ホギメディカル・牛久市協働谷津田再生プロジェクト

ホギメディカル・牛久市協働事業「谷津田再生プロジェクト」とは?

集合写真

2009年から、株式会社ホギメディカル牛久市・アサザ基金が協働で行う谷津田の再生事業です。
耕作放棄地となっていた谷津田を再生し、できた酒米は地元の伝統的な酒蔵で日本酒に醸造されます。
プロジェクト現場である谷津田は牛久市奥原のホギメディカル茨城工場に隣接し、霞ヶ浦・小野川の水源になっています。

ホギメディカル・牛久市共同事業「谷津田再生プロジェクト」の特徴、意義

このプロジェクトの最大の特徴は企業、行政、NPOの3者協働によって事業が行われている点です。
NPOの広域ネットワークの中で行政の施策を効率的かつ効果的に実施する事ができます。
また、企業は地域の他の分野との協働を実現させる事によって、地域での企業価値を高める事が出来ます。

プロジェクトの対象地は奥原工業団地内にあり、谷津田は工場に隣接しています。
ホギメディカルの茨城工場では地元出身の雇用者が多い為、地元の方が作業に多く関わることも特徴の一つです。
地元の人が身近にある貴重な自然を感じる場所になっています。再生された谷津田の面積は約1haと大規模です。

谷津田再生プロジェクトの効果

・無農薬でできた米は霞ヶ浦流域にある酒造会社で醸造されお酒にしています。
日本酒の市場規模は縮小傾向にありますが、お酒に自然再生や多様な主体による協働での実現という付加価値を付けることで新たなブランドの創出に寄与しています。

・この谷津田は牛久市による緊急雇用対策の場になっています。現在までのべ20人以上の人が働いています。

・牛久市は新たな都市計画において市内の谷津田保全を重要視しています。本プロジェクトでは谷津田再生後は多くの生き物のにぎわいが戻り、美しい里山の風景が復活しています。

・谷津田での体験は、社員さんの環境についての知識・関心をも高めています。地元の自然環境の良さを再認識する場になっています。

プロジェクトの活動内容

ホギメディカルの社員と家族によるボランティアが中心となり、お米(もち米、コシヒカリ、酒米)を無農薬、無化学肥料で栽培しています。

作業後は隣接した工場でバーベキューをします。冬には取手市にある株式会社田中酒造店さんで酒造り体験をします。普段の仕事では出会うことがない違う部署の社員さんとの交流の場にもなっており、家族で参加する方も多いので、社員だけでなく家族や子どもたち同士の交流も生まれています。

田植え  草取り

稲刈り2 BBQ 観察 仕込み2

プロジェクトの各項目に対する位置づけ

.地域活性化 

都心に近い牛久の地の利を生かし、これから牛久市の自然・観光資源の一つとして、都市と農村交流・エコツーリズムのモデルとなることが期待されています。行政、企業、NPOが協働で行う地域活性化モデルとなります。

 .環境教育 

牛久市教育委員会と協働で2004年から市内全小中学校と実施している「学校ビオトープから始まるまちづくり事業」とも連携し、今まで牛久市内の小中学校の子どもたちが見学、生物調査に訪れるなど教育実践の場になっています。

 .社会を変える 

NPOが媒介となって企業や地場産業を結びつけた新たなネットワークに行政が参加する事で、行政が今までできなかった環境保全や地域活性化という困難な課題を解決する事が出来ます。

 .企業との協働

環境保全や地域活性化の為、牛久市が耕作放棄地を地主から借り上げ企業に貸し付けるというモデルとなっています。流域の工場団地に進出した他の企業にも当てはめ、広域的な保全を目指します。

 .循環型社会

牛久市が進めるバイオマスタウン構想とは、地域資源を活用し、循環型のまちづくりを行う構想です。今後、バイオマスタウン構想と谷津田の再生を連携していきます。

 .自然再生、生物多様性

 再生された谷津田は、牛久市奥原の株式会社ホギメディカル筑波工場に隣接した場所にあります。工業団地内における自然再生、生物多様性保全のモデルケースになっています。

ニホンカワトンボ アキアカネ シュレーゲル④ サワガニ②

アサザプロジェクトオリジナル酒 広がれあさざの夢

アサザプロジェクトオリジナル酒「広がれあさざの夢」とは

アサザプロジェクトでは霞ヶ浦にトキを呼び戻すことを目標に、トキの生息が可能となるよう流域全体の保全を目指しています。
そこで、2004年から霞ヶ浦の重要な水源である谷津田の再生に取組んでいます。
再生された谷津田で収穫した酒米を地元の酒蔵が日本酒に醸造し、地域ブランドとして販売しています。
それがオリジナル酒「広がれあさざの夢」です。
収益の一部は湖の再生事業に使われ、消費者はお酒を買うだけで自然再生に参加できるというしくみになっています。
地域に根差し、文化の一部となっている伝統産業と、アサザプロジェクトが出会い、新な付加価値が生み出されたのです。

