アサザプロジェクトでは、霞ヶ浦や牛久沼の流域各地で谷津田の再生に取り組んでいます。
これは、流域各地で行っている谷津田再生プロジェクトに参加いただいているボランティアの皆さんに配布しているパンフレットです。
谷津田の保全再生は、自然環境や生物多様性や景観だけではなく、これからの食糧確保や防災などを考えたときに重要な課題となることを解説しています。
アサザプロジェクトでは、霞ヶ浦や牛久沼の流域各地で谷津田の再生に取り組んでいます。
これは、流域各地で行っている谷津田再生プロジェクトに参加いただいているボランティアの皆さんに配布しているパンフレットです。
谷津田の保全再生は、自然環境や生物多様性や景観だけではなく、これからの食糧確保や防災などを考えたときに重要な課題となることを解説しています。
さとやま交流事業による都市災害時連携の提案
今後予想される首都直下型地震などの大都市災害時には、都市部の住民の大規模な移動に伴う避難先の確保が大きな課題となっています。多くの都市住民が長期化の予想される避難生活への不安を抱えています。さらに、感染症への具体的対応(密集した環境からの一時的避難)も求められています。私達は、都市住民の避難先として都市近郊農村(霞ヶ浦流域)で急増する空き家を避難場所として活用することを提案します。本提案では、平時から都市住民が地元住民との交流を重ねながら地域が抱える課題解決に恊働で取り組み、互いにウインウインの関係をつくり、災害時の良好な受け入れ態勢の整備(新たなコミュニティづくり)を広域的に展開していくことを目指しています。
1.予想される都市部からの大規模な避難移動への対応
災害発生前後には、大規模な人の移動も想定されており、避難移動する人々への支援体制の整備が急がれます。
災害発生時を想定した避難経路の確保(災害時を想定した避難訓練や支援体制の確認、連絡網等)が特に重要となります。
避難者には、避難に必要な情報や支援を行なうサービスの提供が必要となります。そのためには、避難先とする地元住民や自治体による支援体制の整備も不可欠です。
2.都市部からのアクセスが可能で、長期間自立的な避難生活を可能とするバックアップ体勢を有する霞ヶ浦の里山環境の活用を提案します。
予め長期滞在が可能な避難場所が確保され避難経路が想定されていることは、当事者にとって大きな安心を与えてくれます。
本事業では、首都圏内に位置し都市型の災害が及ばない立地にあり、避難者が移動可能な平坦地にあり、水や食料、燃料等の避難の長期化に必要な資源の確保が容易な霞ヶ浦流域の農村集落への避難誘導を提案します。
これらの対象地域は、首都圏50キロ圏周辺に位置しているため、避難機関も必要に応じ、避難者が都市部の自宅や勤務先にアクセスすることも可能です。また、自給可能な環境をベースにしたテレワークも可能となります。
避難先とする里山集落は、水源地谷津田に面した台地上にあり古くから人が住む安定した環境にあります。近年空き家が増加している地域でもあります。
3.霞ヶ浦流域の避難者受け入れ可能な環境とポテンシャル
霞ヶ浦流域の水源地谷津田に位置する各集落は近年過疎化が進み空き家が目立ち、田畑や森林の荒廃が進むなど多くの集落が存続の危ぶまれる状況にあります。その背景には、農村の人口減少、高齢化、少子化、コミュニティ機能能の低下などがあります。従来は閉鎖的であった農村集落も危機感を抱き、近年は外部からの支援や参加の受け入れに積極的になっています。
水源地であることから災害時にも、良質の水が確保できます。周囲に里山があるので燃料も確保できます。田畑もあり食料も確保できます。予め地域の住民との関係づくりを行なっておくことでコミュニティの支援も受けられます。
4.霞ヶ浦再生という大きな目標で多様な主体が繋がり合える場を生かす。
アサザ基金では、牛久市内の過疎集落で空き家の古民家を活用して地域住民や小中学生の参加のもと地域再生の取り組みを行なっているところです。目的のひとつは霞ヶ浦再生です。集落が接している谷津田や里山が霞ヶ浦の重要な水源地であり、これらの水源地の保全再生を流域全体で実施していかなければ霞ヶ浦の保全再生も実現できないからです。
しかし、古くからこの水源地に住み着き環境を維持してきた集落の暮らしがこのまま崩壊してしまえば、水源地の荒廃を食い止めることができず霞ヶ浦の環境悪化がさらに進み、上流部(水源地)の荒廃に伴う下流部での洪水リスクの増大などの負の連鎖が広がることが懸念されます。もちろん、水源地は里山の生物に残された貴重な生息地であり、これらの大規模な荒廃は生物多様性に甚大な影響を及ぼします。
