目指す社会

アサザプロジェクトは自然のネットワークに重なり合う循環型の持続可能な社会の構築を目指します。
また、それは規制や制限によって実現されるものではなく、社会の縦割りを越えた多様な主体の恊働から次々と生まれる価値創造的な取り組みの連鎖(動的なネットワーク)によって実現するものと考えます。
アサザプロジェクトは、自然の保全や再生の取り組みと地域活性化の取り組みを一体化することで、自然と共存する社会を具体化していきます。それは、人間の創造性が生かされる社会です。

環境教育

自然と共存する社会の実現には、縦割り硬直化した社会を変革する新しい発想が必要です。
それには、既存の考え方や枠組みに捕われず、地域の自然や文化が育んできた資源を結び付け、新たな価値を創造できる自由な発想や豊かな創造力が必要です。
アサザプロジェクトの環境教育は、このような発想力や創造力を子ども達から引き出し、地元に眠る様々な資源(お宝)を掘り起こし環境という文脈でそれらの資源を組み合わせ新たな価値を創造する方法を考える学習を通して、環境問題を解決に導く問題解決能力を子ども達に育むことを目標に行われています。

自然再生・生物多様性

自然の再生とは、人間の活動によって損なわれた自然そのものが持つ回復力や復元力、再生力を妨げている人間活動を明らかにして、それらの人間活動を取り除く取り組みであると考えています。
田中正造は「造るに非ず、除くにあり」という言葉を残していますが、その思想は現在の自然再生事業にも当てはまるものと考えます。
つまり、単に野生生物の生息場所を復元するだけでは、アサザプロジェクトの目指す自然再生は実現しません。
自然環境を損なう要素を社会から取り除き、自然と共存する新たな社会システムが構築された結果として自然が再生されることを、自然再生と捉えています。
社会変革の結果として、自然が再生され生物多様性が保全されることを目指しています。
生物多様性を評価することは、その地域の自然環境の再生または保全が適切に実行されているかをはかる物差しとして捉えています。

社会を変える

アサザプロジェクトは組織のネットワークで社会を変えようとはしていません。
アサザプロジェクトが創るネットワークは多様な主体が恊働を実現する場として機能しています。
この場は社会に開かれています。
社会を変える時に機能するネットワークとはこのような場から生まれる新たな価値や意味が人々の共感をよび連鎖して広がることによって創出されるものと考えます。
縦割り硬直化した行政等の組織は、生活者によって創られていくネットワークの中に位置づけ機能させていきます。
それを、行政参加といいます。
このような中心に組織の無い動的なネットワークを社会に展開していくと同時に、社会を被う縦割りの壁を溶かし膜に変える発想で次々と新たな事業を生み出し、社会に自然のネットワークに重なり合う新たな人やモノやカネの動きをつくることで、自然と共存する社会へと変革していきます。

循環型社会

循環型社会は、分野別に機能の向上や効率化、廃棄物の再利用などを進める部分最適化だけでは実現しません。
個々の技術を地域の人々の生活文脈をとおして社会技術化する戦略が必要です。
アサザプロジェクトは、個別専門分化した縦割り社会の壁をこえて広がる自然のつながりや地域住民の生活文脈に重なり合うひと・モノ・カネの流れを創り上げていくことで循環型社会の実現を目指しています。
社会を構成する多様なものを結び付け循環させる発想には総合知が必要となります。
技術もまた個々の人格によって多様なものと結び付き総合化された「人格を持つ技術」である必要があります。
また、循環型社会の構築には、問題の資源化という発想も不可欠です。
社会の問題は個々バラバラに単独で存在するのではなく、問題群や問題系の一部として存在していることから、問題を通しての繋がりや結び付きを読み取り、それらの繋がりや結び付きをプラス思考で読み替えていく作業が必要です。
アサザプロジェクトでは上記のような発想で、循環型社会の構築を行っています。

地域活性化

地域活性化には、地域に潜在する多様な資源を掘り起こし、それらの資源を新たな文脈で自由に結び付け組み合わせることができる発想力や創造力が必要です。
アサザプロジェクトでは、生き物や自然、環境といった視点で地域を読み直すことで、地域に潜在する資源を浮上させる、新たな結び付きをつくり、それらの結び付き(新たな文脈)をとおして地域の産物に新たな付加価値を創造しブランド化を行うことで、地域活性化と環境保全・再生を一体化して進めていきます。

企業との恊働

アサザプロジェクトが社会に展開するネットワークの中に企業を組み込み、社会を構成する多様な主体や組織との恊働を促すことによって、企業が有する潜在的な価値や機能を浮上させていきます。
企業が持つ空間展開や動線(ひと・もの・かね)などの要素を、企業内の文脈とは別の文脈で読み直し読み替え、そこに環境保全や防災、福祉などの公益的な機能を付加させる発想が必要です。
そのことによって、企業が地域や社会で活動することに対する付加価値が生まれ、その企業の社会的な価値や存在意義が生まれるものと考えます。

