2008 Charity Ball ~Green Carpet~ UBSの森

UBS証券 「2008 Charity Ball ~Green Carpet~ UBSの森」とは?

谷津田としての機能が失われてしまった未利用地を里山として再生し、霞ヶ浦の水源地保全と共に、企業と協働で再生することで都市と農村の新たな価値とつながりを生み出しています。また、採取されるミツバチの蜂蜜の味から、森の再生の変化を感じるプロジェクトです。

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プロジェクトの概要

日本で2番目の大きさの湖「霞ヶ浦」は、流域面積あたりの森林面積が2割を切っていて近々の課題となっています。水源地となる森林を再生し、豊かな里山を取り戻すことにより都市と農村がつながり、地域活性化を図ると共に、生物多様性などを学ぶ地域の子ども達の環境教育の場を提供することを目的にスタートしました。

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 里山の再生は、霞ヶ浦流域の水源地の保全・再生を図る上で、重要な役割をもっています。水源地である谷津田の周りには林があり、林はその水源を涵養する機能を持っています。「UBSの森」も霞ヶ浦の水源の森です。里山はフクロウ、オオタカやタヌキなどの身近な生きものが生息するなど生きものたちの宝庫でもあり、地域の文化を継承してきた場所でもあります。森と地域の絆ができることによって里山は様々な生きものたちと出会える場所になります。
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また、このプロジェクトは、UBS社員からの寄付から生まれていて、地域社会に貢献したいというUBS社員の皆様の想いの結晶が根底にあります。

プロジェクトの特徴

対象地域は、谷津田としての機能が失われてしまい、樹木が全生えていない荒れ地でした。そのような場所(未利用地)に、植樹と林床植物の再生、土壌の改良を行うことにより、多様性のある森本来の役割を取り戻すことができます。
植樹だけでは、本来の雑木林は再生しません。このプロジェクトでは、林床にも本来の植生を再生することを目指しています。林床の植生は、採蜜植物にもなります。

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霞ヶ浦流域の水源地の保全・再生を図るうえで里山の再生は、重要な役割をもっています。水源地である谷津田の周りには林があり、林はその水源を涵養する機能を持っています。それだけではなく、昔の人々は里山からの恵みを循環させるシステムを実体験から作り上げ、生きものと共存してきました。さらに里山は地域の文化を継承してきた場所でもあります。また里山はフクロウ、オオタカやタヌキなどの身近な生きものが生息するなど生きものたちの宝庫でもあります。

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生き物が住めなくなっている里山に、手入れが入ることで元々あった多様な林床植物が戻ることによって、里山環境が再生されます。森の草花からミツバチが集めた蜂蜜のテイストの変化を感じることによって、数値化することの出来ないその効果を体感できます。

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プロジェクトの効果

本プロジェクト地は牛久市バイオマスタウン事業を代表する菜の花の栽培地や、キヤノンマーケティングジャパンとアサザ基金の協働による菜の花・ひまわりの栽培地、地元農家によるソバの栽培地とも接しています。本再生事業を行うことで、地球温暖化の防止、自然との共生モデルが首都圏内に誕生することとなり、茨城県で、日本でこの取り組みがモデルとなっていきます。

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ミツバチが一生かかって集める蜂蜜の量はスプーン1杯程です。そして、その採蜜の行動範囲である半径約2キロメートルから集まる蜂蜜には、その時期、その地域の生態系の情報など、従来の調査や数値による評価手法では計り知ることができない壮大な情報が凝縮されています。ハチミツを口にした人は、味わいや香りを感じることで、そこに咲く花、暮らす生きもの、ミツバチが彼らの文脈で読み取った地域の多層的な情報を五感で感じ取り、そこに潜在する里山のテイストをイメージすることができます。

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里山は人と自然の交流によって生まれる場です。人と自然、人と人をhoneyに結びつけることで、「UBSの森からひろがる里山テイスト」で、都市と農村をつながります。
本プロジェクトを通して、下記の効果を得ながら、現代版里山づくりのモデル構築に取り組みます。原宿など都市で行われている養蜂とも結びつけることで、都市の蜂蜜テイストも活かし、里山の再生を通して、生態系や生物多様性、循環型社会、地球温暖化防止など社会モデルの構築を目指します。

プロジェクトの活動内容

2009年4月
UBS社員と家族のボランティアが地域の人々とともに、植林を行う。シンボルツリーになるシダレザクラを含む73本の木を植える。
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2010年4月
再びUBS社員と家族のボランティアが地域の人々と共に植林を行う。バイオディーゼル精製現場を見学し、UBSの森でお花見。
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2010年9月
UBS社員と家族のボランティアが、在来種であるニホンミツバチのための巣箱を組み立て、UBSの森に設置。草刈り等の作業も行う。ハチミツプロジェクトのスタート!

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2011年4月
アサザ基金事務所に、ニホンミツバチの分蜂群が現れ、UBSの森の巣箱へお引っ越し。数週間で定着し、順調な巣作り、集蜜が行われる。
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2011年10月
UBS社員と家族のボランティアが、2010年に設置したニホンミツバチの巣箱から、採蜜を行う。ミツバチの蜜源となる野草の苗を植える。
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2012年4月
ヤマツツジや果樹を植樹、シノダケ刈りを行う。
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2012年9月
UBSの森で昆虫採集、再生を確かめる。ススキや草の成長を促すために土壌改良を行う。ミツバチの巣からミツロウを取り出し、キャンドルづくりを行った。
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2013年4月
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2013年8月
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プロジェクトとアサザプロジェクトの位置づけ

地域活性化
広範囲の採蜜(環境)情報を教えてくれる蜂蜜のテイストから、生態系や地域特色を感じ取り、未来の地域環境のあり方を想い描くことができる。人々の感覚を呼び覚ますことによって、地域に潜在するつながりや文脈を浮上させることが出来る。

環境教育
ミツバチが採蜜範囲(行動圏)から収集する環境情報として、みつのテイストを捉え、感性を通して里山全体のつながりについて学ぶ。

社会を変える
ハチミツのテイストという数値化が困難な人の感性によって、人と自然を結び付けることで、豊かに楽しくhoneyに地域の未来を考え、創り上げる。個々の人たちの感性を重視した先駆的なモデルとして全国に発信します。

企業との協働
世界で仕事をするUBS社員と、ハチミツの商品開発を一緒に行い、日本の里山の価値や文化をブランド化する。企業が行った森づくりの成果を、ハチミツのテイストを通し、日本の伝統文化と共に世界へ発信することが出来る。

循環型社会
ミツバチの蜂蜜のテイストを感じることによって、潜在的な地域資源のつながりを感じ、感性豊かな地域特性の発見を促す。

自然再生・生物多様性
半径2㎞のニホンミツバチの生活文脈を通して、きめ細かく地域の環境の変化を把握していく。採蜜された蜂蜜のテイストを通して、自然再生された里山環境の変化を感じ取っていく。

人と河童が出会うまちづくり

学校ビオトープからはじまるまちづくりとは?

2004年から、茨城県牛久市の全小中学校の子どもたちが『人と自然が共生する牛久』をめざし、地域の特徴を学び、まちづくり提案をし、その学習の成果を実際の社会に実現していく、子ども主役のまちづくり・人づくり事業が始まりました。

茨城県牛久市は、東京から50km圏内にあります。

牛久市には谷間の田んぼ(谷津田)が多くあり、牛久沼と霞ヶ浦への水源地となっています。図3

谷津の入り口には必ず古い集落があり、人々は水源地である谷津田を基盤に地域づくりを行ってきました。そこは同時に、多様な生き物たちの生息の基盤となり続けてきました。図2

牛久のまちは人と人、人と自然、自然と自然のネットワークで覆われていたのです。
牛久沼や霞ヶ浦は「河童」伝説で有名です。牛久は牛久沼と霞ヶ浦の水系が接し合い、それぞれに棲むカッパが出会える町でした。
しかし近年、牛久市は東京へ通勤圏内のため近年ベットタウン化が進み、自然環境の減少やゲリラ豪雨時の洪水など都市型問題も起こり始めています。
一般に、学校の環境学習は地球規模の学習が中心で、地域の問題に目が向けられることはあまりありませんでした。牛久を覆っていた水と緑のネットワークも方々で分断され、カッパにも出会うことがなくなってしまっています。