トキの生息を可能にするには、流域全体を含めた広範囲の保全が必要です。
広域の自然再生、保全を実現する為に、アサザプロジェクトという新たな取り組みは、流域に広く点在する地場産業や農家と連携し、独自のビジネスモデルを構築するなどして取組みの輪を広げていきます。
この取組みは高く評価され、2009年に(財)イオン環境財団と環境省によって創出された「生物多様性日本アワード」にて、第1回グランプリを受賞しました。

アサザプロジェクトオリジナル酒「広がれあさざの夢」の特徴

流域の100ヶ所以上に広く分散している水源地(谷津田)の保全は、従来行政が行ってきた問題解決型の施策では解決困難な課題です。
谷津田と同じように、酒蔵も流域に点在していることから、それらが持つ地域のつながりを活かす事で流域全体の保全が可能となります。
また、ビジネスモデルを構築する事で、単年度予算事業とは異なり、継続・発展的に事業を行うことができます。
このようにアサザプロジェクトは価値創造型のビジネスモデルを考え、民間主導で問題を改善する方法を提案しています。

アサザプロジェクトオリジナル酒「広がれあさざの夢」の効果

・この取組みによって、これまで霞ヶ浦・北浦流域で10か所の谷津田を再生し、ホタル、トンボ、タカなど多くの生物を呼び戻すことができました。

・県内の多くの酒蔵メーカーもこの取組みに関心を示しています。

・消費者が商品を手にする事で、環境問題に目を向けるきっかけになります。さらに商品の購入を通して実際に再生事業に貢献する事ができます。

アサザプロジェクトオリジナル酒「広がれあさざの夢」の活動内容

流域の谷津田で生物多様性に配慮し、無農薬、無化学肥料で米を栽培しています。
その米を石岡市の白菊酒造株式会社、取手市の株式会社田中酒造店、潮来市の愛友酒造株式会社で醸造してきました。
販売は地元の大手スーパーマーケットであるカスミなどで行っています。
収益の一部は水源地再生活動に活用されています。
今後、流域にある数十の酒蔵、農家と連携し、取組みを広げていきます。

⑤地域活性化・・・流域の文化に根ざした伝統産業が、湖の再生やトキの野生復帰という夢を地域の人と共有する事で、伝統産業に新たな価値が生まれ、産業全体、流域全体が活性化します。

環境教育・・・ブランドデザイン、企画には地元の小学生も関わっています。単に現状課題を学ぶだけでなく、地域の人、農家が夢を共有する事で、課題を解決できるという事を当事者として体験できます。

社会を変える・・・取組みよってできた日本酒が社会に評価されることで、自然再生や生物多様性保全が一つの価値として、人々の暮らしの中に浸透します。自然再生が地域経済システムの中で評価されるという画期的な手法です。この手法を流域各地にある他の地場産業にも応用していきます。

企業との協働・・・都市の企業と地域の酒蔵メーカーが、流域の谷津田を再生する事でこのブランドができました。今後さらに酒蔵、農家との連携を増やし、さらなるブランド価値の向上を図ります。

 循環型社会・・・水源から湖に至る水系、流域全体の水循環システムと重なり合うビジネスモデルを構築しています。行政主導による単年度予算事業と異なり、ビジネスを継続・発展させる事で、流域全体を視野に入れた保全が可能になります。

自然再生・生物多様性・・・この取組みは部分的、局所的に保護区を設置するのではなく、生態系の一つの単位である水系・流域全体の生物多様性保全を目標にしたモデルです。ビジネスモデルにすることで、従来の保全事業にはない広範囲の保全が実現します。

トキの住む鹿嶋市を目指して

①   トキの住む鹿嶋市を目指して 子どもと大人の協働のまちづくりin山之上withUBS RICEprojectとは

北浦の重要な水源地となっている鹿嶋市山之上地区の谷津田。周囲には鹿島神宮の摂社である坂戸神社を始め由緒ある神社が数多く分布し、今も荘厳な景観が残っています。この谷津田と鹿島神宮の森は昔、つながっていました。それは700年代に編纂された常陸国風土記にも記載されています。しかし現在は市街化によって森は分断され、谷津田も荒廃が進んでいます。

