湖岸の自然再生

よみがえれアサザ咲く水辺
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アサザプロジェクトの象徴的な事業「湖の自然再生事業」。
この取り組みを、生きものたちがいま、評価してくれています。

波間のアサザがプロジェクトの原点

霞ヶ浦・北浦は死んだと言われていました。
霞ヶ浦は日本で2番目に大きな湖で、湖面積は220平方キロメートル。
流域面積はその約十倍にもなります。
豊かな湖岸の植生帯をもち、漁業資源も豊富であった霞ヶ浦は、首都圏に位置する霞ヶ浦は、人口増加や経済活動の進展に伴った、工業化や都市化に応じた大規模な水資源開発により、湖岸はコンクリートで固められ、水門が閉鎖にされたことで海との連続性が絶たれたのです。
森林やため池などの身近な水源が失われつつあり、流入する水質も悪化。
霞ヶ浦で暮らしていた生きものたちも、湖の環境悪化により住みにくくなってしまいました。
沈水植物が大幅に減ったことで、沖からの波が減衰せず直接コンクリート護岸に当たり、残っていた植物も打ち返しの波で侵食されて、次々と消滅。
湖に暮らしていた鳥や魚なども減っていきました。霞ヶ浦は死の湖と呼ばれるようになっていました。

湖岸の自然を取り戻すアサザプロジェクトの始まり

とにかく現場である霞ヶ浦と向き合い、もっと知ろう。
そんな思いから、1994年より飯島(アサザ基金代表)と小中学生による約252㎞の湖岸を歩く霞ヶ浦の調査が始まりました。
この霞ヶ浦の宝探しをする中で、死の湖と呼んでいた霞ヶ浦にも小さな命が無数に宿っていることにきづきました。
そこでの出会いの一つがアサザです。
アサザが生えているところでは波が和らげられ、岸近くでは波がほとんど無くなっている。
これを目にしたのがプロジェクトの原点になりました。

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アサザなどの波があっても暮らしていける浮葉植物の群落があるところにはでは、波が穏やかになるため、波に運ばれてきた土砂が堆積し、やがて浅瀬を形成するのです。
まずは、霞ヶ浦に希望を持ち続けている多くの方々と一緒にアサザの復元(アサザの里親制度)に取り組みました。
この湖岸の植生が自らを保つためのしくみを活かして湖の自然再生を市民の手で行おう、という発想からアサザプロジェクトの活動が始まったのです。

ピンチ襲来冬季間の水位上昇で大きなダメージ

1996年、 霞ヶ浦開発事業 の一環として、安定した水資源確保の名目に、冬季間の水位を上げる措置がとられ(しかし、現在実際には水余りが生じています)、その影響を受けたのです。
霞ヶ浦では冬季に水位が下がるのが自然な姿です
生き物たち、特に植物はそれに適応しています。
だから冬季に水位が高いことは、それら生きものにとって致命的。
湖岸の植物は危機的に減りました。
また、自然界は、多様な生物同士のつながりで成り立っています。
一つの種が打撃を受けると、他の種にも影響が連鎖的に広がるのです。

市民の声が国を動かす ~植生帯復元事業~

強い危機感を感じた市民達は、冬季の水位上昇の中止を訴え続けました。
国交省がそれに応えて、水位上昇を中止して湖の再生事業を開始しました。
植生帯の復元を市民との協働で実験的に実施し、その期間中は水位上昇をやめる という内容です。
この公共事業の中で、アサザプロジェクトのネットワークや手法が数多く活かされました。
2000年10月~、11ヶ所で取り組みが始まりました。
地区の特性に応じた自然な復元をめざすものです。

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工事の内容

土をいれて、浅瀬を作ります
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粗朶消波堤を設置します

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底土の流出を防ぐことにより、植物の定着を助ける働きが生まれます。
造成が終わった場所には、植物を植えつけます。
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子どもたちや市民の手でマコモやアサザなどの植付けを行いました
(今までに1万人以上の市民が湖に入って植付けをしています)
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植生帯復元前

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植生帯復元後

生き物が戻った!

