損保ジャパン日本興亜環境財団・CSOラーニング生「かっぱん田」とは?
「木を植えるより木を植える人を育てたい」。
損保ジャパン日本興亜環境財団の理念の元、首都圏の大学生と地元中学生が主役で行う牛久沼の水源地再生と地域ブランドづくりを一体として行う取り組み『かっぱん田』が2010年に始まりました。
この取り組みでは、未来を担う人づくりをしていくことを目指しています。
プロジェクトの舞台は、牛久沼の水源地である『遠山の谷津田』と呼ばれる谷の先端にあります。
『遠山の谷津田』は、周囲の森林からのわき水が湧きだし、サワガニやホタルなど貴重な生物も住む自然豊かな場所ですが、高齢化などに伴い耕作放棄地が増えています。
『遠山の谷津田』に近い牛久市立牛久南中学校の生徒たちは、総合的な学習の一環でこの谷津田を何年も調査しています。
地域の課題(耕作放棄地の拡大・農業の高齢化など)に気づいた生徒たちは、「トキの舞う谷津田」という目標を掲げ、谷津田再生を提案してきました。
トキという目標は、遠山の谷津田全体が再生され、環境を大切にした農業がおこなわれ、牛久沼とのつながりが再生した未来を表しています。
そこには、再び自然と人、自然と自然、人と人のつながりを取り戻すことも含まれます。
この中学生の提案を受け、損保ジャパン日本興亜環境財団の支援のもと、首都圏の大学生(損保ジャパン日本興亜CSOラーニング生)が復田を企画・実施。
大学生がどろどろになりながら自分の手で作業も行い、2010年春、荒地が田んぼに蘇りました!
牛久沼で有名なかっぱがいつか来てくれるようにという願いと損保ジャパンのキャラクターのパンダをかけて「かっぱん田」と名付けられました。
谷津田再生によって「つながりの輪風せんべい」が誕生!
かっぱん田には、カエルやトンボなどの生きものの姿や人の笑顔が戻り、人、自然、生きものなどさまざまなつながりが戻ってきています。
毎年田んぼでは、首都圏の大学生や損保ジャパンの社員さんが手作業で、無農薬・無化学肥料で生きものと相談しながらお米作りをしているからです。
できたお米(もち米)は、地域の佃煮屋さん(小美玉市・大形屋商店)で、密漁をしない霞ヶ浦のえびを使い福祉作業所つばさの方が手作業で丁寧につくった「えびせんべい」になります。
えびせんべいのブランド化は地元の中学生が行っています!
この「えびせんべい」は、地元・牛久南中の生徒が総合学習の一環でブランド化し、地域の福祉施設などで販売しています。
せんべいの名前は『つながりの輪風せんべい』。
中学生がラベルデザインや価格・マーケティングなどを行いました。
『つながりの輪風せんべい』という名前には、これまでつながっていなかった人や物、自然が再びつながることでこのせんべいが出来上がったという過程と、このせんべいを使ってもっと多くのつながりを取り戻したいという想いがこもっています。
ラベルのデザインでは、霞ヶ浦を舞台に様々な人やものがつながり、新たな価値が生まれ広がっていく様子を表しています。
できたせんべいは学校近くの福祉施設で販売し、すぐに完売するほど好評でした。
これらのほかにも、生徒たちは自分たちの考えをもっと多くの人に伝え、理解してもらうために販路拡大(=谷津田再生地の拡大)に着目し、今後は自分たちでせんべいを置いてもらう店を増やしていく予定です。
失われたつながりを取り戻したり、新たなつながりを創造していく、この「せんべいづくり」(モノづくり)の体験を通して、中学生たちは様々な人や物事、多種多様な考え方に触れ、豊かな発想力を持つこれからの地域社会の作り手として育っていきます。
実際のモノづくりを通して地域の人の反応や、水源地が再生していき生物多様性が豊かになっていく経験を通して、生徒たちは自分たちにも社会を変えていくことができるという手応えを感じるとることができます。
2012年度からは毎年学習を引き継ぎ、その年の1年生を中心に活動を続けています。せんべいの販路は、さらに拡大していく予定です。
また、1年間の学習が終了した後も有志が集まり、アサザクラブというクラブを結成し、谷津田再生に向けて自主的な活動を行っています。
アサザクラブの生徒企画による地域住民へ向けての「谷津田ツアー」の実施や市役所へ提案書の提出など新しい社会への働きかけが始まっています。
<谷津田再生に関する要望書>
今後も毎年、首都圏の大学生、中学生がアイデアを出し合いながら、かっぱん田とその先に続く谷津田を舞台に新たな自然再生プロジェクトや牛久のまちづくりを進めていきます。
かっぱん田の特徴
・首都圏の大学生が主役となって、企画・運営。
環境に関心のある首都圏の大学生が主役となって、1年の田んぼ作業や収穫祭、今後の展開などを企画・運営しています。
目の前で起きている環境問題や地域の問題やその解決策を実際の現場で学ぶことで、これから社会に出る大学生の人材育成につながります。
・地元中学生の総合学習と連携!