そこで子ども達、地域の人々、都市の学校や企業が協力して谷津田を再生させようという取り組みが2007年に始まりました。再生した谷津田ではもち米、酒米を栽培しています。酒米は地域の酒蔵で日本酒に醸造されます。もち米はお餅となって地元のお祭りなどで販売されます。

谷津田の再生は生き物を呼ぶだけでなく、北浦に清らかな水を届けることにもつながります。鹿島神宮の大木にトキやコウノトリが巣をかけ、谷津田にエサをとりに出かける。そんな鹿嶋市を100年かけて実現させようという構想です。また、このプロジェクトは世界的な金融機関であるUBSと協働で行っています。

谷津田・鹿嶋市

一体 常陸国風土記

②   トキの住む鹿嶋市を目指して 子どもと大人の協働のまちづくりin山之上withUBS RICEprojectの特徴・意義

このプロジェクトは子どもの提案から始まり、その後の運営は地域にできた新たな組織が行っています。山之上谷津田再生協議会というその組織は、公民館、自治会、小学校PTAなど既存のコミュニティに他の場所から転居してきた人も加わり、発足しました。この協議会は、自然再生推進法に基づく協議会と異なり、地域住民が自主的に組織を運営することで継続的・発展的に事業が行われています。また、既存のコミュニティと連携する事で、流域レベルの広域ネットワークの中で新たな取組みを地域に根付かせます。

提案  DSCF0084

プロジェクトは、機械の使用が困難である圃場整備されていない枝谷津の再生からスタートしました。このような場所は、一般に自然度が高く、元々希少種や絶滅危惧種などが残っています。その為再生の効果も現われやすいです場所ですが、この谷津田の大半を占める圃場整備された水田では既に生物多様性が失われています。今後、枝谷津と連続している圃場整備された水田も併せて保全する事が決定しています。プロジェクトを行っている谷津田は霞ヶ浦・北浦流域でも有数の規模を誇る場所ですので、圃場整備された水田における生物多様性保全が実現されれば、広大な面積の保全が可能になり、トキを呼び戻す夢が近づきます。

③ トキの住む鹿嶋市を目指して 子どもと大人の協働のまちづくりin山之上withUBS RICEprojectの効果

・再生した谷津田は枝谷津上流部にあり、豊かな湧水量のある自然度が高い場所です。再生の効果は大きく、生物多様性が大幅に向上しています。

再生前 ➡ 再生後

・都市の企業や学生と、農村の交流が生まれ地域が活性化しています。

・谷津田で収穫した酒米は、地域の伝統的な酒蔵である愛友酒造株式会社で醸造され、純米原酒が出来上がります。お酒の一部は、水源地再生の酒広がれあさざの夢として一般販売されます。日本酒の市場が縮小傾向にある中、本プロジェクトは地場産業の活性化にもつながっています。

・地域の子どもの提案から始まったこの取組みはその後も地域の環境教育の場となっています。

④トキの住む鹿嶋市を目指して 子どもと大人の協働のまちづくりin山之上withUBS RICEprojectの活動内容

谷津田を中心とする周囲の畑や森林の再生、維持活動を行っています。日ごろの管理は月に2回、山之上谷津田再生協議会が行っています。作業後、自然に囲まれた中での昼ごはんも楽しみのひとつ。会員同士の近況を語り合う場としても役立っています。

プロジェクトのパートナーであるUBSはスイスに本社を置く外資系の会社で、社員一人一人の地域貢献に対する意欲が高く、積極的にプロジェクトに参加して下さっています。田植えや草取り、稲刈りなどの際にはイベントを開き、地域の方も参加するので、様々な交流が生まれています。参加者には海外の出身者も多く、日本文化を理解する場になっています。

UBS教え 山之上 UBS観察 OLYMPUS DIGITAL CAMERA

その他にも様々な人が谷津田に訪れています。東京で活動する「ナナハン実行委員会」もその一つ。普段東京で暮らす若者が田んぼでの作業を通して地元の方と交流しています。また、2012年からは原宿にある田中千代ファッションカレッジとの交流も始まりました。山之上と原宿。一見関係のない組み合わせに思えますが、実は原宿もかつては谷津田が広がっていた場所。山之上は原宿の原風景なのです。普段ファッションを学ぶ学生が山之上で農作業をしたり、山之上の人が原宿に行って餅つきをするなど交流は広がっています。