霞ヶ浦再生への願いを多くの人々が共有しています。本事業の広域展開に向けての社会的なコンセンサスはすでにあり、さらに各地域が抱える課題解決と合わせ木目細かに対応していくことができれば、災害時避難者受け入れに空き家等を活用することへの地域理解も得やすくなります。
本事業は、25年間にわたり霞ヶ浦流域各地の水源地谷津田で集落住民と都市住民、御社等の企業、行政と行なってきた水源地再生事業の実績と信頼関係を生かしながら進めていくことができます。
5.地域課題に共に取り組む。平時からの地域づくり活動への参加によって、災害時の良好な避難環境を確保することができます。
先述したように、霞ヶ浦の水源地では様々な問題(空き家、人口減少、コミュニティ機能の低下、耕作放棄地、森林荒廃、生物多様性の低下、祭りや伝統行事の衰退など)が生じています。地域への避難を希望する都市住民が、平時から集落住民との交流を深め、避難場所とする空き家の住環境整備と合わせて、地域課題の解決に参画することで地域の住民との信頼関係を築いていくことができます。
例えば、霞ヶ浦流域の水源地では、放置竹林や森林荒廃の拡大が問題化していますが、これらの竹林や雑木林は災害時には貴重な燃料源として、調理や風呂、暖房などに活用可能です。周囲の竹林や森林の整備を行ないながら、空き家にカマドやストーブ、風呂などの整備を行い、災害時に可能な暮らしのノウハウを地域の人達から学ぶ交流イベントなどを定期的に行なっていきます。
また、耕作放棄地を整備して農作物栽培の体験を行いながら、避難時の食料確保の環境づくりを行ないます。子どもの参加が減って存続が危ぶまれている祭りや伝統行事への参加なども。
6.日常的な交流を維持する・谷津田米などの定期購入を通して交流を深める。
定期的なイベント等の参加ができない人達には、この事業を通して再生する霞ヶ浦の水源地谷津田再生地で収穫された無農薬栽培の米(谷津田米)の定期購
入を通して地域との交流を深めてもらう。米の他に、集落で収穫されるリンゴなどの果物やカボチャやジャガイモ、サツマイモなどを提供します。谷津田の米を購入してもらうことで、霞ヶ浦の水源地谷津田の再生がより進むことになり、地域に貢献できます。
7.都市と農村とのウインウインの関係づくりで広域的な効果を生み出します。新しいコミュニティビジネスを社会に実現します。
首都直下型地震や大規模洪水などの都市災害への対応も、大型湖沼である霞ヶ浦の流域保全対策も、取り組みの広域展開が必要となります。本事業では、都市と農村の住民同士が、それぞれが抱える問題課題を恊働で取り組む場を創り交流を深め、共に危機を乗り越える体制(新たなコミュニティづくり)を、広域(霞ヶ浦流域全体)に展開していきたいと思います。
25周年を迎えたアサザプロジェクトに参加してきた様々な企業や各種団体、市民、自治会、行政機関等にこの提案を行い多様な主体の恊働による事業展開を目指します。
霞ヶ浦流域全体への展開を視野に、また、都市部からの避難経路を分散するため、モデルとして流域の西部、中央部、東部からそれぞれ一カ所、桜川市、牛久市、鹿嶋市の水源地谷津田集落での事業から開始していきます。
2020.3.16
認定NPO法人アサザ基金
代表理事 飯島 博
霞ヶ浦再生と地域活性化を同時に行う古民家(空き家)活用プロジェクト
古民家(空き家)を拠点に流域保全のコミュニティビジネス展開を目指します。
多様な人々が協働で地域や社会の課題と取り組む拠点として古民家を活用します。
過疎地域が抱える課題に地域内外の多様な主体が協働で取り組むことで、過疎地域を活性化するモデルを、茨城県牛久市島田町で当団体が借りた古民家2軒を拠点に実施します。当地域は、少子高齢化が進み独居老人の増加や空き家の増加、耕作放棄地や放置竹林の増加などの問題を抱えた典型的な過疎地域です。
参加対象は、地域の住民や小中学校、障がい者施設、ニートや引きこもりの就労支援組織、企業等を計画しています。これらの多様な人々と共に新たなコミュニティを形成し、古民家カフェや民泊、シェアハウス、ホースセラピー、セミナー、イベント開催、放置竹林整備、森林整備、耕作放棄地対策などを分野の壁を越える展開を、小中学校の総合学習「地域課題の解決に向けた学習」を軸に空き家だった古民家をどう活用していくかを地元の中学生が考えました。
