NEC田んぼ作りプロジェクトwithアサザ基金

2003年から日本電気株式会社(NEC)とアサザ基金と協働で「NEC田んぼ作りプロジェクト」を行っています。

従来から取り組みが困難な課題とされてきた霞ヶ浦流域で、荒廃の進む水源地である谷津田を再生し、くい止めることに初めて取り組んだのが、アサザ基金とNECのこのプロジェクトです。
このプロジェクトは、霞ヶ浦流域の自然再生における先駆的なモデルとなっています。
耕作放棄された谷津田の事前調査から、計画作り、復田作業、米づくり、地場産業と協働による酒造りに取り組んでいます。

現在の田んぼの様子 NEW!!3月20日UP!

NEC田んぼPJ動画はこちら

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プロジェクトの概要

霞ヶ浦は大きな流入河川が無く、水源地は流域に広がる1000を越える谷津田となっています。
谷津田は、森に育まれた豊富な水が利用できる反面、農業の機械化が進む中で、湿田・深田が多く、生産効率が悪いため、作業がしにくく早くから放置され、その大半が荒廃しています。

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2003年から石岡市東田中地区で谷津田再生活動を実施、アサザ基金が1996年以降長年構想していた水源地再生のブランド地酒をつくるプロジェクトが実現しました。

そして、2010年には、それまでの経験(3,712㎡)を活かしてより大規模な谷津田全体(22,965㎡)を再生する事業を牛久市上太田地区で着手しました。
当プロジェクトの上太田の谷津田は、耕作放棄され、長いところで40年の年月が経ってしまいました。再生は谷津田1本(谷筋全体)の23反、全長1000mを対象とします。

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この谷津田を、トキの生息環境を再生するための実物大モデルとして位置づけ再生します。再生した田んぼで月に1度のトキの餌量調査や、生物調査を実施することで、数値化された効果を元に「再生モデル」をつくり、牛久市内に多数点在する谷津田保全、ひいては霞ヶ浦流域全体の谷津田保全につなげます。

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トキが舞う谷津田という霞ヶ浦再生への夢を共有し、農業の機械化が困難な谷津田を、無農薬・無化学肥料の米づくりを行うことによって生物の多様性を高めようと、社員ボランティアが自ら、生物調査をはじめ問題点抽出などの計画の策定、手作業による復田作業、昔ながらの米づくり、地元の酒蔵での酒造りに一貫して参加し、付加価値のある酒米・日本酒づくりを行っています。
「100年後にトキの舞う霞ヶ浦を」という目標を共有し、夢の実現に向けて挑戦し続けています。

プロジェクトの特徴

・NECの本業であるIT分野(気象情報を計測・蓄積・配信するネットワークセンサーを霞ヶ浦の自然再生に活かす、アサザ基金とNECのビジネスモデルづくりを通して始まりました。
・そして、取り組みが困難な課題とされてきた耕作放棄された谷津田に、新しい社会的価値を見いだそうと、IT企業とNPOが連携して初めて挑みました。

NECのHP内 田んぼづくりプロジェクトページ

http://jpn.nec.com/community/ja/environment/tanbo.html
(外部リンク:上記をクリックすると、NECのホームページへ飛びます)

地酒づくりが谷津田を中心に循環することで、谷津田の自然、地元農家、地域企業(酒蔵)に新しい環が生まれ、持続可能な社会システムへと成長しました。この取り組みをモデルに、他の地域にも、同様の取り組みが発展するきっかけを作りました。

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・再生は谷津田1本(谷筋全体)の23反、全長1000mを対象とし、社員ボランティアが自ら、生物調査をはじめ問題点抽出などの計画の策定、手作業による復田作業、昔ながらの米づくり、地元の酒蔵での酒造りに一貫して参加し、付加価値のある酒米・日本酒づくりを行っています。
・社員ボランティアが、さらに経験を重ね、より主体的に再生活動を行っていく、「達人コース」が生まれました。達人コースでは、谷津田を構成する水の湧く森や竹林の整備、試験的な酒米の栽培などを行っています。

プロジェクトの効果

・この取り組みによって、谷津田でも無農薬・無化学肥料で健全な稲がとれることがわかり、里山本来の生き物が帰ってきました。
・社員自らが、耕作放棄地の状態と、復田開始後の四季を通じた生きもの調査を行いました。再生後の谷津田では様々な生きものが見られるようになり、中でもトンボの種類や数に著しく変化が現れました。