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アサザのお花畑

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取り組みの甲斐あって、アサザのお花畑が広がりました。
秋には黄色のお花畑が水面に広がり、素晴らしい光景を楽しんでいただく事ができます。

アサザの植付けについて
アサザ基金では、霞ヶ浦にあった元々の植生帯の中にアサザ咲く景観を取り戻すことを目標に取組んでいます。アサザだけが生えているという不自然な自然再生はまったく最初から考えていません。
現在、絶滅の恐れのある霞ヶ浦のアサザ群落を保護することを目的に、もともとアサザが生育していた場所(34カ所・1996年)の内の9カ所(石田、根田、境島、古渡、鳩崎、永山、梶山、大船津、爪木)で植え付けによる群落の再生を行なっています。それらの再生に使うアサザ株は、流域の各小学校で系統保存されている株(それぞれ由来証明書を付けています)や、市民ボランティアや企業、団体などで保存していただいている株(各アサザの里親には、勝手にアサザを植えるなどの行為を行なわない旨の誓約書を書いてもらっています)を、使用しています。
それらの再生は、専門家による研究を活かしながら実施しています。近年(国交省が湖の生態系に影響がある水位上昇管理を実施以来)アサザが急激に減少し続けています。アサザの群落数は34カ所から2010年現在9カ所(根田、麻生、鳩崎、和田岬、境島、大島、爪木、梶山、大船津)に激減しており、このまま群落数を減らし続けることは、霞ヶ浦のアサザを絶滅に追い込むことにつながることから、研究者のデータを基にアサザの種子が自然状態で定着し群落を形成する可能性の高い場所(セーフサイト)から3カ所で群落再生を試みています。
したがって、最近一部の団体関係者から指摘のあるような「やみくもにアサザを植えている」などということは全くありません。アサザ基金では、霞ヶ浦にあった元々の植生帯の中にアサザが咲く景観を取り戻すことを目標に取組んでいます。アサザだけが生えているという不自然な自然再生は最初から考えていません。
アサザは植生帯のメンバーの一員であり、同時に生態系全体に大きな影響を及ぼす湖の水位管理の影響を受けやすい植物でもあります。アサザについては水位管理前後の分布の変遷が正確に分かっていることや、その生活史に関する研究から人工的な水位の変化に伴う影響を受けるという仮説が立てられていた種であることから、指標のひとつになると考えています。わたし達のようなNPOでは、湖全域の植生帯についての水位による影響を詳細に調査することは労力的に不可能です。現実的に、調査可能なアサザを指標に選んでいます。(霞ヶ浦に関しては、水位管理に対してきちんとした提言を行なう研究者がいないことが問題です。水位管理について具体的な案を示さずアサザを批判をするだけの研究者の責任はとくに重大です。)
また、同様の関係者からは、「アサザ群落の再生が沈水植物の再生を阻害している」といった批判がネット上などに流布されていますが、そのような批判については以下のように考えています。

1.原則アサザ群落がもともと生育していた場所での再生を行なっており、湖全体の中で見れば、アサザが湖面を葉で被うとしても限定された地域になることから、もともと湖のほぼ全域に生育していた沈水植物群落の再生場所は十分に確保されています。

2.アサザ群落が水面を被い水中の沈水植物が再生できないという批判については、水位上昇管理以降にアサザ群落が次々と消滅し、すでに消滅後10年以上経っている地域もありますが、一向に沈水植物は再生してきません。
これは、現在の水質汚濁が進み富栄養化した湖の状態(透明度がきわめて低い→水中の沈水植物に日光が届かない)では、沈水植物の再生は不可能であるということです。また、湖の中に造られた浅瀬に沈水植物が再生することがありますが、2,3年でヨシやヒメガマ、マコモなどの抽水植物が浅瀬を被い尽くしてしまうため、沈水植物は消滅してしまいます。
沈水植物群落の再生には、困難な課題ではありますが流域の社会システムの再構築(環境保全型・循環型社会)を通して湖への流入負荷を減らし、湖の富栄養化を改善する以外にないと考えます。そのため、アサザプロジェクトではホームページで紹介しているような水源地再生事業や環境保全型農業推進、流域全域での環境教育、循環型まちづくり事業、森林保全などの多様な取組みを、流域全体を視野に入れ展開しています。これらの取組みを総合的に評価するのが、湖の沈水植物です。