地球温暖化防止・生物多様性保全・循環型社会のモデル 里山への働きかけを取り戻す。
本事業では、古民家カフェやシェアハウス、イベントを通して、地域内外の多様な人々や組織を引き寄せ、地域のコミュニティの活性化や放置竹林、森林整備、耕作放棄地、空き家等の対策を行っています。竹や木など地元の資源を燃料や食器、竹細工などに有効活用し、脱化石燃料、地球温暖化防止、脱プラスチック等の取り組みを推進します。都市部の街路樹の落ち葉を使い腐葉土を作り、当地域で有機農業に活用するなど都市部住民との交流事業(オーガニックハロウィン)も推進しています。
古民家に隣接する霞ヶ浦の水源地谷津田の再生を行い蛍等の生物多様性を復元します。また、本事業を契機にして、島田町内で当団体が実施している無農薬無化学肥料栽培による野菜や米などを販売、シェアハウスや古民家カフェや民泊などで活用します。
昔の暮らしを体験する場に
竹や薪で炊飯をしたり、五右衛門風呂に入ったり、田植え稲刈り、畑仕事、森や竹林の手入れなどの昔の暮らしを体験する場として、古民家を活用します。牛久市内をはじめ東京など都市部の学校や企業を誘致します。ウッドボイラーも導入。
・里山で馬や山羊、ニワトリなど動物と触れ合う場に。
古民家では、馬2頭、山羊4頭、鶏18羽を飼育しています。これらの家畜の餌は全て地元の耕作放棄地の草原や田畑、放置竹林などから調達しています。糞を田畑の肥料として有機農業に活用しています。
馬や山羊によって耕作放棄地の効率的かつ広域的な整備を実現させていきます。森の中の散策路の整備やホースセラピーの実施なども行なっていきます。
・水源地保全再生のコミュニティビジネスを霞ヶ浦流域各地に広げていく拠点に。
これらの取り組みをコミュニティビジネスとして確立し、都市から人を呼び込み、アサザ基金が霞ヶ浦流域各地で展開している水源地谷津田再生地域へと普及させていきます。将来的には、各地域のコミュニティビジネスをネットワーク化しコンソーシアムを設立するなど、霞ヶ浦流域の広域的かつ総合的な保全システムへと発展させ、霞ヶ浦再生に向けて流域レベルでの循環型社会の構築へと繋げていく計画です。
・首都直下型地震や洪水など災害時の都心部の避難場所として
水や燃料、食料の確保が可能な条件を、古民家を中心に作り、非常時に都市住民が長期避難できる環境づくりを行います。また、非常時にはサテライトオフィスとして機能させていきたいと思います。現在、古民家にテレワークの受け入れ準備も進めています。古民家でのイベントを通して、平時から都市住民と地元住民との交流を深め、非常時の避難体制の準備を進めていきます。
本事業をカリキュラムに組み込み、生徒が地元住民からの聞き取りや実態調査を行い放置竹林対策やカフェ、イベント等の企画づくりから参画していきます。対象の小中学校は、コミュニティスクールに指定され地域住民が参画する協議会が設置されています。本事業は、この協議会と連携して実施する計画です。本事業によって、地域と一体化した学校運営の先進モデルをつくることができます。
縦割りの壁を越え総合的かつ効率的な事業を実現させる能力が、これからの社会では求められます。本事業は、社会の注目を集めている過疎化や高齢化、耕作放棄地などをテーマとして、新たな発想(問題解決型から価値創造型への転換)を提供することができると確信しています。これからの社会が直面していく様々な課題にある背景や問題の本質を早くから学ぶことで、問題解決能力を持つ優秀な人材を育成することが期待できます。
〇認定NPO法人アサザ基金の活動概要
日本で二番目に大きな湖霞ヶ浦とその流域の環境改善を進め、持続可能な循環型社会を構築するため、環境保全と地域づくりを一体化した取組みを1995年から実施してきました。広大な湖と流域をカバーする取組みを実現させるために、農林水産業や地場産業、企業、学校、市民団体、行政等の多様な主体と様々な事業を興し、社会の縦割りの壁を越えた協働の輪を広げてきました。これまでに、延べ34万人が参加、取組み(縦割りの壁を溶かし多分野に事業展開できる社会的起業家の育成)を広げるために、全国各地350校以上の小中学校で出前授業(地域に根ざしたビジネスモデル作り、地域ブランドづくり、まちづくりの提案など)を行ってきました。常に新しい領域への挑戦を続けています。