田中千代 千代もちつき

地域活性化

一度価値を失い荒廃した谷津田が、都市との交流を通して生物多様性や水源地保全という新たな社会的価値を持ちました。それにより新たな取組みが次々と生まれ、地域が活性化しています。活動拠点は公民館で、鹿嶋市が進める各地区の公民館を中心としたまちづくりのモデルになっています。

環境教育

この取組みは豊郷小学校の環境教育がきっかけで始動しました。子ども達が地域の問題に気付き、大人と話合いをして再生が実現しました。知識を与えるだけの教育と異なり、問題の気付きから解決まで行う一連の環境教育を実践しました。

社会を変える

霞ヶ浦・北浦流域という広範囲を視野に入れたプロジェクトを地域に根差した取組みにする為には、伝統的な地域コミュニティと協働で取組む事が有効です。

企業との協働

谷津田の再生は、グローバルな金融機関であるUBSと協働で行っています。社員一人一人の地域貢献に対する意識が非常に高い企業です。このプロジェクトは社員の皆さんが活躍する場になっています。また、海外出身の方が日本文化を理解する場になっています。

循環型社会

この取組みは、循環型社会によって維持されてきた伝統的な里山景観の再生を通して、関る人がこれからの循環型社会の発想を得る場になっています。

自然再生、生物多様性

再生した枝谷津の上流部分は元々生物多様性の豊かな場所でした。再生の効果は大きくホットスポットになっています。今後、この枝谷津に連続している圃場整備された水田の保全を開始し、より広大な面積の生物多様性保全を目指します。そして北浦を始め水系全体への生物供給源とします。

湖岸モニタリングに参加してみよう!

湖岸モニタリングに参加してみよう!(調査時期:通年)

昨年までに霞ヶ浦・北浦の11箇所で植生帯復元を目的として浅瀬を造成しました。
この地区では、どんどん自然が戻ってきています。
そこで、動植物の様子やゴミの有無などの調査を市民モニタリングという形で実施します。
市民モニタリングのご案内はこちらです。

つばめのおやど探し

つばめのお宿さがし (調査時期:6~9月)

アサザ基金では、2000年からつばめのお宿(ねぐら)さがしを実施しています。
つばめは、広いヨシ原に初夏から秋にかけて、繁殖を終えた親ツバメや
巣立ちした子ツバメが集まって集団ねぐらを作ります。
ツバメのねぐらを発見することによりヨシ原の評価ができます。
夏休みを利用して、つばめのお宿さがし調査い参加してみませんか。
つばめのお宿さがし調査の案内はこちらです。

ムナグロ調査

ムナグロ調査(調査時期:3~5月)

地球上に張り巡らされている、生き物の渡りのルート。
それぞれの中継地を信頼で結ぶことが、自然との共生
そして世界平和につながると、私たちは信じています。
長い旅をするチドリの仲間「ムナグロ」の渡りの中継地が霞ヶ浦流域にあります。
これらを継続して調べることから始めましょう。
そして  その情報を発信・共有して、信頼の絆を広げていきましょう。
他の地域の情報も、どうぞお寄せください。  
ムナグロ調査の案内はこちら
です。

調べてみよう!!のっこみしらべ

調べてみよう!!のっこみしらべ(調査時期:3~5月)

霞ヶ浦・北浦では、魚が産卵のためにヨシ原や田んぼなどの浅瀬へ
やってくることを「のっこみ」とか「はたき」と呼びます。
アサザ基金では、霞ヶ浦・北浦の湖岸や霞ヶ浦・北浦の流入河川の水辺の評価として
のっこみしらべを行います。
のっこみ調査の案内はこちらです。

生きものの道地球儀プロジェクト

生きものの道・地球儀プロジェクト

生きものの道で世界を結びつけよう

国際社会では国家や民族、宗教の違いなどによる対立がやむことはありません。
世界は憎しみの連鎖に覆われようとしています。戦争は、最大の自然破壊です。
私達はもう一度、人類共通の基盤である地球の営みに目を向け、お互いの違いを乗り越え、結びつくことを提案します。

地球上には壮大な自然の営みがあります。
そのひとつが野生生物の渡りや回遊(生きものの道)です。
「生きものの道」のネットワークは、地球全体に広がっています。
いま対立している国や地域も「生きものの道」で結ばれているのです。
子ども達や地域間の交流によって「生きものの道」を再発見し、「生きものの道」を通して結びつき、日々の暮らしの中から平和な世界を築いていこうという運動が「生きものの道地球儀プロジェクト」です。