そのような牛久の地域特性や課題を活かした総合学習として、アサザ基金と牛久市教育委員会協働の「学校ビオトープから始まるまちづくり事業」が始まりました。

図5  図6
この事業は、牛久市全小中学校で総合的な学習の時間などに行っています。
この事業の特徴は、子どもが中心となり学校を拠点とした地域コミュニティ(学区)単位でまちづくりを行っていくことです。(小学校区と地域コミュニティ単位はほぼ一致しています)
地域の子どもたちは、自分の足元(学区)の自然環境や地域の特徴を学び、深め、地域や行政などさまざまな立場の人を巻き込みながら、牛久市の特徴を活かしたまちづくりを提案します。
総合学習の中で、生きものなどさまざまな他者の視点から地域を見直すことで地域の可能性を再発見し、人と人、人と地域のネットワークを結び直し、それはカッパ(ここでは生物多様性のシンボル)を呼び戻すことにもつながります。
子どもたちの学習意欲を原動力にネットワークが結びついていくその過程で、福祉・治安・防災といった本来の機能が再生し、自立した地域コミュニティを基盤に築かれていきます。

この学習は、アサザ基金がコーディネーター役を務める『学校ビオトープから始まるまちづくり実行委員会』が主体となり、学校の学習に地域の自治会や住民・企業などを巻き込みながら行います。
子どもたちの総合学習を地域全体でサポートしていくことで、地域ぐるみで子どもたちを育てることにつながります。
まちづくり事業のネットワーク図
牛久のまちづくりの原動力(ネットワークの結び手)は、たくましく、想像力にあふれた子どもたちです。
子どもたちの学習から生まれた、夢や可能性を地域の人々が共有し合うことで、未来の担い手となる子どもたちを主役に、人と自然が共存する牛久のまちづくりを行っていきます。

牛久市では小学校の総合学習によって、何十年も耕作放棄された場所を田んぼに再生したり、子どもたちの提案が市の公園づくりや計画に反映されたりするなど、実際のまちづくりが次々と実現しています。
先生方から「これが本当の学習だ」と表現される実際の社会に働きかけていく学習が、牛久市では毎年行われています。
これからも、牛久の子どもたちが自分たちの町に夢を抱き、それを実現するための学習、提案づくりを行っていきます。

人と河童が出会うまちづくりホームページへ

 

学校ビオトープからはじまるまちづくりの特徴・意義

・単なる環境学習ではなく、まちづくり学習です
牛久市で行われているのは、ただ環境問題についての知識を学ぶいわゆる環境学習ではありません。自分の足元の地域を学び、深め、提案、行動し、社会へ働きかけ、実際のまちづくりに活かしていく、まちづくり学習です。
・縦割りを超えた実行委員会を組み、地域ぐるみで子どもたちの学習を支えています

学校ビオトープからはじまるまちづくりの効果

・地域の未来を担う人づくりを行っています
・子どもたちの学習が実際のまちづくりに活かされることで、子どもの夢実現と魅力あるまちづくりをしています(小学生による公共事業)
・人材育成の効果が研究されています。
小玉先生 論文
米川先生 論文

学校ビオトープからはじまるまちづくりの活動内容

・通年を通した学習を行っています。

 

学校ビオトープからはじまるまちづくりの位置づけ

 

【地域活性化】

子どもたちが学習を通して地域に眠っている宝物(地域資源)を探しだし、その宝物を実際の地域のまちづくりに生かしていく子どもたちの豊かな感性や想像力によって、大人たちが縦割り化した社会の壁を溶かし、多様な主体をつなげ、地域で新たな取り組みが次々と生まれていくような社会を築いていきます。

【環境教育】

環境問題を地球環境問題やごみ問題などの知識一般として得る教育ではなく、自分の地域の特色を学び、その特色を最大限に活かしたまちづくりを具体的に提案しその実現を目指していくことで、現場で感じる力や実際の社会での実践力を身につけます。

【社会を変える】

総合学習を通して子どもたちが地域の特徴や良さを見つけ、その良さを生かしたまちづくり提案をし、その提案が実際のまちづくりに活かされる牛久市のまちづくり学習は、今後世界の地方都市でも参考となるモデルになっていくと考えます。学習の体験から子ども一人一人が力を身に付けていくことが社会を変えていくことにつながります。

【企業との協働】

牛久市内で多様な主体と協働で環境保全を行っている企業の活動を学び、その活動と連携した学習を行うことで、企業との協働の意味を子どもたちが理解し、互いの違いを生かしながら協力し合い難しい問題や課題に取り組んでいく「協働」事業を起こしていくことができる人材の育成をしていきます。

【循環型社会】

循環型社会を築いていくためには自然からつながりや循環の仕組みを学び、自然から得た知恵を生かした地域づくりや生き方を実現していくことが必要です。地域に最も密着した生活を送っている子どもたちの目を通して、地域に眠るつながりを生かしながら、地域の人々の生活文脈と重なり合う細やかな循環型社会を築いていきます。

【自然再生・生物多様性】

自然再生を実現するためには、単にビオトープなどの生き物のすみかになる場所をつくるだけではなく、再生しようとしている自然に影響を与えている人間社会のあり方を変えていくこと(まちづくり)が大切です。牛久市では地域コミュニティや生きものの行動範囲と一致する各小学校区単位でまちづくり学習を行うことにより、牛久市内全体で人と自然が共存するまちづくりを実現していきます。

かっぱん田

    損保ジャパン日本興亜環境財団・CSOラーニング生「かっぱん田」とは?

「木を植えるより木を植える人を育てたい」。
損保ジャパン日本興亜環境財団の理念の元、首都圏の大学生と地元中学生が主役で行う牛久沼の水源地再生と地域ブランドづくりを一体として行う取り組み『かっぱん田』が2010年に始まりました。
この取り組みでは、未来を担う人づくりをしていくことを目指しています。

プロジェクトの舞台は、牛久沼の水源地である『遠山の谷津田』と呼ばれる谷の先端にあります。

『遠山の谷津田』は、周囲の森林からのわき水が湧きだし、サワガニやホタルなど貴重な生物も住む自然豊かな場所ですが、高齢化などに伴い耕作放棄地が増えています。

『遠山の谷津田』に近い牛久市立牛久南中学校の生徒たちは、総合的な学習の一環でこの谷津田を何年も調査しています。
地域の課題(耕作放棄地の拡大・農業の高齢化など)に気づいた生徒たちは、「トキの舞う谷津田」という目標を掲げ、谷津田再生を提案してきました。

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トキという目標は、遠山の谷津田全体が再生され、環境を大切にした農業がおこなわれ、牛久沼とのつながりが再生した未来を表しています。
そこには、再び自然と人、自然と自然、人と人のつながりを取り戻すことも含まれます。
この中学生の提案を受け、損保ジャパン日本興亜環境財団の支援のもと、首都圏の大学生(損保ジャパン日本興亜CSOラーニング生)が復田を企画・実施。
大学生がどろどろになりながら自分の手で作業も行い、2010年春、荒地が田んぼに蘇りました!
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【大人の背より高い草や木がびっしり生えていました】
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【生きものいっぱいの田んぼに蘇りました!】
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牛久沼で有名なかっぱがいつか来てくれるようにという願いと損保ジャパンのキャラクターのパンダをかけて「かっぱん田」と名付けられました。

谷津田再生によって「つながりの輪風せんべい」が誕生!

