渡良瀬

上流と下流を結ぶ足尾山地の緑化・公共事業 わたわせ未来プロジェクト

足尾山地、渡良瀬遊水池は、足尾鉱毒事件で知られている日本の公害・環境問題の原点の地です。
足尾山地と渡良瀬遊水池の緑化・湿地の再生を地場産業のヨシズを使って同時におこなっています。
コウノトリが野生復帰できるような、健やかで豊かな自然環境を40年間かけて とりもどそうという、わたらせ未来プロジェクト。
霞ヶ浦のアサザプロジェクトと連携し、推進しています。

● 渡良瀬遊水池のヨシを使った緑化事業
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渡良瀬地域産のヨシを使った足尾山地の緑化・公共事業

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●ドングリの里親制度
生物多様性保全に配慮した緑化事業を行っています。

生物多様性保全に配慮した緑化事業とは?

上流の山地で行われている緑化事業では、効率性を重視することから、材料の供給が容易で定着が早い牧草をはじめとした外来種の植物が多く用いられています。
しかし、上流部での外来種の導入は、川を通してそれらの種の生育地の拡大を引き起こし、水系全体に大きな影響を及ぼすことになります。
このような外来種の生育地拡大は、在来種の生育地を奪い絶滅に追い込むとして、各地で問題化しています。
わたらせ未来プロジェクトを行っている足尾山地の緑化事業でも、これまで外来種が多く用いられてきました。
そこで、未来プロジェクトでは、生物多様性の保全に配慮した緑化事業を、上流下流のネットワークによって実施しています。
具体的には足尾山地に残っている森林で、ドングリなどの樹木の種子を採取し、植樹用の苗を育てるというものです。
緑化用のヨシズと同じ上流と下流の交流事業の一環として、足尾山地で採取したドングリを下流の渡良瀬湿地帯周辺の小学校や家庭で育ててもらう里親制度を行っています。
足尾山地で採取したドングリなどの樹木の種子を土壌の肥沃な下流に送り、里親に苗木に育ててもらうシステムです。
上流下流の小学校を結ぶ交流事業に、渡良瀬川流域の一般市民も加わり、流域ぐるみで足尾に本来の森林を取り戻す取り組みが始まっています。
このように、生物多様性の保全をはかり、外来種の管理を行うためには、水系全体を行政の縦割りを越えて結ぶネットワークの構築が欠かせません。
NPOの役割は、保全に向けた戦略を持って広域ネットワークを地域全体に構築していくことにあります。
NPO本来の役割は縦割り行政をその枠組みの中で補完することではありません。 代表理事 飯島 博

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足尾鉱毒事件

明治以降の日本は欧米をモデルに急速に近代化を押し進めていった。
足尾銅山は慶長年間から銅の採掘が行われていたが、明治以降の近代化の波に乗って急速に生産量を増大させていった。
しかし、古河鉱業は生産優先で環境への配慮がないまま銅の増産体制をとったため、銅生産に伴い発生する鉱毒は垂れ流しとなり、渡良瀬川を流れ下り流域に重大な被害を及ぼした。
被害は農産物にとどまらず、多くの人々が健康被害を被った。

足尾鉱山では銅の精錬に使う燃料調達のための森林伐採や精錬所の排煙によって、周辺の森林が大規模に破壊されていった。
足尾山地では約3000ヘクタール以上の森林が失われた。
それにより、山は保水力を失い、渡良瀬川下流では洪水が頻発するようになった。
東京に洪水と鉱毒が及ぶことを恐れた政府は、渡良瀬川と利根川の合流地域にあった谷中村を潰して遊水池にすることを決定した。
上流での大規模な森林破壊に伴う洪水や、垂れ流しの鉱毒を食い止めるために、治水事業と称して旧谷中村を強制廃村に追い込んで造ったものが、現在の「渡良瀬遊水池」である。

また、渡良瀬川流域は地域は田中正造をはじめとした人々によって、日本の環境保護運動が先駆的に展開された歴史的な地域でもある。
正造が最後まで公害と闘ったこの地に残した次の言葉はあまりにも有名である。
「真の文明は山を荒らさず川を荒らさず、村を破らず人を殺さざるべし」

代表理事 飯島 博

 
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