3.長期的な視点でアサザの存在を捉えてみた場合、アサザプロジェクトの流域全域での展開が実を結び将来湖の富栄養化が改善された時には、各アサザ群落の大きさ(葉で水面を被う面積)は縮小するでしょう。それは、かつて霞ヶ浦が富栄養化する以前の調査結果を見ても明らかです。それに変わって透明度の高くなった湖内に大規模な沈水植物群落が再生されると考えています。このような状態がアサザプロジェクトの目標となっています。
なお、アサザ基金では、沈水植物群落の再生実験をこれまでにも行なってきました。霞ヶ浦の湖内での実験(日光が届く浅瀬で再生を試みたが失敗)の他にも、学校の使われなくなったプールを利用した実験などを行ない環境教育と一体化した形で調査や観察を実施しています。プールでの実験では透明度の回復に伴い全域を沈水植物で被うことができました。また、一緒に植えたアサザの群落もあまり大きくならないことを確認できました。

4.アサザ群落ができると水面を葉で被うために、水中の酸素が減少し水質を悪化させるという批判があります。その場合よく参考事例として示されるのは、浮草(湖底にまで茎をのばさず湖底に根も張らない)で水面を被われた水域です。たとえば「ボタンウキクサ(外来種)で被われた池を見せて、これに黄色い花を付ければアサザと同じだ」といった乱暴な批判を行なう研究者がいます。
しかし、アサザは浮草とは違い(アサザは水中の茎から多くの根を出すヒシとも異なります・ヒシは一年草でかつ湖底で種子が発芽できるため、前年までに散布された種子から一気に大きい群落をつくることができます。一方アサザは多年草で、種子は湖底では発芽できず、一気に水面を覆うことはありません)、アサザは水面に浮く葉から茎が湖底に向かって伸び、そのまま湖底の土の中の地下茎につながっています。水面に浮くたくさんの葉のそれぞれには小さな穴がいくつも開いていて、ここから酸素の少ない湖底の根にまで空気中の酸素を水中の茎を通して送っています。アサザはこのような通気システムを持っているため、アサザ群落の下の水底には酸素が根から供給されます(Grosse W, Mevi-Shuetz J (1987) A beneficial gas transport system in Nymphoides peltata. American Journal of Botany, 74, 947-952.)。また、アサザ群落の無い水底に較べて、水底に生息する生物の種類・数ともに多くなるという研究があります(Brock TCM, Van der Velde G (1996) Aquatic macroinvertabrate community structure of a Nymphoides peltata-dominated and macrophyte-free site in an oxbow lake. Netherlands Journal of Aquatic Ecology, 30, 151-163.)。
つまり、アサザが水質を悪化させるという評価は、アサザのごく一部分を見た個別縦割り型評価の典型といえます。

いずれにしても、アサザはもともと自然に霞ヶ浦の植生帯の一員として生育していた水草です。そのような植生帯の中でアサザが多様な生物とどのような複雑な相互作用を持つのかはまだ十分に解明はされていません(アサザの葉を食べる魚や水鳥、昆虫等との関係・食物連鎖もその一部です)。しかし、それは、植生帯と構成するアサザ以外の多様な種も同様であり、そのような科学的な視点から見ればある側面を捉え「どの水草は悪い」「どの水草は良い」といった勝手な価値観を声高に主張し、生態系の解明に向けた研究や評価に持ち込むこと自体が、非科学的であり科学の基本を逸脱した行為と言わざるをえません。とくに大学等での科学教育の充実を望みます。
しかも、霞ヶ浦のアサザは現在きわめて危機的状況にあり、これ以上の減少を食い止めなければならない時に、上記のような部分的な評価で「アサザを植えるのは悪いこと」「水質を悪化させる」などと云った情報を流布することは、ただアサザを絶滅に追い込む手助けをしているに過ぎないことになります。

