による湖の環境の改変によって大きな影響を受けていると考えるのが自然です。したがって、アサザによって示されている問題を、アサザだけの問題として狭く捉えるのではなく、湖に生息する多様な生物への影響を考えるひとつの契機と考え、湖の生物多様性への人々の関心を高め、湖の生態系保全に必要な考え方の普及や霞ヶ浦再生活動に結び付けていくことが、アサザの保護に取組む私たちの真の目的です。
これまで述べてきましたように、一部団体関係者が言うように「もともとは霞ヶ浦にほとんど無かったアサザを、一時的に増えた特殊な現象を基に保護するのはおかしい」といった批判は科学的とはいえません。上記のような批判を科学的な根拠もなく思い込みで主張することは、アサザだけではなく湖の生態系を保全するための取組みを後退させるだけです。実際に、このような無責任な主張によって、重要な議論が混乱させられてきたのも事実です(それにより、アサザ衰退を契機に行なわれていた水位上昇の中止(2000年)が2006年にはほぼ再開されてしまいました。また、アサザ批判と一緒に行なわれた粗朶消波施設への批判に乗じて、環境破壊著しい石積み消波堤が一気に増設されていきました)。
今緊急に求められているのは、国交省による不自然な湖水位の管理(冬期の上昇など)が生態系に及ぼしている影響について科学的に検証することと、今後に向けて自然と調和した水位管理の実現に向けた真摯な議論を重ねていくことです。一部の団体関係者によって行なわれている上記のような批判の仕方は、結果として現行の水位管理による湖の生態系へのダメージを継続させるだけであり、湖の多くの生物を絶滅に追い込むことにつながることを関係者は十分に理解し、改めるべきです。
研究者の肩書を使い次々と科学的な根拠の乏しい原因仮説を主張し、議論をただ長引かせ問題解決を遅らせた結果、被害を拡大させ多くの犠牲者を出した水俣病の教訓を忘れてはなりません。
わたしたちは霞ヶ浦の再生へ向けた取組みや研究の健全な発展を心から望みます。

NPO法人アサザ基金