みんな地球で一生懸命生きている
かけがえのない暮らしがあることを理解しあおう

「生きものの道地球儀プロジェクト」が世界中に広がり、自然の営みのネットワークと重なったときに、人と自然との共生と世界平和が実現すると信じます。
地域の日々の暮らしを単位とした「生きものの道地球儀プロジェクト」にあなたも参加しませんか。

くわしくは コチラのページをご覧ください。

渡良瀬遊水地

上流と下流を結ぶ足尾山地の緑化・公共事業 わたわせ未来プロジェクト

わたらせ未来プロジェクト

広大なヨシ原に眠る問いの力を信じてpdf

足尾山地、渡良瀬遊水池は、足尾鉱毒事件で知られている日本の公害・環境問題の原点の地です。
足尾山地と渡良瀬遊水池の緑化・湿地の再生を地場産業のヨシズを使って同時におこなっています。
コウノトリが野生復帰できるような、健やかで豊かな自然環境を40年間かけて 取り戻そうという、わたらせ未来プロジェクト
霞ヶ浦のアサザプロジェクトと連携し、推進しています。

● 渡良瀬遊水池のヨシを使った緑化事業
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渡良瀬地域産のヨシを使った足尾山地の緑化・公共事業

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●ドングリの里親制度
生物多様性保全に配慮した緑化事業を行っています。

生物多様性保全に配慮した緑化事業とは?

上流の山地で行われている緑化事業では、効率性を重視することから、材料の供給が容易で定着が早い牧草をはじめとした外来種の植物が多く用いられています。
しかし、上流部での外来種の導入は、川を通してそれらの種の生育地の拡大を引き起こし、水系全体に大きな影響を及ぼすことになります。
このような外来種の生育地拡大は、在来種の生育地を奪い絶滅に追い込むとして、各地で問題化しています。
わたらせ未来プロジェクトを行っている足尾山地の緑化事業でも、これまで外来種が多く用いられてきました。
そこで、未来プロジェクトでは、生物多様性の保全に配慮した緑化事業を、上流下流のネットワークによって実施しています。
具体的には足尾山地に残っている森林で、ドングリなどの樹木の種子を採取し、植樹用の苗を育てるというものです。
緑化用のヨシズと同じ上流と下流の交流事業の一環として、足尾山地で採取したドングリを下流の渡良瀬湿地帯周辺の小学校や家庭で育ててもらう里親制度を行っています。
足尾山地で採取したドングリなどの樹木の種子を土壌の肥沃な下流に送り、里親に苗木に育ててもらうシステムです。
上流下流の小学校を結ぶ交流事業に、渡良瀬川流域の一般市民も加わり、流域ぐるみで足尾に本来の森林を取り戻す取り組みが始まっています。
このように、生物多様性の保全をはかり、外来種の管理を行うためには、水系全体を行政の縦割りを越えて結ぶネットワークの構築が欠かせません。
NPOの役割は、保全に向けた戦略を持って広域ネットワークを地域全体に構築していくことにあります。
NPO本来の役割は縦割り行政をその枠組みの中で補完することではありません。 代表理事 飯島 博

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足尾鉱毒事件

明治以降の日本は欧米をモデルに急速に近代化を押し進めていった。
足尾銅山は慶長年間から銅の採掘が行われていたが、明治以降の近代化の波に乗って急速に生産量を増大させていった。
しかし、古河鉱業は生産優先で環境への配慮がないまま銅の増産体制をとったため、銅生産に伴い発生する鉱毒は垂れ流しとなり、渡良瀬川を流れ下り流域に重大な被害を及ぼした。
被害は農産物にとどまらず、多くの人々が健康被害を被った。

足尾鉱山では銅の精錬に使う燃料調達のための森林伐採や精錬所の排煙によって、周辺の森林が大規模に破壊されていった。
足尾山地では約3000ヘクタール以上の森林が失われた。
それにより、山は保水力を失い、渡良瀬川下流では洪水が頻発するようになった。
東京に洪水と鉱毒が及ぶことを恐れた政府は、渡良瀬川と利根川の合流地域にあった谷中村を潰して遊水池にすることを決定した。
上流での大規模な森林破壊に伴う洪水や、垂れ流しの鉱毒を食い止めるために、治水事業と称して旧谷中村を強制廃村に追い込んで造ったものが、現在の「渡良瀬遊水池」である。

また、渡良瀬川流域は地域は田中正造をはじめとした人々によって、日本の環境保護運動が先駆的に展開された歴史的な地域でもある。
正造が最後まで公害と闘ったこの地に残した次の言葉はあまりにも有名である。
「真の文明は山を荒らさず川を荒らさず、村を破らず人を殺さざるべし」

代表理事 飯島 博