市民型公共事業

自然と共存する循環型社会に向けて、社会システムの再構築を実現させるためには、従来からの枠組みを越えた新しい発想が必要となります。
新しい発想とは、これまでの自己完結的な取り組み(典型は公共事業)を付加価値の連鎖が起きる循環型の取り組みへと転換する発想です。
従来の公共事業は、各省の縦割りの中で決まった点と点を結ぶ個別自己完結型事業の典型であり、地域の分断化や環境破壊、非効率、限定的な効果、税金の無駄使い、利権などの問題を引き起こしています。
アサザプロジェクトによる市民型公共事業では、環境や福祉、産業、教育といった分野間の壁を越えた事業展開を広大な霞ヶ浦とその流域で行っています。
市民型公共事業では、ひとつひとつの事業に付加価値を持たせることで、その波及効果を縦割りの壁を越えて地域全体にネットワーク状に広げようとします(付加価値の連鎖)。
それにより、従来の公共事業にくらべ少ないコストでより大きな効果を生み出すことができます。
個々の事業から展開する付加価値の連鎖をとおして、地域に新しい人や物や金の動きを生み出すことで、ひとつの事業から一石何十鳥もの効果を引き出すことができます。
このような市民型公共事業の手法を事業プロセスに組み込むことで、社会インフラの整備による受益者の拡大や、今後課題となる社会資本ストックの低コスト維持化などが可能となります。
個々の事業から波及効果を地域の他分野に拡張させることで、地域に新しい文脈をつくり地域から失われつつあった繋がりを再生し蓄積していくことができます。
これも、特定の利権や専門分野、業種に集約された既存の公共事業との大きな違いです。
市民型公共事業の展開には、地域の特色を熟知し、地域資源を自在に組み合わせ価値を創造することができる総合知を持つ人材の育成が不可欠となります。

市民参加から行政参加へ

従来の公共事業には、持続性や効率性、効果、コストなどの問題が指摘されてきました。
その背景には、専門分化した行政組織が中心になって事業を行うことの限界があるといえます。
組織そのものが縦割り化している行政による事業が、全体感の無い縦割り型に陥るのは当然です。
さらに、そのことが特定の利権や既得権益と結び付くことにも繋がっています。
このような行政による事業や施策と、地域住民の意識との間には当然大きなずれが生じます。
その典型が無駄な公共事業という批判です。
縦割り専門分化した組織が中心になって行う事業が、地域感をもって実施されることは極めて稀だからです。
行政の組織形態や公共事業の構造に問題があることは事実ですが、既存の枠組みを前提とした組織論や構造問題の議論にも限界があるのではないでしょうか。
より広い視野での議論や戦略が必要だと思います。
アサザプロジェクトの市民型公共事業では、縦割り専門分化した行政等の組織を、中心の無いネットワークの中の一員として位置づけ機能させることで、その専門性をより発揮させようとします。
それは、従来のピラミッド型社会における市民参加という発想から、未来に向けて展開しているネットワーク型社会における行政参加という発想への転換を促すものです。
市民やNPOは縦割りにとらわれない自由な発想で地域にネットワークを広げていくことができます。
そのようなネットワークの中心には組織ではなく多様な恊働が生まれる場をつくり、行政などの専門分化した組織を具体的な事業やビジネスモデルのパートナーとして結び付け機能させていくことで、個々の組織が縦割りの壁を越えて事業を展開していくことができるようになります。
行政参加の発想は、例えば行政が長年課題としている施策の総合化の実現にもつながります。

壁を溶かし膜に変える

アサザプロジェクトでは、多様な主体による恊働事業が生まれ続ける場(新しい公共)を社会に生成する中心に組織の無いネットワークが人々の生活文脈や自然の繋がりをとおして、行政や企業等の縦割り組織と組織さらにそれらの組織内部の壁を越えて、NPOなどの外部組織を介した非公式の繋がりをネットワークの中に生成させていきます。
いわば、NPO等が社会の触媒やホルモン(離れた組織と組織を結び機能を生む)として働くことで、社会や組織内部を縦割り分断化する壁を溶かし、膜に変えるという発想です。
組織間の仕切りは残すが、分厚い壁で仕切るのではなく、薄い膜で仕切ろうというものです。
これは、従来からの組織改革論である「組織の壁を壊し、取り払う」(破壊➡構築➡破壊)という発想から、「組織の仕切りは残しつつ外部とのコミュニケーションを促す」(変容➡変革)というものです。
膜で仕切ることによって、コミュニケーションが生まれること。それは生命の原理に基づく発想でもあります。

 
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