かっぱん田には、カエルやトンボなどの生きものの姿や人の笑顔が戻り、人、自然、生きものなどさまざまなつながりが戻ってきています。
毎年田んぼでは、首都圏の大学生や損保ジャパンの社員さんが手作業で、無農薬・無化学肥料で生きものと相談しながらお米作りをしているからです。
できたお米(もち米)は、地域の佃煮屋さん(小美玉市・大形屋商店)で、密漁をしない霞ヶ浦のえびを使い福祉作業所つばさの方が手作業で丁寧につくった「えびせんべい」になります。

えびせんべいのブランド化は地元の中学生が行っています!
この「えびせんべい」は、地元・牛久南中の生徒が総合学習の一環でブランド化し、地域の福祉施設などで販売しています。
せんべいの名前は『つながりの輪風せんべい』。
中学生がラベルデザインや価格・マーケティングなどを行いました。

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『つながりの輪風せんべい』という名前には、これまでつながっていなかった人や物、自然が再びつながることでこのせんべいが出来上がったという過程と、このせんべいを使ってもっと多くのつながりを取り戻したいという想いがこもっています。
ラベルのデザインでは、霞ヶ浦を舞台に様々な人やものがつながり、新たな価値が生まれ広がっていく様子を表しています。
できたせんべいは学校近くの福祉施設で販売し、すぐに完売するほど好評でした。
これらのほかにも、生徒たちは自分たちの考えをもっと多くの人に伝え、理解してもらうために販路拡大(=谷津田再生地の拡大)に着目し、今後は自分たちでせんべいを置いてもらう店を増やしていく予定です。

失われたつながりを取り戻したり、新たなつながりを創造していく、この「せんべいづくり」(モノづくり)の体験を通して、中学生たちは様々な人や物事、多種多様な考え方に触れ、豊かな発想力を持つこれからの地域社会の作り手として育っていきます。
実際のモノづくりを通して地域の人の反応や、水源地が再生していき生物多様性が豊かになっていく経験を通して、生徒たちは自分たちにも社会を変えていくことができるという手応えを感じるとることができます。

2012年度からは毎年学習を引き継ぎ、その年の1年生を中心に活動を続けています。せんべいの販路は、さらに拡大していく予定です。
また、1年間の学習が終了した後も有志が集まり、アサザクラブというクラブを結成し、谷津田再生に向けて自主的な活動を行っています。
アサザクラブの生徒企画による地域住民へ向けての「谷津田ツアー」の実施や市役所へ提案書の提出など新しい社会への働きかけが始まっています。
谷津田再生に関する要望書

今後も毎年、首都圏の大学生、中学生がアイデアを出し合いながら、かっぱん田とその先に続く谷津田を舞台に新たな自然再生プロジェクトや牛久のまちづくりを進めていきます。

かっぱん田の特徴

・首都圏の大学生が主役となって、企画・運営。

環境に関心のある首都圏の大学生が主役となって、1年の田んぼ作業や収穫祭、今後の展開などを企画・運営しています。
目の前で起きている環境問題や地域の問題やその解決策を実際の現場で学ぶことで、これから社会に出る大学生の人材育成につながります。

・地元中学生の総合学習と連携!

牛久南中生徒が、総合学習の時間にかっぱん田をフィールドとして、生物調査や水質調査などを行っています。
大学生も中学生に授業を行ったり、中学生のアイデア実現を手伝ったりするなど、大学生と中学生、双方の人材育成につながっています。

・さまざまな立場の人たちの協働事業!

首都圏の大学生・企業・地域の中学生・地域の商店・福祉施設・NPOなど、さまざまな立場の人が、それぞれの持つ力を発揮しあいながらプロジェクトが行われています。

かっぱん田の効果

・牛久沼の水源地保全

かっぱん田でわき出したわき水は、やがて牛久沼へ流れていきます。
無農薬無化学肥料でお米作りを行うことで、きれいな水を下流の田んぼや、川、牛久沼へ送ることができます。

・生物多様性保全

無農薬でお米作りを行い、生きものに影響があると言われる中干しは行わず、冬も水をはり(冬期湛水)1年を通してたくさんの生きものが住めるような農法をみんなで考え、実践しています。

・未来を担う人材育成
・商品のブランド化による地域活性化
・福祉作業所の方の仕事づくり

かっぱん田の活動内容

・1年間の田んぼ作業
損保ジャパン日本興亜の社員と損保ジャパン日本興亜CSOラーニング生の首都圏の大学生が、手作業でお米づくりを行っています。
通年を通した田んぼの作業(田起こし、田植え、草取り、稲刈り、脱穀、収穫祭(収穫したもち米を使った餅つき))を、首都圏の大学生が主体となり企画して行います。

プロジェクトとアサザの位置づけ

【地域活性化】

空洞化が進む地元商店街との協働によって、無農薬無化学肥料でつくる自然再生のお米や地域の中学生によるブランド化、福祉などの新しい文脈の付加価値がある商品が広がっていくことで、商店街を地域に新たな価値を創造するネットワーク(つながり)の中に位置づけなおすことができます。商店街をひとつの場として、新たなつながりや地域の多様な人々との価値や夢の共有化を進めることで地域活性化へつなげます。

【環境教育】

地域の中学生が足元の環境を学び、地域資源を生かした「人と自然が共生するまちづくり」を提案し、環境問題に関心のある東京の大学生と共に実際の社会へ働きかけていくこの取り組みは、未来を変える人づくりにつながります。

【社会を変える】

中学生・大学生が企画・提案し、企業、地元商店、福祉、地域住民など多様な主体を結び付け、地域活性化と自然再生が一体となった商品やまちづくり社会に実現していく発想をもった人を育てる・社会を変えていく力を育むことが社会を変えていく原動力につながります。

【企業との協働】

損保ジャパン日本興亜環境財団のビジョン「木を植えるより木を植える人を育てたい」と、アサザ基金の「従来の枠を溶かし新しい文脈で社会システムをつくっていくことができる発想を育むことで人の生き方を変えていく」というそれぞれのコンセプトが一致し協働しています。

【循環型社会】

地域にこれまでの縦割りの枠を超えた福祉、教育、漁業、農業、地元商店など分野を超えたつながりを生み出し、地域内に新しい文脈をつくっていく発想を育む循環型社会構築を目指します。

【自然再生・生物多様性】

生物多様性につながる水源地への働きかけを生み出す社会の動き(人・もの・金)をつくっていくという、教育プログラムによる生物多様性保全・自然再生がビジネスモデルとして組み込まれたモノづくりが次々に生まれる社会を目指します。

わくわく子どもの池プロジェクト

NECキャピタルソリューション株式会社協働事業 
「わくわくこどもの池プロジェクト」

概要


大都市である東京都内でも注意深くまちの中を見ているとチョウやトンボ、カエルなど様々な生きものの姿を見ることができます。
これらの生きものが見られるということは、それぞれの生きものが暮らしていくために必要な環境要素が東京という都市の中にあるということです。
たとえばチョウなら食草となる植物、トンボなら産卵するための環境や植物とヤゴの間を過ごす水辺です。
一見すると都市の中に生きものが暮らしていくために必要な環境や要素はあまりなさそうですが、実は東京という都市には生きものがなんとか暮らしていける環境が残されています。
また、意外と多くの生きものが都市周辺の農村地域から供給され、移動してきます。
しかし、それらの生きものが移動した先の都市には、生きものが定着できる場が多くはありません。

生きものが暮らしていくために必要な環境がある場所は、東京では学校や公園、寺社などに残っています。
これらの場所は都市の生きものの移動分散の拠点となっていると考えられます。
それらがカエルやトンボやチョウなどの生きものが移動できる範囲内に点在していることで、生きものはそれらを利用しながら暮らしていくことができていると考えられます。
このように都市の生きものたちはそれら拠点とそれをつなぐ生きものたちの通り道、「生きものの道」を使って暮らしています。
生きものの道は、上記の生息地のほかにも街路樹や民家の花壇などによっても形成されています。
しかしこれらの環境は生きものの生息や移動に配慮したものではありません。
そのため生きものの視点で少し改良を加えることでより多くの生きものが都市の中にやってきて生息することができるようになるポテンシャルがあります。
現在の都市は人のための道、建物、空間配置によって作られてきた結果、生きものとっては大変暮らしにくい空間となっていますが、多くの生きものと人間が共に暮らしてきた里山文化を活かすことで、自然と共存する都市づくりへの転換が可能です。

そこで生きものとの出会い、共生できるまちづくりを強く望んでいる都会の子どもたちと生きものと共生できるまちづくりを進めていく取り組みがこのプロジェクトです。
小学校等でこどもたちと生きものを知り、地域を知り、生きものの道を調べるなど未来の都市づくりを考える環境学習とセットで、学校に生きものを誘致するためのビオトープ池をつくっていく活動です。
いつも通う学校で生きもののすみか、供給拠点となる学校ビオトープと呼ばれる池を作り、学校の周りから自力でやってこられる生きものを誘致します。
その成果を活かして、今度は自分たちのまちがどうしたら生きものと共生していくことができるか考え、地域に提案し、まちづくりの実現に取り組んでいきます。
次世代を担う子どもたちと一緒にまちづくりに取り組むと同時に、人材育成も行っている取り組みで、NECグループの中でリースやファイナンスを行うNECキャピタルソリューション株式会社が社員ボランティアと活動資金を、アサザ基金が学習プログラムやビオトープ作りのノウハウを持ち寄り協働で取り組んでいます。また墨田区や北九州市と協働で継続的に小学校での学習を進めています。