アオモンイトトンボ2_sホソミオツネントンボペア_sハグロトンボ1_sアオモンイトトンボ2_s
ノコギリクワガタペアとゴマダラチョウ_sキタテハ_sカブトムシ_sマダラガガンボ_s
ツボスミレ_sコオイムシ_sオオカマキリに食べられるアブラゼミ3_s
ニホンアカガエル_sシュレーゲルアオガエル産卵ペア2_sシュレーゲルアオガエル卵塊2_sトウキョウダルマガエル_s
ニホンアマガエル_sアズマヒキガエルペア産卵接写_sキジ(オス_sカヤネズミ_s

・トキが暮せるだけの豊かな生態系を取り戻すことを目標に、毎月生物量の調査(単位面積あたりの生物量調査)を行っています。その評価をもとに、霞ヶ浦流域単位での生物多様性ビジョンを広げていくことができるようになりました。
・この取り組みを通して、流域の酒造メーカーが日本酒の新たなブランド化へ、道筋をつくることが出来ました。
・のべ9,500人の社員・家族が、谷津田再生の体験を通して、実際に生物が戻ってくる様子を目の当たりにすることは感動的でした。

・参加者が普段食べているお米を実際につくる活動に参加することで、参加者の生物多様性への意識高まり、景観の復元につながる成果を実感することは、環境意識の向上につながりました。
・参加者の中から達人コース(主体的に谷津田再生の取り組みを推進する人材)の育成にも発展しました。
・活動のつながりが、地元の酒蔵や、知的障害者授産施設など、他の企業へ広がりました。

プロジェクトの活動内容

<計画の策定>
まず荒廃した谷津田が、どのような問題を抱えているのか調べます。実態評価、生物調査、荒廃した谷津田の問題点の抽出といったプロセスを経て、1000mにもわたる谷津田全体をどのように再生していくのか長期計画を立てました。そして、以下の作業に取り組みながら、継続的なモニタリングも実施して行きます。
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<復田作業>
復田作業は、社員ボランティアの人海戦術で取り組みます。
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<米づくり>
種籾、育苗から無農薬にこだわります。そして、手作業での田植え、人力での草取り作業を行います。草取り後に鑑賞できるヘイケボタルは、守り続けてきた谷津田再生の証でもあります。稲刈りや脱穀も手作業です。昔ながらの道具を用いた脱穀作業は、大変ですが楽しい収穫の一時です。
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<里山の整備>
谷津田周辺の森林荒廃が進みつつあります。そこで、竹林や雑木林の整備も併せて行います。谷津田に連続した環境である森林の保全も生物多様性の視点で取り組んでいます。
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<トキのえさ量調査>
100年後にトキが舞う谷津田を目標にし、トキが生息できる環境にどのくらい近づいているか、単位面積あたりの生物量を継続して調査しています。
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<酒仕込み、蔵出し>
地元白菊酒蔵の酒造りで、社員自らも体験しながら仕込み「愛酊de笑呼」が完成します。また、瓶詰め後のいくつかの作業は、知的障害者授産施設「あけぼの荘」に委託しています。
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それでは、具体的な活動を見てみましょう!現在の田んぼの様子

プロジェクトとアサザプロジェクトの位置づけ

地域活性化
一度は価値が失われ耕作放棄された谷津田に、地域、企業、NPOが協働することで、新しい価値を創造する最初の事業になった。

企業との協働
アサザプロジェクトが展開する霞ヶ浦流域レベルのネットワークを活かした技術展開(ネットワークセンサー)を、NECと共同開発する取り組みから、水源地である谷津田の保全システムの構築に発展した。

環境教育
普段、都会で働くNEC社員が、事前調査・計画の策定・復田・米づくり・地酒造りという価値創造的な取り組みの全プロセスを体験する。環境意識が啓発され再生現場で得た新たな発想が生まれ、新たな視点の技術開発に繋がる。

循環型社会
地域に根ざした伝統的循環型社会を代表する谷津田の再生を通して、IT企業と共に伝統を活かした循環型社会の構築を行うことが出来る。

社会を変える
大手企業とNPO、地場産業がそれぞれの持ち味を活かしながら協働し、環境保全や地場産業振興を進めることで、解決が困難とされていた環境問題への解決策を示すことが出来た。先進的な取り組みとして、社会にも大きなインパクトを与え続けている。

自然再生・生物多様性
一本の荒廃した谷津田全体を再生対象とした、生物多様性保全の実物大モデルとなる。このモデルを、流域全体の谷津田再生に広げていくことで、霞ヶ浦の生態系を保全し、トキが普通に見られる環境を目指している。

 
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