人と河童が出会うまちづくり

学校ビオトープからはじまるまちづくりとは?

2004年から、茨城県牛久市の全小中学校の子どもたちが『人と自然が共生する牛久』をめざし、地域の特徴を学び、まちづくり提案をし、その学習の成果を実際の社会に実現していく、子ども主役のまちづくり・人づくり事業が始まりました。

茨城県牛久市は、東京から50km圏内にあります。

牛久市には谷間の田んぼ(谷津田)が多くあり、牛久沼と霞ヶ浦への水源地となっています。図3

谷津の入り口には必ず古い集落があり、人々は水源地である谷津田を基盤に地域づくりを行ってきました。そこは同時に、多様な生き物たちの生息の基盤となり続けてきました。図2

牛久のまちは人と人、人と自然、自然と自然のネットワークで覆われていたのです。
牛久沼や霞ヶ浦は「河童」伝説で有名です。牛久は牛久沼と霞ヶ浦の水系が接し合い、それぞれに棲むカッパが出会える町でした。
しかし近年、牛久市は東京へ通勤圏内のため近年ベットタウン化が進み、自然環境の減少やゲリラ豪雨時の洪水など都市型問題も起こり始めています。
一般に、学校の環境学習は地球規模の学習が中心で、地域の問題に目が向けられることはあまりありませんでした。牛久を覆っていた水と緑のネットワークも方々で分断され、カッパにも出会うことがなくなってしまっています。

そのような牛久の地域特性や課題を活かした総合学習として、アサザ基金と牛久市教育委員会協働の「学校ビオトープから始まるまちづくり事業」が始まりました。

図5  図6
この事業は、牛久市全小中学校で総合的な学習の時間などに行っています。
この事業の特徴は、子どもが中心となり学校を拠点とした地域コミュニティ(学区)単位でまちづくりを行っていくことです。(小学校区と地域コミュニティ単位はほぼ一致しています)
地域の子どもたちは、自分の足元(学区)の自然環境や地域の特徴を学び、深め、地域や行政などさまざまな立場の人を巻き込みながら、牛久市の特徴を活かしたまちづくりを提案します。
総合学習の中で、生きものなどさまざまな他者の視点から地域を見直すことで地域の可能性を再発見し、人と人、人と地域のネットワークを結び直し、それはカッパ(ここでは生物多様性のシンボル)を呼び戻すことにもつながります。
子どもたちの学習意欲を原動力にネットワークが結びついていくその過程で、福祉・治安・防災といった本来の機能が再生し、自立した地域コミュニティを基盤に築かれていきます。

この学習は、アサザ基金がコーディネーター役を務める『学校ビオトープから始まるまちづくり実行委員会』が主体となり、学校の学習に地域の自治会や住民・企業などを巻き込みながら行います。
子どもたちの総合学習を地域全体でサポートしていくことで、地域ぐるみで子どもたちを育てることにつながります。
まちづくり事業のネットワーク図
牛久のまちづくりの原動力(ネットワークの結び手)は、たくましく、想像力にあふれた子どもたちです。
子どもたちの学習から生まれた、夢や可能性を地域の人々が共有し合うことで、未来の担い手となる子どもたちを主役に、人と自然が共存する牛久のまちづくりを行っていきます。

牛久市では小学校の総合学習によって、何十年も耕作放棄された場所を田んぼに再生したり、子どもたちの提案が市の公園づくりや計画に反映されたりするなど、実際のまちづくりが次々と実現しています。
先生方から「これが本当の学習だ」と表現される実際の社会に働きかけていく学習が、牛久市では毎年行われています。
これからも、牛久の子どもたちが自分たちの町に夢を抱き、それを実現するための学習、提案づくりを行っていきます。

人と河童が出会うまちづくりホームページへ

 

学校ビオトープからはじまるまちづくりの特徴・意義

・単なる環境学習ではなく、まちづくり学習です
牛久市で行われているのは、ただ環境問題についての知識を学ぶいわゆる環境学習ではありません。自分の足元の地域を学び、深め、提案、行動し、社会へ働きかけ、実際のまちづくりに活かしていく、まちづくり学習です。
・縦割りを超えた実行委員会を組み、地域ぐるみで子どもたちの学習を支えています

学校ビオトープからはじまるまちづくりの効果

・地域の未来を担う人づくりを行っています
・子どもたちの学習が実際のまちづくりに活かされることで、子どもの夢実現と魅力あるまちづくりをしています(小学生による公共事業)
・人材育成の効果が研究されています。
小玉先生 論文
米川先生 論文

学校ビオトープからはじまるまちづくりの活動内容

・通年を通した学習を行っています。

 

学校ビオトープからはじまるまちづくりの位置づけ

 

【地域活性化】

子どもたちが学習を通して地域に眠っている宝物(地域資源)を探しだし、その宝物を実際の地域のまちづくりに生かしていく子どもたちの豊かな感性や想像力によって、大人たちが縦割り化した社会の壁を溶かし、多様な主体をつなげ、地域で新たな取り組みが次々と生まれていくような社会を築いていきます。

【環境教育】

環境問題を地球環境問題やごみ問題などの知識一般として得る教育ではなく、自分の地域の特色を学び、その特色を最大限に活かしたまちづくりを具体的に提案しその実現を目指していくことで、現場で感じる力や実際の社会での実践力を身につけます。

【社会を変える】

総合学習を通して子どもたちが地域の特徴や良さを見つけ、その良さを生かしたまちづくり提案をし、その提案が実際のまちづくりに活かされる牛久市のまちづくり学習は、今後世界の地方都市でも参考となるモデルになっていくと考えます。学習の体験から子ども一人一人が力を身に付けていくことが社会を変えていくことにつながります。

【企業との協働】

牛久市内で多様な主体と協働で環境保全を行っている企業の活動を学び、その活動と連携した学習を行うことで、企業との協働の意味を子どもたちが理解し、互いの違いを生かしながら協力し合い難しい問題や課題に取り組んでいく「協働」事業を起こしていくことができる人材の育成をしていきます。

【循環型社会】

循環型社会を築いていくためには自然からつながりや循環の仕組みを学び、自然から得た知恵を生かした地域づくりや生き方を実現していくことが必要です。地域に最も密着した生活を送っている子どもたちの目を通して、地域に眠るつながりを生かしながら、地域の人々の生活文脈と重なり合う細やかな循環型社会を築いていきます。

【自然再生・生物多様性】

自然再生を実現するためには、単にビオトープなどの生き物のすみかになる場所をつくるだけではなく、再生しようとしている自然に影響を与えている人間社会のあり方を変えていくこと(まちづくり)が大切です。牛久市では地域コミュニティや生きものの行動範囲と一致する各小学校区単位でまちづくり学習を行うことにより、牛久市内全体で人と自然が共存するまちづくりを実現していきます。

 
このページの先頭へ