特徴


子どもたちと生きものの目になって都市空間を読み直し、生きものと共生できるまちづくりの実現に向けた可能性を見出し、都市の空間を生きものの目で読み直し、新たなまちづくりを実現していくこれまでにない取り組みです。
次世代を担う子供たちと都市の中に残る生きものの供給拠点を増やし、その間の生きものの道をつないでいくことで、生きものと共生できるまちづくりを実現していきます。
都市と農村を結ぶ生きものの道づくりまで視野を広げた学習を行います。子どもたちの意欲が強ければ強いほど、取り組み成果が上がる可能性の高い取り組みであることも特徴的です。

効果


これまで(2013年3月時点)都内を中心に30の小学校等がこの取り組みに参加してきました。
墨田区のように継続的に参加しているエリアでは、区内に学校ビオトープのネットワークができてきています。
ある学校ではトウキョウダルマガエルが見られるなど、ビオトープネットワークの効果もでてきているようです。
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このようにこの取り組みによって、こどもたちが都市空間を生きものの目で読み直す力を身につけることができるようになり、さらに、自然と共存する都市を構想できる人材育成を実現することができました。
特に東京都内では、里山地形が残されていることを活かして26校でこの構想にもとづくビオトープ池を造成してきたので、里山地形を通して生きものたちが広がっていくことができる起点、学校ビオトープネットワークが広がってきました。

活動内容


参加希望校の募集をNECキャピタルソリューション株式会社が窓口となり行います。
学校との打ち合わせからアサザ基金も参加し、ビオトープ池の造成と造成後に時間をおいてやってきた生きものを観察する授業まで、計10コマ程度の出前授業を実施していきます。
自然が豊かな地域から都市に移動してくる生物が定着できるようなるようにしていきます。
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この取り組みはこどもたちが主役なので、私たちはこどもたちの学習が最大限うまく進むように陰からサポートするのが主な活動内容です。(基本カリキュラム提示)
こども達の生きものに対する興味・関心を徐々に広げていき、最終的にはこども達の夢の実現の場(未来の都市づくりの第一歩)としてビオトープ池をこどもたち自らが作り、大人はサポートに徹する点がこの事業の特徴です。
座学以外にも校外に生きものの道を探しに行くことや既に池がある場合にはその池の生きもの調べを行い、生きものたちから既存の池の改良できる点を教えてもらいます。
そしてこどもたち自らがビオトープ池の設計を考え、実際に設置工事も行います。
図1
NECキャピタルソリューション株式会社では、未来を担う子どもたちに「自然と自分とのつながり」や「生きものを守ることの大切さ」を伝えるため、2007年からビオトープづくりを通じた環境教育プログラムを提供する社会貢献活動「わくわく子どもの池プロジェクト」に協働で取り組んできています。

位置づけ


・地域活性化:  人の生活のために特化した都市空間を生きものと共生できるまちづくりという文脈で空間を読み直すことで、都市に潜在している資源・価値を浮上させます。それを活かして自然と人間が共存する場として都市を里山化するという環境未来都市をイメージすることで、都市に人・モノ・カネの新しい動きを作り出します。
・環境教育: 都市と農村で二分化する固定された発想から、それらを生きものの道(移動・供給)で被われた同一平面として捉え、生きものの道を増やすことができる場として捉えなおすことで、都市空間をより創造的に読み直すことができるようになります。こども達は日々見慣れた都市空間の読み直しをする力(発想の転換)を身につけることで、地元に潜在する様々な価値や可能性を浮上させ、自然と共存する都市をイメージできるようにします。
・社会を変える: 子どもたちが地域の特色を知ることで、生きものの視点で都市を見直すという発想の転換により、地域の大人(PTA、自治会、企業、行政など)を巻き込みながらこの事業を進めることができ、自らの手でまちづくりを実現していくという新たな社会づくりのモデルとなります。
・企業との協働: NECキャピタルソリューション株式会社の企業理念、「Capital Solution」を通してより豊かな社会の実現に貢献する、をこの協働事業で実現するために、都市に潜在する資源(キャピタル)を活かして生きものと共存できるまちづくりの実現に取り組みます。このまちづくりの実現によって豊かな社会の実現に取り組みます。
・循環型社会: 都市に残る地形などを活かす発想を今後のまちづくりに取り入れていくことで、都市の里山化を実現していくことができます。そして里山の資源循環を活かした都市型の循環型社会のヒントを得る場となります。
・自然再生・生物多様性: 都市の里山化という発想で都市空間を見直すことで、学校や公園、街路樹などの社会資本や谷津田地形などが持つ、生きものの生息地や生きものの道としての機能を発揮させ、都市空間に自然と共生するまちづくりを実現していきます。

「湖がよろこぶ野菜たち」

霞ヶ浦の外来魚対策事業
( 生物多様性の回復と水質浄化、漁業の振興のための外来魚魚粉化・利活用、農作物ブランド化事業 )
農林水産業、加工業、流通業、小売業、消費者、NPOによる協働事業

湖がよろこぶ野菜たちとは?


霞ヶ浦で増加する外来魚の問題は解決が難しいとても大きな問題です。
この問題を解決していくためには問題を資源化するという新しい発想が必要です。
またひとつの事業で多面的な効果が期待できる取り組みによって広域的かつ継続的に対策が行われていくことが必要です。
そしてその取り組みを拡大、継続していくためには年度単位で事業が終了する行政主導による取り組みではなく、
事業を発展させるビジネスモデルを用いた取り組みを行っていく必要があります。
そのビジネスモデルをつくりあげていく取り組みが本事業です。

このビジネスモデルをつくためには、流域で生活を営む漁業・加工・農業・流通・小売・消費者・NPOなどさまざまな主体がかかわる霞ヶ浦再生に向けた新たなつながりを生み出すことが必要です。
そのつながりを作っていくのは霞ヶ浦再生を実現する仕組みから生まれる「野菜」です。この野菜が作られ、流通消費されていく、この流れから生まれる価値を商品に付加してブランド化を図り、事業を拡大、継続させていくビジネスモデルです。
霞ヶ浦再生を実現する仕組みとは、具体的には以下の図のような流れになっています。スライド1

1.市場価値のない外来魚は漁業によって捕獲されずその量は増える一方です。
そこで外来魚に市場価値を付与することで、漁業者に外来魚増加に対する抑制効果のあるまとまった量を水揚げしてもらいます。(漁業収入となる)
s水揚げ1 s水揚げ2

2.その外来魚を肥飼料(魚粉)へと加工してもらい、それを流域の農畜産業で化学肥料等の代わりに活用いただきます。
湖の魚たちは成長過程で窒素やリンといった湖の富栄養化物質を体内に蓄積しています。
水から取り出すことが難しい富栄養化物質を漁獲を通じて取り出し、活用することができます。
これは霞ヶ浦の水質改善になります。
s魚粉写真 sハス田魚粉施肥

3.できあがる農作物に上記1.2の費用を組み込み、このシステムの周知を図った上で、「湖がよろこぶ野菜たち」という霞ヶ浦再生ブランドとして地元スーパーで流通、消費者が購入、消費することで、持続可能な霞ヶ浦の再生と活性化をビジネスモデルとして実現しています。
このビジネスモデルの規模が大きくなるほど生まれる効果も増していくので、この問題の解決にビジネスモデルで取り組むことは効果的であると思われます。
この野菜が売れれば売れるほど外来魚を減らすことができるシステムです。
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特徴


この事業は従来、行政が行ってきたような外来魚の駆除にも処分や費用をかけて実施する自己完結型の取り組みではなく、市場価値のない外来魚を肥飼料へと変えること(問題の資源化)で価値を生み出すことから始まる一石何丁もの効果が生まれる取り組みです。
またこの取り組みはそれぞれ役割を担う人々の生産意欲を引き出すことができ、事業が拡大継続していくポテンシャルを持っています。
また社会の中で各主体が潜在的に持っている社会的機能を発揮することで、部分最適化ではなく、全体最適化が民間によって進む社会システムづくりにもなっています。

