ネットワーク型社会の構築による湖沼保全

 21世紀はネットワーク型社会になるとよく聞く。わたしなりに湖沼保全に向けたネットワーク型社会を展望してみたい。霞ヶ浦の環境問題と向き合う中で、わたしが分かったことは環境問題は環境行政や環境保護運動の枠の中に収まっている限り解決できないということである。そこで、アサザプロジェクトでは、既存の枠組みを越えて展開する広域ネットワークによって、流域全体を被う総合的な施策を実現する方法を考えてきた。

 社会が複雑化し同時に組織の機能が専門分化したことで、相互の関係性が見失われた結果、社会の課題を個別の技術や対策では解決できなくなった。それは、環境に限らず、福祉などの他の政策についても云える。生活者の立場から見れば、環境保全や福祉はすべての分野に開かれたシステムであることの方が自然である。

 個人を核とした現代社会では環境保全が人々の生き方や価値観と結び付かないかぎり、人々の主体的な行動を引き出すことは難しい。つまり、自分の生活の中で起きる様々な出来事を総合化し、人格をとおして統合しようとする意志を持つ個々人が核となったネットワークこそが、自然と共存する社会の基礎となるものである。

 今、湖沼の保全や再生をめざすわたし達に求められているのは、まさに人格が機能するネットワーク型社会の構築であると考える。アサザプロジェクトが目標とする21世紀型社会は、総合化する主体を権力に頼らない、力にはよらない、中心に組織をもたないネットワーク型の社会であり、個々の人格が機能する社会である。

 
このページの先頭へ