人も河童も喜ぶWin Win型循環社会の構築事業

キヤノンマーケティング株式会社協働事業 人も河童も喜ぶWINWIN型循環社会構築事業~未来につなぐふるさとプロジェクト~

① 概要

この取り組みは、人も自然もWINWINの関係になる新たな農業モデルづくりです。これまで生物の生息地としてあまり重要視されてこなかった畑地における生物多様性の保全・向上を図ることによって、有機農作物の生産だけではなく、生物多様性保全も同時に実現することで農作物の付加価値の向上を図る取り組みです。

霞ヶ浦流域の内、約20%は畑地で、畑での営農活動による肥料分や農薬の流出は霞ヶ浦に対する負荷要因の一つとなっています。霞ヶ浦とその流域を再生していくためにはこれまでの収穫量重視の農業モデルではなく、自然環境保全や循環型、高付加価値型の新たな畑作の農業モデルが必要であり、そのモデルづくりが本事業です。

具体的には耕作されなくなり荒れてしまった畑(耕作放棄地)を再生し、霞ヶ浦の外来魚を肥料(魚粉)として活用し、生物多様性保全と有機農業をミックスした新たな農業モデルづくりに取り組んでいます。また収穫できた作物を活用し、環境という文脈でつながる人の輪を活かした新たなものづくりに取り組むことで、人も自然もWINWINの関係になることで霞ヶ浦の再生、活性化を図っています。あげせんべいづくりで出る廃食用油は牛久市の循環型社会づくりの取り組みであるバイオマスタウン事業の中で廃油の燃料化・利活用事業に活用いただいています。そして、人も自然もWINWINになるこの場を、近くの小中学校では自然や生物多様性と人とのかかわり、そして循環型社会について学ぶ場として活用しています。

s再生前 s再生中 s再生後

この取り組みはキヤノンマーケティングジャパン株式会社およびそのグループのみなさんと日本各地で行われている「未来につなぐふるさとプロジェクト」の活動の一つとして協働いただいています。

② 特徴

この取り組みに参加、関わる人や自然がこれまでよりもよい状態、WIN-WINの関係になれることがこの取り組み最大の特徴です。湖で外来魚を捕獲する漁師、ここで取れた作物を加工する商店、パッケージングを行う福祉作業所など毎年様々なWINWINの関係が生まれています。

畑を農地として再生することを目的とするのではなく、畑を含む里山そのものを再生することが目的です。有機農作物づくりは必ずしも生物多様性保全に効果があるわけではありません。この取り組みでは無農薬栽培と生物多様性保全を同時に実現するために、畑の中にビオトープを設置することや隣接する耕作放棄地を草原として管理、さらに雑木林の整備までの一見畑作とは無関係の取り組みまで行っています。これらの取り組みによって、カエルやトンボ、カマキリなどの捕食者を呼び込み、害虫の発生を抑えることができるため、無農薬栽培が可能になります。また昔の里山は、畑の周辺に防風林や平地林、ため池があり、それらが作り出す多様な環境(モザイク構造)を生きものたちが利用することで豊かな生物多様性があったものと考えられています。この伝統的里山の文化を活かした畑作を目指します。

s草地再生前 s草地再生中 s草地再生後 sビオトープ sビオトープで羽化するアキアカネ sビオトープで産卵中のクロスジギンヤンマ

③ 効果

・耕作放棄地対策: この取り組みによって地域との関係構築が進み、畑とその周辺の耕作放棄地の解消や整備が進みました。

・霞ヶ浦の生物多様性保全と水質改善、漁業振興効果:湖の外来魚を捕獲することで出来上がる肥料を活用することで、霞ヶ浦の生物多様性保全と水質改善に寄与します。

・畑周辺の生物多様性保全:人の手による除草だけでは雑草を完全には取りきれませんが、畑に草が残ることで水分が保持され、土が乾燥しがちな畑ではなかなか見られないカエルやヘビ、カヤネズミも見られるようになりました。生物多様性が向上することで、年々作物の被害は少なくなり、安定した収穫量を見込めるようになりました。

・里山の原風景の再生:畑やため池(ビオトープ))、草原や林を連続した環境として整備することで、里山の生きものが暮らせる原風景が再生できます。

・環境教育:参加する人だけではなく、近隣の小中学校で循環型社会や企業との協働や生きものについて学ぶ場として活用されています。

・福祉との協働:農作物の加工後の袋詰めなどの作業を福祉作業所の方々に協力いただくことで、社会参画の場となっています。

・地球温暖化対策:ひまわりや菜種を栽培し、その油を利用したあとに残る廃油を牛久市のバイオマスタウン事業の中で廃油の燃料化・利活用事業に活用いただき、地球温暖化防止やエネルギーの地産地消にも寄与しています。

・地域活性化:上記のような効果を通じて、畑を中心に様々な活性化が図られます。

④ 活動内容

社員と家族のボランティアにより再生した畑で油がとれるヒマワリやナタネを中心に、ソバや小麦などの作物の栽培に取り組んでいます。毎年霞ヶ浦流域や茨城の地域特性を活かす、新しいものづくりに取り組んでいます。畑作以外でも生物多様性の向上やその調査のためにビオトープを設置することや近接した耕作放棄地の整備、ススキ野原づくりやニホンミツバチの誘致にも取り組んでいます。年4回の社員ボランティアの参加をベースに活動を進めています。

s種まき s菜の花 sソバ sソバ打ち

⑤ 位置づけ

地域活性化: 霞ヶ浦の環境問題は様々な要素が絡み合って存在しています。このような問題を資源化することで、逆に湖を巡る様々な要素を結び付けていきます。同時にこの事業に関わるすべての方がWIN-WINの関係となるように本事業を進めることで社会問題、環境問題を解決しながら地域の活力や主体性を引き出していきます。

環境教育: 環境問題の根本からの解決を図るためには、問題をめぐる利害の対立を乗り越える新たな結びつきを生み出す発想、WIN-WINとなれる関係づくりが必要です。本事業の現場や人やモノ、自然のつながりの学習を通して環境問題を解決していくための柔軟な発想や創造的な手法を身につけた人材育成ができます。

社会を変える: 問題を資源化する逆転の発想により耕作放棄地をWIN-WIN型の取り組みによって再生していくモデルを示すことで、新たな社会システムのモデルを作ることができます。一つの事業から多数の効果を生み出す市民事業のモデルとなります。

企業との協働: キヤノンマーケティングジャパン株式会社が各地で取り組む「未来につなぐふるさとプロジェクト」の活動の一つですが、この霞ヶ浦での取り組みは、地域にWIN-WINの関係、成果を生み出し、従来の社会貢献活動の枠を超えた取り組みを現実のものとしていきます。

循環型社会: 霞ヶ浦の環境問題を問題群や問題系として捉え、資源化するという発想でつながりを浮上させ、耕作放棄地となってしまった畑を再生し、地域社会の中でもう一度位置づけを行い、多様な人々が出会い協働する場、多様なものを生産できる場、生物多様性保全の場といった価値を創造することで、循環型社会を実現していくために必要な地域のつながりや結びつきを生み出すWIN-WIN型の取り組みを行っています。

自然再生・生物多様性: 生物多様性保全の場として位置付けされてこなかった畑地において、人にも自然にもWIN-WIN型のこの取り組みを広げていくことで、流域の2割を占める畑地が、生物多様性保全の場として機能することができ、流域全体の自然再生を進めることができます。

 

 

 

 

 
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