効果


・霞ヶ浦の生物多様性保全効果:漁師による大量捕獲による生態系レベルでの外来魚駆除効果を実現。これまでに約409tの外来魚の駆除を実現。
・霞ヶ浦の水質改善効果:外来魚の水揚げを通じた富栄養化物質の回収
これまでに窒素約10.2t、リン2.8tを湖から回収。行政による水質浄化事業(底泥浚渫)は窒素100kg回収するためにかかる費用は2161万円に対して、本事業は28万円、同様にリンは2億1千万円程に対して、137万円とケタ違いの費用対効果となっています。
・漁業振興:市場価値のない外来魚に価値を付与して水揚げを実施。これまでに約2000万円の漁業収入が生まれた。
・霞ヶ浦の水質保全効果:外来魚からできあがる肥料を流域で化学肥料の代わりに活用することで、新たに流域外から栄養が供給されることを防ぐことができます。
・環境保全型農業の推進・農業の活性化:有機農産物の規格に乗せることができない大多数の農家にも、この魚粉を使用することで、霞ヶ浦の自然再生・水質改善に参加できるシステムを提供し、環境保全型農業への意識が高まります。この事業は、以上のような一石何鳥の効果を生みだすことができる取り組みです。

活動内容


この取り組みの企画運営・連絡調整等をアサザ基金が担っています。
従来つながりのなかった多様な分野をつなげるビジネスモデルを構築し、それぞれの参加主体には本業を通じてこのビジネスモデルシステムへの参画をいただいています。
具体的には、霞ヶ浦漁業協同組合やきたうら広域漁協の漁師さんに外来魚の捕獲を依頼し、捕獲された外来魚を魚粉へと加工していただきます。(中央飼料株式会社
外来魚の水揚げ現場での運搬車への荷入れ作業などの現場作業を行います。
できた肥料はJAやさと、武井蓮根農園などの農業生産者の方に活用いただき、出来上がる産品のブランド化とその流通については株式会社カスミさん(スーパー)に協力をいただいています。
また新規にご参加いただけるパートナーの募集、開拓にも取り組んでいます。

位置づけ


地域活性化: 外来魚問題というマイナスをプラスに変換すること(問題を資源化する発想)で、霞ヶ浦の外来魚問題に流域の多様な主体が協働で取り組むビジネスモデルを構築できます。この発想の転換によって地域に新たなブランドを構築することを実現しました。
環境教育: 従来の「外来魚駆除を行っています」といった自己完結型・問題解決型の取り組みの限界を知り、真の問題解決には、多様な主体の協働による価値創造型事業による取り組みが必要であることを学習できます。また問題を資源に転換する発想を理解する場として活かすことができます。
社会を変える: 行政主導の取り組みの限界を明らかにし、民間主導による価値創造型の取り組みに転換するモデルとなる。環境問題と地域活性化を同時に実現できることを示すことで、霞ヶ浦の外来魚問題や水質改善に対してビジネスモデルの特性である事業の発展性や拡大への意欲、持続性を活かした実物大社会モデルの構築を、社会全体を視野に入れた上で行うことができます。
企業との協働: NPOが社会のホルモンとして機能を果たし、企業と多様な主体を結びつけ、企業の本業を生かした社会の問題解決に結びつけることができます。
循環型社会: この取り組みにより湖から活用できるアウトプット(漁獲や窒素・リン)を増大させ、経済効果を生み出し、行政による公共事業以上の効果を生み出すことで、社会的費用の削減といった効果を生み出します。さらに新たな社会システムの構築を通して湖をめぐる物質循環システムも構築できるようになりました。
自然再生・生物多様性: 外来種・移入種問題という従来の取り組みや行政施策の限界を踏まえたうえで、民間の発想を生かすことで、霞ヶ浦の外来魚や水質汚濁といった解決が難しい問題にも取り組むことができる実物大社会モデルとなりました。

谷津田再生プロジェクト

三井物産株式会社・株式会社田中酒造店協働事業 谷津田再生プロジェクトとは?

牛久沼の水源地である谷津田の保全を図る取り組みです。
この取り組みの舞台となる谷津田は常磐線沿線では最も東京都心寄りに残る自然豊かな谷津田ですが、谷津田周辺は市街化が進み、今も水源の森では年々宅地開発等が進むなど市街化地域に囲まれた陸の孤島のような谷津田です。
 大きな地図で見る

残っている谷津田も耕作者の高齢化の進行、地下水位が高く機械化された稲作では悪条件の場所が多くなり、耕作放棄地が年々増加傾向にあります。
さらに田んぼのまわりには人の手が入らなくなった森林ばかりになりつつあります。
これらの要因によって里山の生きものたちが暮らしにくい環境となりつつあります。
そこで、この取り組みでは 三井物産株式会社(企業)との協働による保全活動を柱として、周辺住民や就農希望者などと連携を図りながら、昔ながらの里山と人との関わりを再構築し、米作り、そして地酒造りを通して谷津田全体を保全するモデルづくりを行っています。

谷津田再生プロジェクトの特徴


取り組み現場の谷津田は都市化、市街化の波にさらされる里山保全の最前線とも言える地域です。
この谷津田は市街化地域に囲まれた陸の孤島のような環境です。
残っている自然環境を守るためには、広大なエリアの保全が必要で、それを実現するためには企業との協働だけではなく、周辺の市街地の住民の方、新規就農希望者など谷津田保全に参加していただく必要があります。
そこでこの事業を核として保全再生を進め、谷津田保全に参加する人々の輪を広げることで、広大な谷津田全体の保全を実現していきます。

谷津田再生プロジェクトの効果


里山再生
 この取り組みによって耕作放棄地となった谷津田とその周辺の森林整備など6000㎡程が再生しました。
 伝統的谷津田景観に見られたため池を復元したことで、生物多様性の保全も進んでいます。
生物多様性保全
 年々谷津田の生きもの相、質が向上し、生物多様性保全の場をして機能しています。
地域との協働
 協働先である企業から参加する方だけではなく、地域で興味のある方にも一緒にプログラムへ参加いただくことで、谷津田を保全する取り組みの輪が拡大されています。
伝統産業との協働
再生した谷津田で平地の田んぼとは異なる谷津田の特性を活かす酒米作りを行っています。
できた酒米を320年以上の歴史ある取手の田中酒造店さんに日本酒に醸造いただき、国内外でこの取り組みひとつの成果として活用いただいています。
地域活性化
 上記のような効果を通じて、谷津田を中心に様々な活性化が図られます。

s再生前 s再生後sザリガニ駆除 s開拓中sチュウサギ sオオイトトンボ

 

活動内容


田植えから、草取り、稲刈り、日本酒仕込み、日本酒蔵出しまで年6回プログラムを開催、毎回50名程度の参加者とともに谷津田の再生、保全活動に取り組んでいます。
プログラムでは、無農薬無化学肥料の稲作による谷津田の保全、手入れされなくなり笹藪となった森林整備、畑の開墾、竹藪整備、外来種対策など里山再生のための活動を行っています。

s田植え s除草 s稲刈り s仕込みs蔵出し

・地域活性化: 周辺が市街化された孤立した谷津田で、昔からこの地を守ってきた集落の方と周辺市街地に来た方が協働で保全活動に取り組むことで、新たなコミュニティづくりと都市と農村のコラボレーションによる地域活性化を進めていきます。
・環境教育:都市化の波にさらされる谷津田を、保全していくこの取り組みを自然と共存するまちづくりの視点でとらえ、こども達が様々な提案を行う学習の場として活かしていきます。
・社会を変える: 都市化の波にさらされている各地に点在する孤立していく里山を保全していくためには、新たな自然と人とのつながりを構築することが必要です。この谷津田の保全はそのつながりを構築するための新たな手法を実施する場とし、ここで得られた成果を他の場所で活かしていくことで里山の保全を図ります。
・企業との協働: 三井物産株式会社では、三井物産環境基金を通じて全国各地でNPOの活動協力や支援を行っています。この谷津田再生の取り組みは社員が地域に入り込んで活動する場として活かされるだけではなく、日本の伝統産業である日本酒づくりにも参加し、日本の伝統的な里山やものづくりを体験することで、新たな価値を創造する人材育成の場にもなります。
・循環型社会: ここは、都市住民との接点となる里山であり、都市の人々が里山で水や物質の循環を体験・学ぶことができる場となります。伝統的里山での循環をヒントに都市文化への発想の転換を促し、都市においても里山文化を活かした日本型の循環型社会づくりを始めることができるようになります。
・自然再生・生物多様性:  都市化する地域において、この谷津田を都市計画やまちづくりといった行政施策の中で自然環境を保全する場としての位置付けを確立していきます。これによりさらなる市街化が進む危険性をなくし、生物多様性保全を確固たるものとしていきます。

ハス田再生プロジェクト

NECフィールディング株式会社協働事業 「谷津田再生 レンコンづくりプロジェクト」とは?