牛久南中生徒が、総合学習の時間にかっぱん田をフィールドとして、生物調査や水質調査などを行っています。
大学生も中学生に授業を行ったり、中学生のアイデア実現を手伝ったりするなど、大学生と中学生、双方の人材育成につながっています。
・さまざまな立場の人たちの協働事業!
首都圏の大学生・企業・地域の中学生・地域の商店・福祉施設・NPOなど、さまざまな立場の人が、それぞれの持つ力を発揮しあいながらプロジェクトが行われています。
かっぱん田の効果
・牛久沼の水源地保全
かっぱん田でわき出したわき水は、やがて牛久沼へ流れていきます。
無農薬無化学肥料でお米作りを行うことで、きれいな水を下流の田んぼや、川、牛久沼へ送ることができます。
・生物多様性保全
無農薬でお米作りを行い、生きものに影響があると言われる中干しは行わず、冬も水をはり(冬期湛水)1年を通してたくさんの生きものが住めるような農法をみんなで考え、実践しています。
・未来を担う人材育成
・商品のブランド化による地域活性化
・福祉作業所の方の仕事づくり
かっぱん田の活動内容
・1年間の田んぼ作業
損保ジャパン日本興亜の社員と損保ジャパン日本興亜CSOラーニング生の首都圏の大学生が、手作業でお米づくりを行っています。
通年を通した田んぼの作業(田起こし、田植え、草取り、稲刈り、脱穀、収穫祭(収穫したもち米を使った餅つき))を、首都圏の大学生が主体となり企画して行います。
プロジェクトとアサザの位置づけ
【地域活性化】
空洞化が進む地元商店街との協働によって、無農薬無化学肥料でつくる自然再生のお米や地域の中学生によるブランド化、福祉などの新しい文脈の付加価値がある商品が広がっていくことで、商店街を地域に新たな価値を創造するネットワーク(つながり)の中に位置づけなおすことができます。商店街をひとつの場として、新たなつながりや地域の多様な人々との価値や夢の共有化を進めることで地域活性化へつなげます。
【環境教育】
地域の中学生が足元の環境を学び、地域資源を生かした「人と自然が共生するまちづくり」を提案し、環境問題に関心のある東京の大学生と共に実際の社会へ働きかけていくこの取り組みは、未来を変える人づくりにつながります。
【社会を変える】
中学生・大学生が企画・提案し、企業、地元商店、福祉、地域住民など多様な主体を結び付け、地域活性化と自然再生が一体となった商品やまちづくり社会に実現していく発想をもった人を育てる・社会を変えていく力を育むことが社会を変えていく原動力につながります。
【企業との協働】
損保ジャパン日本興亜環境財団のビジョン「木を植えるより木を植える人を育てたい」と、アサザ基金の「従来の枠を溶かし新しい文脈で社会システムをつくっていくことができる発想を育むことで人の生き方を変えていく」というそれぞれのコンセプトが一致し協働しています。
【循環型社会】
地域にこれまでの縦割りの枠を超えた福祉、教育、漁業、農業、地元商店など分野を超えたつながりを生み出し、地域内に新しい文脈をつくっていく発想を育む循環型社会構築を目指します。
【自然再生・生物多様性】
生物多様性につながる水源地への働きかけを生み出す社会の動き(人・もの・金)をつくっていくという、教育プログラムによる生物多様性保全・自然再生がビジネスモデルとして組み込まれたモノづくりが次々に生まれる社会を目指します。