最後に、アサザの保護は霞ヶ浦再生事業の一部ですが、保護の背景には湖の水位管理の在り方や湖の生物多様性の保全等の重要な課題があることを十分に理解して頂き、批判をされる場合には、自分はどのように具体的に湖を再生する(例えば、沈水植物群落や水質改善、水位管理など)ことができると考えているのかを示して頂きたいと思います。一方的に相手を批判する姿勢では、霞ヶ浦再生の取組みの健全な発展は望めません。
みなさまの理解と協力をお願いします。

NPO法人アサザ基金

アサザ群落の分布について
霞ヶ浦のアサザ群落は1994年と1996年では、湖全域の34カ所で確認されています(西廣ほか 2001, 応用生態工学)。地元の方々からはそれ以前には他の場所でも見たという話も聞いています。
また、「霞ヶ浦の水生植物」の中でアサザは「霞ヶ浦では、ほぼ全湖に散発的に分布し、波浪の影響を受ける開水域にも大きな群落をつくる。特に西浦右岸下流の北利根川河口の大群落は、面積3haに及ぶ純群落で、夏秋の頃沖側から眺めると、ガマの群落を背景にして一面に黄色の花を開いた風景はなかなか美しく、見ごたえがある。」と記述されています(桜井義雄、国土交通省霞ヶ浦河川事務所(2004) 霞ヶ浦の水生植物―1972~1993.変遷の記録, 信山社サイテック)。
しかし、一部にアサザは元々霞ヶ浦にはあまりなく、1994年頃に雨が少なく夏が暑い等の条件が重なったことでたまたまアサザの生育に合った条件が重なり、その結果一時的にアサザが多く見られただけであり(一時的な特殊な現象に過ぎない)、そのような一時的で特殊な現象を基にアサザを保護するというのはおかしいという意見(批判)があります。
わたしたちは、このような意見はアサザの生態を無視したものであり、科学的な根拠が示されず検証も行なわれていないため、憶測にすぎないものと考えます。その理由は以下のとおりです。

たとえば、ヒシは1994年頃に湖の各地で突然大きな群落を作りました。その理由は、この頃は上記のような気象条件があり、ヒシの生育に適していたためと考えられます。しかし、それに加えてヒシが一気に湖の各地に群落を作ることができた大きな理由がありました。それは、ヒシは一年草で生育条件の良い年に大量の種子を生産し湖底に広く散布するので、次に条件のよい年が来た時には湖底に蓄えられた種子が一気に広範囲で発芽し茎を水面にまで伸ばし葉を広げることができるからです。実際に、これまでにも好条件の年にヒシ群落は突然湖の各地に出現しています。
上記のように、ヒシが一気に大きな群落を各地に形成できる最も大きな理由は、種子が湖底で発芽できることにあります。
では、ヒシと同じ浮葉植物であるアサザも、批判をしている人が言うように1994年頃、好条件のもとに大発生をしたと考えるべきなのでしょうか。実は、アサザにはヒシのように一気に群落数を増やし群落面積を増やすことができない理由があります。それは、アサザはヒシと違い湖底で種子を発芽させることができないからです。アサザの種子は浜などに打ち上げられ、水辺の陸地部分で発芽する生態をもっています(鷲谷 1994, 科学、高川 2006, 博士論文)。1994年頃に湖で確認された34カ所のアサザ群落の大半は、周囲に種子を発芽させるために必要な浜やヨシ原などの陸地を持っていませんでした。つまり、コンクリート護岸(垂直の壁)に隣接した環境にあったわけです。したがって、大半のアサザは生育に好条件の年であっても、種子から群落を作ることはできない状況にありました。もし仮に、アサザ群落の近くに浜やヨシ原などの陸地があった場合にも、陸地で発芽したアサザの株がランナー(横に伸びる茎)を伸ばして水域に広がり小さな群落を作るにも数年はかかります。実際に私たちが、アサザを植え付けてから、その後の推移を観察した結果、植え付け後にアサザが広がりある程度の群落を形成するには10年近くかかることが分かっています。したがって、どんなに好条件が揃っても、アサザが短期間に種子から発芽して急に各地に群落を形成するとは考えられません。
さらに、陸地部分で発芽したアサザも、ほとんどが大きな波浪や増水などを受けて流されてしまったり、まわりに背の高い草が茂って日が当らなくなって枯れてしまったりして、実際にランナーを伸ばして湖に群落を作ることができる株はほとんどなく、まして、現在の湖ではコンクリート護岸の影響で波が荒くなり、さらに不自然な湖水位の管理の影響も加わっていることを考えれば、アサザの種子が発芽して湖に群落を作ることはほとんど不可能に近い状態になっています。
このようにアサザが種子から群落を作ることがほとんど出来ない状況は、湖岸のコンクリート護岸化が始まった1970年代から1990年ごろまでに湖全域に及びました。(アサザ保護をテーマにした環境学習では、上記のようなアサザを減少に追い込む原因について学ぶことで、湖の多くの生物が同じように護岸や水位管理、水質汚濁等によって大きな影響を受けている現状を知り、改善の方法を考える学習へと展開します。)
以上のような理由から、1994年ころに確認されたアサザ群落は、かなり以前(1970年頃から始まった護岸工事以前)に種子から広がった群落の生き残りであり(アサザは多年草です)、「アサザはもともとそんなに無かった」という批判をする人が言うように、当時の34カ所のアサザ群落が好条件のもとに急に増えた(発生した)と考えることは不可能です。
上記のように、アサザが長い間種子から新しい群落を作ることができない環境にあったと考えられること、また現状でも種子の発芽する条件がほとんどないということは、アサザがいつ絶滅してもおかしくない状況を示しています(高川 2006, 博士論文)。現在生き残っているアサザ群落の寿命が尽きたり、水位上昇(1996年~)のような悪条件によって群落が衰退してしまうと、一気に絶滅してしまう恐れが高いのです。