① 概要
この事業で取り組む作物であるレンコンは、霞ヶ浦と関りの深い代表的な作物です。霞ヶ浦周辺は日本一のレンコン生産地であるため、レンコン栽培による湖への水質汚濁の負荷が大きいという課題を持っています。そこでこの取り組みでは霞ヶ浦を代表する作物であるレンコンに着目し、湖への流入負荷を削減し、霞ヶ浦再生につながるレンコンづくり、そのブランド化を通して、霞ヶ浦の再生と活性化を図る取り組みです。
霞ヶ浦で古くから栄えてきた歴史あるまち、土浦にある水源地谷津田をレンコンづくりで再生・保全します。土浦は霞ヶ浦の中でももっともレンコン栽培が盛んで、その栽培によって地域の農業が成り立っている一方で、霞ヶ浦への水質汚濁負荷が大きいとされています。そこで耕作放棄された谷津田をハス田(レンコンの水田)として再生、無農薬・無化学肥料は当然のこと、流出負荷もできる限り削減していく農法で水源地を保全していきます。さらにハス田は年間を通じて水が切れる時期がなく、(農法や収穫時期にもよりますが)冬も水を張っておく必要があるため、水の中で冬を越す生きものたちが暮らす場所として適しています。さらに水田に比べて湖との連続性が維持されているため、ハス田には湖から多くの魚類が産卵にやってきます。ハス田には、湖内では失われた浅い水域があるので、湖の生物多様性の保全・回復を図っていく場としても高いポテンシャルを有する場所であるといえます。
霞ヶ浦の水源となる谷津田では、農業の効率化が重視されて機械化が進むに従って、農地としての生産性が低い土地として耕作されなくなり、荒れ放題となって耕作放棄地が増えたことによって、水源地が持つ水の供給機能だけではなく、生物多様性の低下(メダカやホタルなどはほとんど見られなくなってきてしまっています)、里山の原風景の喪失といった問題も発生しています。耕作放棄地にはごみの不法投棄や残土の投棄など社会問題も起こってきている。そこで荒れてしまった水源地谷津田を再生させ、保全する取り組みのひとつとして霞ヶ浦を代表する水田作物であるレンコン作りにNECフィールディング株式会社のみなさんと2012年9月から取り組んでいます。

② 特徴
霞ヶ浦を特徴づける作物、レンコンづくりを通して、湖の環境保全への関心を高めていくことができる特徴を持つ取り組みです。また社員ボランティアが月1回集まって、耕作放棄された水田の再生作業から、その後のレンコン作りまで社員ボランティアが主体となって進めていく、社員参加による事業運営度が高い事業です。またつくば支店などから社員ボランティアが参加するなど企業活動のエリアと今回の取り組みの活動場所が重なるという点で初めての取り組みです。

③ 効果(見込みも含む)
・耕作放棄地の解消・・・まずは1300㎡の再生を目指します。今後の谷津田再生に生かすため、ボランティなどの人手による効率的な再生手法を作っていきます。
・生物多様性保全・・・ハス田は年間を通じて湛水状態なので、水辺の生きもののすみかとしての機能を持っています。その機能を発揮できるようなレンコンづくりを行うことで、多くの生きもののすみかとして機能するようになることが期待されます。生物多様性保全を図るこのモデルが広まることで、ハス田が持つ湖の周囲に多く分布する浅い湿地としての機能が活かされ、生きものの一大生息地となります。またこの場所は霞ヶ浦と川を通って生きものが行き来できる場であるので、それを活かし、湖と行き来する魚も呼び込み、産卵場となるなどの効果も期待されます。
・地域活性化・・・環境負荷の高いレンコン栽培で環境保全を図ることで、霞ヶ浦の主要作物であるレンコンに付加価値をもたせる新しいブランド化を進めます。これまでのレンコンづくりとは発想が異なる取り組みを行うことで、レンコンづくりに新たな流れを起こし、湖の環境保全、活性化を図ります。

s0.前 s1.生物調査s2.草刈り s3.再生s4.再生 s5.再生植え付け 成長中
収穫 生物

④ 活動内容
月1回、社員ボランティアによる現地の生物調査とフィールドの再生と保全作業を行っています。2012年秋から草刈り、土中に無数に伸びた根を抜き取るなどの再生作業に取り組んでいます。2013年春に、再生できた部分でレンコンの植え付けを行い、無農薬でレンコンづくりに取り組みました。瞬く間に多くの生きものが見られるようになりました。そして2014年春に最初の収穫を迎えることが出来ました。今後は面積の拡大と生物層の充実、質の向上を目指して現場をよく観察しながら活動を続けていきます。

⑤ 位置づけ
・地域活性化:霞ヶ浦の再生につながるという文脈づくりを通して生まれる価値を地域ブランドであるレンコンに付加することで、新しい発想に基づくコンテキストブランドの創出につながります。コンテキストブランドの創出により、多くの人々との価値の共有が可能になります。
・社会を変える:地域経済を支える主力作物レンコンに新たな価値(霞ヶ浦の再生)を付加することで、人々の価値観を変えていくことにつながります。
・環境教育: 地域を代表する資源を湖の自然とのつながりをとおして再評価することで、物語(付加価値の連鎖)を持つブランドを作ることができるという事例を学習する場となります。地域の環境保全と活性化を同時に進めることができるということを学ぶ場になります。
・企業との協働: レンコンづくりを通して、企業活動では構築できなかった地域とのつながりを作ることができ
ます。この新たなつながりから新たな展開が生まれる可能性があります。
・循環型社会: 地域の中でサービス展開する企業、そして社員が循環型社会の構造が残る谷津田でこのような取り組みを行うことで、流域内で空間展開している企業活動と里山の循環がミックスされた新しい循環型の取り組みが生まれる場になるポテンシャルがあります。
・自然再生・生物多様性: ハス田は生産の場としての機能のみが注目されていますが、年間を通じて湛水状態にあること、湖に連続した浅い湿地として捉えることができることなど、湖の生物多様性の保全を図るための高いポテンシャルを有していると考えられます。そこでその機能を今回の取り組みで証明し、流域に広がるハス田に広がることで流域の自然再生を図ります。

しょうゆで自然とつながろうプロジェクト

昭和電工マテリアルズ株式会社・柴沼醤油醸造株式会社 協働事業 「しょうゆで自然とつながろうプロジェクト」

現在更新作業中です。
① 概要
② 特徴
③ 効果(一部見込み)
④ 活動内容
⑤ 位置づけ

2012~2016年の取り組み
① 概要
霞ヶ浦の地域特性を活かした伝統産業である醤油づくりを通じて霞ヶ浦流域の自然再生を実現し、出来上がる醤油のブランド化を進めることで霞ヶ浦と地場産業とのつながりを取り戻すことで地域活性化を進める取り組みです。最先端のものづくりを行う昭和電工マテリアルズ株式会社と伝統的なものづくりを行う柴沼醤油醸造株式会社と環境NPOのコラボレーションによる新しいブランド醤油づくりの取り組みです。また伝統産業との協働によってアサザプロジェクトをより地域に根差したものにしていきます。
この取り組みは、2012年に昭和電工マテリアルズ株式会社のみなさんと荒れてしまった畑(耕作放棄地)を再生し、霞ヶ浦の外来魚を肥料(魚粉)として活用し、無農薬無化学肥料で大豆づくりに取り組みました。霞ヶ浦の外来魚からできた肥料を活用することで、霞ヶ浦の生物多様性の回復と漁獲を通じて水質の改善・漁業の活性化につながる取り組みにも寄与しています。(関連:霞ヶ浦の外来魚対策事業)収穫できた大豆は江戸時代から続く土浦の醤油蔵(柴沼醤油醸造株式会社)で醤油に醸造していただきます。醤油造りは土浦を代表する伝統産業(醤油蔵のある土浦は醤油造りにおいて江戸時代から続く関東の醤油三大醸造地のひとつです。筑波山周辺に広がる平地で大豆が栽培され、出来た醤油は舟運で霞ヶ浦、そして利根川を通り江戸に運ばれ、食卓を彩ったそうです。)であり、醤油造り、および出来上がる醤油の活用を通じて土浦を、そして霞ヶ浦を復活させるブランドとして展開していきます。そのために地元小学生とのブランドづくりの学習活動も展開していく予定です。

