「湖がよろこぶ野菜たち」

霞ヶ浦の外来魚対策事業
( 生物多様性の回復と水質浄化、漁業の振興のための外来魚魚粉化・利活用、農作物ブランド化事業 )
農林水産業、加工業、流通業、小売業、消費者、NPOによる協働事業

湖がよろこぶ野菜たちとは?


霞ヶ浦で増加する外来魚の問題は解決が難しいとても大きな問題です。
この問題を解決していくためには問題を資源化するという新しい発想が必要です。
またひとつの事業で多面的な効果が期待できる取り組みによって広域的かつ継続的に対策が行われていくことが必要です。
そしてその取り組みを拡大、継続していくためには年度単位で事業が終了する行政主導による取り組みではなく、
事業を発展させるビジネスモデルを用いた取り組みを行っていく必要があります。
そのビジネスモデルをつくりあげていく取り組みが本事業です。

このビジネスモデルをつくためには、流域で生活を営む漁業・加工・農業・流通・小売・消費者・NPOなどさまざまな主体がかかわる霞ヶ浦再生に向けた新たなつながりを生み出すことが必要です。
そのつながりを作っていくのは霞ヶ浦再生を実現する仕組みから生まれる「野菜」です。この野菜が作られ、流通消費されていく、この流れから生まれる価値を商品に付加してブランド化を図り、事業を拡大、継続させていくビジネスモデルです。
霞ヶ浦再生を実現する仕組みとは、具体的には以下の図のような流れになっています。スライド1

1.市場価値のない外来魚は漁業によって捕獲されずその量は増える一方です。
そこで外来魚に市場価値を付与することで、漁業者に外来魚増加に対する抑制効果のあるまとまった量を水揚げしてもらいます。(漁業収入となる)
s水揚げ1 s水揚げ2

2.その外来魚を肥飼料(魚粉)へと加工してもらい、それを流域の農畜産業で化学肥料等の代わりに活用いただきます。
湖の魚たちは成長過程で窒素やリンといった湖の富栄養化物質を体内に蓄積しています。
水から取り出すことが難しい富栄養化物質を漁獲を通じて取り出し、活用することができます。
これは霞ヶ浦の水質改善になります。
s魚粉写真 sハス田魚粉施肥

3.できあがる農作物に上記1.2の費用を組み込み、このシステムの周知を図った上で、「湖がよろこぶ野菜たち」という霞ヶ浦再生ブランドとして地元スーパーで流通、消費者が購入、消費することで、持続可能な霞ヶ浦の再生と活性化をビジネスモデルとして実現しています。
このビジネスモデルの規模が大きくなるほど生まれる効果も増していくので、この問題の解決にビジネスモデルで取り組むことは効果的であると思われます。
この野菜が売れれば売れるほど外来魚を減らすことができるシステムです。
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特徴


この事業は従来、行政が行ってきたような外来魚の駆除にも処分や費用をかけて実施する自己完結型の取り組みではなく、市場価値のない外来魚を肥飼料へと変えること(問題の資源化)で価値を生み出すことから始まる一石何丁もの効果が生まれる取り組みです。
またこの取り組みはそれぞれ役割を担う人々の生産意欲を引き出すことができ、事業が拡大継続していくポテンシャルを持っています。
また社会の中で各主体が潜在的に持っている社会的機能を発揮することで、部分最適化ではなく、全体最適化が民間によって進む社会システムづくりにもなっています。

効果


・霞ヶ浦の生物多様性保全効果:漁師による大量捕獲による生態系レベルでの外来魚駆除効果を実現。これまでに約409tの外来魚の駆除を実現。
・霞ヶ浦の水質改善効果:外来魚の水揚げを通じた富栄養化物質の回収
これまでに窒素約10.2t、リン2.8tを湖から回収。行政による水質浄化事業(底泥浚渫)は窒素100kg回収するためにかかる費用は2161万円に対して、本事業は28万円、同様にリンは2億1千万円程に対して、137万円とケタ違いの費用対効果となっています。
・漁業振興:市場価値のない外来魚に価値を付与して水揚げを実施。これまでに約2000万円の漁業収入が生まれた。
・霞ヶ浦の水質保全効果:外来魚からできあがる肥料を流域で化学肥料の代わりに活用することで、新たに流域外から栄養が供給されることを防ぐことができます。
・環境保全型農業の推進・農業の活性化:有機農産物の規格に乗せることができない大多数の農家にも、この魚粉を使用することで、霞ヶ浦の自然再生・水質改善に参加できるシステムを提供し、環境保全型農業への意識が高まります。この事業は、以上のような一石何鳥の効果を生みだすことができる取り組みです。

活動内容


この取り組みの企画運営・連絡調整等をアサザ基金が担っています。
従来つながりのなかった多様な分野をつなげるビジネスモデルを構築し、それぞれの参加主体には本業を通じてこのビジネスモデルシステムへの参画をいただいています。
具体的には、霞ヶ浦漁業協同組合やきたうら広域漁協の漁師さんに外来魚の捕獲を依頼し、捕獲された外来魚を魚粉へと加工していただきます。(中央飼料株式会社
外来魚の水揚げ現場での運搬車への荷入れ作業などの現場作業を行います。
できた肥料はJAやさと、武井蓮根農園などの農業生産者の方に活用いただき、出来上がる産品のブランド化とその流通については株式会社カスミさん(スーパー)に協力をいただいています。
また新規にご参加いただけるパートナーの募集、開拓にも取り組んでいます。

位置づけ


地域活性化: 外来魚問題というマイナスをプラスに変換すること(問題を資源化する発想)で、霞ヶ浦の外来魚問題に流域の多様な主体が協働で取り組むビジネスモデルを構築できます。この発想の転換によって地域に新たなブランドを構築することを実現しました。
環境教育: 従来の「外来魚駆除を行っています」といった自己完結型・問題解決型の取り組みの限界を知り、真の問題解決には、多様な主体の協働による価値創造型事業による取り組みが必要であることを学習できます。また問題を資源に転換する発想を理解する場として活かすことができます。
社会を変える: 行政主導の取り組みの限界を明らかにし、民間主導による価値創造型の取り組みに転換するモデルとなる。環境問題と地域活性化を同時に実現できることを示すことで、霞ヶ浦の外来魚問題や水質改善に対してビジネスモデルの特性である事業の発展性や拡大への意欲、持続性を活かした実物大社会モデルの構築を、社会全体を視野に入れた上で行うことができます。
企業との協働: NPOが社会のホルモンとして機能を果たし、企業と多様な主体を結びつけ、企業の本業を生かした社会の問題解決に結びつけることができます。
循環型社会: この取り組みにより湖から活用できるアウトプット(漁獲や窒素・リン)を増大させ、経済効果を生み出し、行政による公共事業以上の効果を生み出すことで、社会的費用の削減といった効果を生み出します。さらに新たな社会システムの構築を通して湖をめぐる物質循環システムも構築できるようになりました。
自然再生・生物多様性: 外来種・移入種問題という従来の取り組みや行政施策の限界を踏まえたうえで、民間の発想を生かすことで、霞ヶ浦の外来魚や水質汚濁といった解決が難しい問題にも取り組むことができる実物大社会モデルとなりました。

 
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