アサザは湖の生態系の一員です。そのひとつの生物が危機的な状況にあるということは、同じように湖の自然環境に依存してきた他の多くの生物も、人間による湖の環境の改変によって大きな影響を受けていると考えるのが自然です。したがって、アサザによって示されている問題を、アサザだけの問題として狭く捉えるのではなく、湖に生息する多様な生物への影響を考えるひとつの契機と考え、湖の生物多様性への人々の関心を高め、湖の生態系保全に必要な考え方の普及や霞ヶ浦再生活動に結び付けていくことが、アサザの保護に取組む私たちの真の目的です。
これまで述べてきましたように、一部団体関係者が言うように「もともとは霞ヶ浦にほとんど無かったアサザを、一時的に増えた特殊な現象を基に保護するのはおかしい」といった批判は科学的とはいえません。上記のような批判を科学的な根拠もなく思い込みで主張することは、アサザだけではなく湖の生態系を保全するための取組みを後退させるだけです。実際に、このような無責任な主張によって、重要な議論が混乱させられてきたのも事実です(それにより、アサザ衰退を契機に行なわれていた水位上昇の中止(2000年)が2006年にはほぼ再開されてしまいました。また、アサザ批判と一緒に行なわれた粗朶消波施設への批判に乗じて、環境破壊著しい石積み消波堤が一気に増設されていきました)。
今緊急に求められているのは、国交省による不自然な湖水位の管理(冬期の上昇など)が生態系に及ぼしている影響について科学的に検証することと、今後に向けて自然と調和した水位管理の実現に向けた真摯な議論を重ねていくことです。一部の団体関係者によって行なわれている上記のような批判の仕方は、結果として現行の水位管理による湖の生態系へのダメージを継続させるだけであり、湖の多くの生物を絶滅に追い込むことにつながることを関係者は十分に理解し、改めるべきです。
研究者の肩書を使い次々と科学的な根拠の乏しい原因仮説を主張し、議論をただ長引かせ問題解決を遅らせた結果、被害を拡大させ多くの犠牲者を出した水俣病の教訓を忘れてはなりません。
わたしたちは霞ヶ浦の再生へ向けた取組みや研究の健全な発展を心から望みます。

NPO法人アサザ基金

 
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