s高瀬舟 s醸造蔵

② 特徴
醤油造りは霞ヶ浦、土浦の地域特性を象徴するものづくりです。自然と共存する新しい社会を構築するアサザプロジェクトと古くからの伝統産業とのコラボレーションによるこの取り組みでは、きれいな水を湛え、活気にあふれる霞ヶ浦の復活を目指し、霞ヶ浦ブランドの醤油作りに取り組んでいます。そのために企業さんとの協働事業の枠組みの中に小中学校での学習までが明確に位置づけられている特徴的な取り組みです。
この取り組みの協働相手である昭和電工マテリアルズ株式会社は、霞ヶ浦から工業用水を取水している企業でもあります。こういった取り組み等によって霞ヶ浦の水質を改善することは、協働先にとっても良いことであり、協働によってお互いにメリットがあるのも特徴のひとつです。

s畑再生前 s畑再生中 s種まき s草取り s収穫 sできた大豆 s醤油仕込み 製品化
ビン

③ 効果(一部見込み)
・耕作放棄地対策: 6000㎡の耕作放棄地となった畑の再生ができました。カラスのたまり場となっていた環境が改善され、周辺に畑を持つ農家にも喜ばれています。
・霞ヶ浦の生物多様性保全と水質改善、漁業振興効果:湖の外来魚を捕獲することで出来上がる肥料を活用することで、霞ヶ浦の生物多様性保全と水質改善に寄与します。
・畑の生物多様性保全:環境指標生物として扱われることの多い歩行虫のトラップによる調査結果でも、再生前後で個体数が2倍に拡大するなど生物多様性の向上が見られます。
・里山の原風景の再生:畑やため池(ビオトープ))、草原や林を連続した環境として整備することで、里山の生きものが暮らせる原風景が再生できます。
・環境教育:参加者の環境学習効果はもちろん、できあがる醤油を活用する地域学習、環境学習を醤油醸造場周辺の小学校で行うことで、地域で脈々と行われてきた伝統的なものづくりや企業との協働や生きものについて学ぶ場として活用されます。
・福祉への寄与:できあがる醤油の箱詰めなどに参加いただくことで、社会参画の場となっていきます。
・地域活性化:上記のような効果を通じて、畑を中心に様々な活性化が図られます。sビオトープ造成2 sビオトープ sginyanma

 

④ 活動内容
耕作放棄され10数年がたった畑を社員ボランティアとともに再生するところから取り組み始め、プロの農家でも難しいとされる大豆の無農薬栽培に取り組みました。無農薬で栽培するために畑にビオトープ池を整備し、害虫の捕食者を誘致することやウサギやカラスなどの食害等を減らすために畑周辺部や隣接地の整備にも取り組んでいます。以下、活動履歴です。
2012年3月 耕作放棄地の再生、ビオトープ池の整備(畑の表面を覆うツル植物の除去、雑木伐採など)
6月 大豆の種まき、周辺部の笹藪の整備
7月 畑の草取り、霞ヶ浦での自然再生活動
11月 大豆の収穫、新たなビオトープ池の整備、周辺部の笹藪の整備
2013年3月 醤油の仕込み
2014年3月 醤油の蔵出し、仕上げ作業

s周辺林整備前 s周辺林整備中 s周辺林整備後

⑤ 位置づけ
・地域活性化: 伝統産業である醤油造りに霞ヶ浦再生という新たな価値を吹き込み、ブランド価値を高めることで、失われつつある地域の誇りを取り戻し、活性化につなげていきます。伝統産業は霞ヶ浦や地域、歴史を象徴するもので、それが持つブランド力やネットワークも活かすことで、新たに自然や霞ヶ浦、地域や人とのつながりを生み出していくことができます。
・環境教育: 地域の特性を象徴する伝統ある「ものづくり」を学ぶことによって、こどもたちが地域の伝統を活かした自然との共存と活性化を目指したまちづくりの発想を学ぶことができるようになります。
・社会を変える: 真の社会変革は古いものを捨て去るのではなく、古くからあるものに新たな価値を見出すものです。地域に深く根を張った伝統産業が霞ヶ浦再生という目標を地域の人々と共有することで、新たな結びつきと物語(コンテキスト)を得ることができます。
・企業との協働: 企業活動において霞ヶ浦とのつながりがある昭和電工マテリアルズ株式会社は伝統産業である醤油づくりに参加することで、地域特性を活かした地域貢献事業を行いたいと考えています。アサザプロジェクトは伝統産業が持つブランド力やネットワークを活かしてさらなる取り組みの拡大を図ることができます。
・循環型社会: 最先端技術が持つ効率と機能を活かすだけの循環型社会の構築は地域の文化を失わせるものとなります。伝統産業が持つ地域特性や資源、知恵や技術、人材を最大限に活かし、高付加価値のものづくりを行うという理念や考え方を、地域に根差した循環型社会の構築に活かしていきます。
・ 自然再生・生物多様性: 伝統産業は長きにわたりその土地で行われてきたので、その土地の自然や生物多様性とつながりがあります。伝統産業に霞ヶ浦再生につながるコンテキストブランドが創出されることで、地域の自然とのつながりが価値として浮上し、地域文化に根差した自然再生を進めることができます。

人も河童も喜ぶWin Win型循環社会の構築事業

キヤノンマーケティング株式会社協働事業 人も河童も喜ぶWINWIN型循環社会構築事業~未来につなぐふるさとプロジェクト~

① 概要

この取り組みは、人も自然もWINWINの関係になる新たな農業モデルづくりです。これまで生物の生息地としてあまり重要視されてこなかった畑地における生物多様性の保全・向上を図ることによって、有機農作物の生産だけではなく、生物多様性保全も同時に実現することで農作物の付加価値の向上を図る取り組みです。

霞ヶ浦流域の内、約20%は畑地で、畑での営農活動による肥料分や農薬の流出は霞ヶ浦に対する負荷要因の一つとなっています。霞ヶ浦とその流域を再生していくためにはこれまでの収穫量重視の農業モデルではなく、自然環境保全や循環型、高付加価値型の新たな畑作の農業モデルが必要であり、そのモデルづくりが本事業です。

具体的には耕作されなくなり荒れてしまった畑(耕作放棄地)を再生し、霞ヶ浦の外来魚を肥料(魚粉)として活用し、生物多様性保全と有機農業をミックスした新たな農業モデルづくりに取り組んでいます。また収穫できた作物を活用し、環境という文脈でつながる人の輪を活かした新たなものづくりに取り組むことで、人も自然もWINWINの関係になることで霞ヶ浦の再生、活性化を図っています。あげせんべいづくりで出る廃食用油は牛久市の循環型社会づくりの取り組みであるバイオマスタウン事業の中で廃油の燃料化・利活用事業に活用いただいています。そして、人も自然もWINWINになるこの場を、近くの小中学校では自然や生物多様性と人とのかかわり、そして循環型社会について学ぶ場として活用しています。

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この取り組みはキヤノンマーケティングジャパン株式会社およびそのグループのみなさんと日本各地で行われている「未来につなぐふるさとプロジェクト」の活動の一つとして協働いただいています。

② 特徴

この取り組みに参加、関わる人や自然がこれまでよりもよい状態、WIN-WINの関係になれることがこの取り組み最大の特徴です。湖で外来魚を捕獲する漁師、ここで取れた作物を加工する商店、パッケージングを行う福祉作業所など毎年様々なWINWINの関係が生まれています。

畑を農地として再生することを目的とするのではなく、畑を含む里山そのものを再生することが目的です。有機農作物づくりは必ずしも生物多様性保全に効果があるわけではありません。この取り組みでは無農薬栽培と生物多様性保全を同時に実現するために、畑の中にビオトープを設置することや隣接する耕作放棄地を草原として管理、さらに雑木林の整備までの一見畑作とは無関係の取り組みまで行っています。これらの取り組みによって、カエルやトンボ、カマキリなどの捕食者を呼び込み、害虫の発生を抑えることができるため、無農薬栽培が可能になります。また昔の里山は、畑の周辺に防風林や平地林、ため池があり、それらが作り出す多様な環境(モザイク構造)を生きものたちが利用することで豊かな生物多様性があったものと考えられています。この伝統的里山の文化を活かした畑作を目指します。

s草地再生前 s草地再生中 s草地再生後 sビオトープ sビオトープで羽化するアキアカネ sビオトープで産卵中のクロスジギンヤンマ

③ 効果

・耕作放棄地対策: この取り組みによって地域との関係構築が進み、畑とその周辺の耕作放棄地の解消や整備が進みました。

・霞ヶ浦の生物多様性保全と水質改善、漁業振興効果:湖の外来魚を捕獲することで出来上がる肥料を活用することで、霞ヶ浦の生物多様性保全と水質改善に寄与します。

・畑周辺の生物多様性保全:人の手による除草だけでは雑草を完全には取りきれませんが、畑に草が残ることで水分が保持され、土が乾燥しがちな畑ではなかなか見られないカエルやヘビ、カヤネズミも見られるようになりました。生物多様性が向上することで、年々作物の被害は少なくなり、安定した収穫量を見込めるようになりました。

・里山の原風景の再生:畑やため池(ビオトープ))、草原や林を連続した環境として整備することで、里山の生きものが暮らせる原風景が再生できます。

・環境教育:参加する人だけではなく、近隣の小中学校で循環型社会や企業との協働や生きものについて学ぶ場として活用されています。

・福祉との協働:農作物の加工後の袋詰めなどの作業を福祉作業所の方々に協力いただくことで、社会参画の場となっています。

・地球温暖化対策:ひまわりや菜種を栽培し、その油を利用したあとに残る廃油を牛久市のバイオマスタウン事業の中で廃油の燃料化・利活用事業に活用いただき、地球温暖化防止やエネルギーの地産地消にも寄与しています。

・地域活性化:上記のような効果を通じて、畑を中心に様々な活性化が図られます。

④ 活動内容

社員と家族のボランティアにより再生した畑で油がとれるヒマワリやナタネを中心に、ソバや小麦などの作物の栽培に取り組んでいます。毎年霞ヶ浦流域や茨城の地域特性を活かす、新しいものづくりに取り組んでいます。畑作以外でも生物多様性の向上やその調査のためにビオトープを設置することや近接した耕作放棄地の整備、ススキ野原づくりやニホンミツバチの誘致にも取り組んでいます。年4回の社員ボランティアの参加をベースに活動を進めています。

s種まき s菜の花 sソバ sソバ打ち

⑤ 位置づけ

地域活性化: 霞ヶ浦の環境問題は様々な要素が絡み合って存在しています。このような問題を資源化することで、逆に湖を巡る様々な要素を結び付けていきます。同時にこの事業に関わるすべての方がWIN-WINの関係となるように本事業を進めることで社会問題、環境問題を解決しながら地域の活力や主体性を引き出していきます。

環境教育: 環境問題の根本からの解決を図るためには、問題をめぐる利害の対立を乗り越える新たな結びつきを生み出す発想、WIN-WINとなれる関係づくりが必要です。本事業の現場や人やモノ、自然のつながりの学習を通して環境問題を解決していくための柔軟な発想や創造的な手法を身につけた人材育成ができます。

社会を変える: 問題を資源化する逆転の発想により耕作放棄地をWIN-WIN型の取り組みによって再生していくモデルを示すことで、新たな社会システムのモデルを作ることができます。一つの事業から多数の効果を生み出す市民事業のモデルとなります。

企業との協働: キヤノンマーケティングジャパン株式会社が各地で取り組む「未来につなぐふるさとプロジェクト」の活動の一つですが、この霞ヶ浦での取り組みは、地域にWIN-WINの関係、成果を生み出し、従来の社会貢献活動の枠を超えた取り組みを現実のものとしていきます。

循環型社会: 霞ヶ浦の環境問題を問題群や問題系として捉え、資源化するという発想でつながりを浮上させ、耕作放棄地となってしまった畑を再生し、地域社会の中でもう一度位置づけを行い、多様な人々が出会い協働する場、多様なものを生産できる場、生物多様性保全の場といった価値を創造することで、循環型社会を実現していくために必要な地域のつながりや結びつきを生み出すWIN-WIN型の取り組みを行っています。

自然再生・生物多様性: 生物多様性保全の場として位置付けされてこなかった畑地において、人にも自然にもWIN-WIN型のこの取り組みを広げていくことで、流域の2割を占める畑地が、生物多様性保全の場として機能することができ、流域全体の自然再生を進めることができます。

 

 

 

 

1日きこり

①    「一日きこり」とは

霞ヶ浦流域面積の約2割まで減少している森林・里山の保全は、霞ヶ浦の水質を考える上で急務の課題となっています。そこでボランティア活動で手入れし、水辺の保全を図るプロジェクトです。

②    「一日きこり」の特徴・意義

森林の土にしみ込んだ雨水は、1000ヶ所以上ともいわれる谷津田でわき出し、水田や川を通って湖へと注いでいます。森林は、かつては薪炭やほだ木として利用され、手入れされていましたが、燃料革命や生活様式の変化により間伐や下草刈りなどの管理が行き届かず、とても荒れています。林内は薄暗く、住んでいる生きものも少なくなっています。その森林をボランティア活動により手入れし、間伐材は湖岸の植生保全事業に利用するという他に例のない取組みです。山がなく平坦な地形である霞ヶ浦流域では開発が進み、森林も流域面積の2割まで減少しています。減少に歯止めをかけ、保全の意義を理解してもらう貴重な機会になっています。

③     「一日きこり」の効果

・保全する森林はアサザプロジェクトが行う谷津田再生の場所と隣接しています。連続的に保全する事によって、生きものの道がつなががるので生きもの多様性が向上します。

・活動によって再生された森林の林床では、植物の種類も増加し、タカ類やフクロウなどの採餌が見られるようになっています。

・参加者とっては、豊かな自然の中で汗を流すことによって日ごろのストレス解消になっています。

・手入れによって見通しの良くなった森林では不法投棄も減り、地域にとても歓迎されています。

09_一日木こり前 ➔ 09_一日木こり後

④ 「一日きこり」の活動内容

主に一般市民のボランティアが定期的に森林の間伐、下草刈りなどの手入れを行っています。また、作業に関連して炭焼きやキノコの原木作りを組み入れたり、作業場所周辺の自然観察などのプログラムを取り入れ、大人も子供も楽しめる内容になっています。

地域活性化・・・不法投棄の場になるなど、見捨てられていた里山に手が入りました。作業で発生した間伐材等は霞ヶ浦再生事業に利用され雇用を創出しました。

 

環境教育・・・手入れされた森林・里山は学校教育の場として利用されています。里山は古くから人と自然が関わってきた伝統的な場所であり、日本の原風景です。手入れされた里山が全国的に減る中、このような学習の場があることは非常に貴重です。

 

社会を変える・・・水源地の森林を手入れして出た間伐材を湖の再生事業に利用するという画期的な方法で、湖と森林をつなげることができました。取組みを進め、流域全体の自然再生を実現させます。

 

企業との協働・・・流域各地の様々な企業やボランティアと協働で行っています。また、谷津田の再生を行っている企業も周辺の森林に取組みを広げつつあります。

 

循環型社会・・・手入れによって出た間伐材を下流の湖で使う事例ができました。林業の課題である間伐材の活用が実現しています。

 

自然再生・生物多様性・・・粗朶など間伐材の利用を促すことによって広範囲の森林の保全・再生が可能です。森林と社会の様々なつながりを作る事が流域全体の生物多様性の保全につながると考えています。