霞ヶ浦に植生帯を再生する事業に、170以上の小中学校、延べ15万人を超える小・中学生が参加しました。水田の耕作放棄により深刻化している霞ケ浦の水源地の荒廃を食い止めるため、8つの企業と協働で谷津田再生事業を行い、完全無農薬で酒米を栽培し地酒を生産するビジネスモデルを各地で展開してきました。霞ヶ浦で増加し問題化している外来魚を漁協に捕獲してもらい、魚粉に加工した外来魚を流域の農協で野菜の栽培で利用してもらい、流域のスーパーで販売するビジネスモデルを展開してきました。多様な主体との協働により様々な課題に取り組んできました。
牛久市では、2004年から教育委員会の委託を受け、市内の全小中学校で持続可能な社会づくりへの学習(ESD)を行ってきました。2021年からは、SDGsをテーマに、各学校の地域特性にあわせ、環境のみならず福祉、産業、過疎化対策、防災など多岐にわたり、問題解決型から価値創造型(問題解決につながる事業提案づくり)への意識転換、発想転換を生徒に促す学習を実施しています。
地域課題に取り組む学習事例集
2022.8 認定NPO法人アサザ基金
岡山県を流れる代表的な河川旭川の最上流部に位置する真庭市の小学校と、同河川が流れ込む瀬戸内海に面する岡山市小串に位置する小学校で、それぞれの地域が抱える問題や課題を地域特性を生かして解決しようと取り組む子ども達が、山と海のつながりを通して交流を重ねながら、地域を超えたつながりを発見し、視野を広げていくことで、新たな発想やアイデアを求め学んでいきます。岡山エコサポーターズと協働で実施しています。
旭川の源流部、鳥取県との県境に位置する真庭市立中和小学校の子ども達と地域のお宝(特色)を探す学習を行いました。
牛が飼われていた当時に、地域によく見られたササユリや、今も川で見られるオオサンショウウオなどが、どのようなつながりに支えられて生きているのかを調べ、これからそれらの繋がりを守り、取り戻していくために必要なことを考えました。
旭川が流れ込む瀬戸内海に面した岡山市立小串小学校の子ども達と地域のお宝(特色)を探す学習を行いました。
お宝探しに出掛けてすぐに、子ども達は学校の裏山が放置竹林に覆われていることに気づきました。そして、ここが以前は雑木林や畑だったことを、地元の人から教えてもらいました。どうして、放置竹林が広がってしまったのか、人と自然の繋がりの変化から考えていきました。
学校の近くにある干潟に行って、生き物を観察しました。かつては、多くいたハクセンシオマネキなどの生き物が減ってしまった原因を、それらの生き物を支える繋がりを通して考えました。
旭川を通して山と海の子ども達が交流し、それぞれの地域の特色を再確認し、大きな繋がりの中で地域の問題や課題を捉え直し、新たな発想やアイデアを発見していきました。
海で学んだことを、山からきた子ども達に説明しました。
山で学んだことを、海からきた子ども達に説明しました。
交流して学んだことを発表合いしました。
エッセイ #桃太郎が来た
エッセイ 鬼ヶ島を探せ!
鬼ヶ島を探せ~その力は何処から来たのか
さあ、今日はどこに行こうか。わたしが生徒たちに呼びかけると、すぐに明るい声で教室がいっぱいになった。ハクセンシオマネキがいた干潟に行きたい。川で魚取りをしたい。森に行って虫を見つけたい。ここは、瀬戸内海に面した長閑な集落にある全校40名に満たない小さな小学校だ。
授業では、毎回地域のお宝探しに出かける。その名も桃太郎探検隊。いつの間にかそう呼ばれるようになった。ここが桃太郎ゆかりの岡山県なので自然の成り行きかもしれないが、いつ会っても明るく活発な生徒達がなにより桃太郎を想起させてくれる。
この子達が、生き物とお話や相談する方法の学習を重ねてきたのだから、猿や犬やキジと話したり協力し合ったりする桃太郎と相通じるのは当然かもしれない。子ども達は、様々な生き物達との対話を通して差異に満ちた自然の有り様、多様性の世界に向けて次第に目を開いていった。
この日は、海に川に山にと重ねてきた体験学習を振り返り、桃太郎探検隊の隊員達にわたしから新たな問いを投げかけた。桃太郎は鬼ヶ島に鬼退治に行ったけど、みんなもそろそろ鬼退治に行きませんか。ところで、鬼は何処にいるのかな、鬼ヶ島は何処にあるのかな。探検に出かける前にみんなで相談しましょう。
まず、わたしから生徒達に質問した。鬼とはいったい何者なんだろう。鬼は仕方なく鬼に成ったのかなという意見が出てきた。確かに、鬼は初めから鬼だったのではなく、いつの間にか鬼に成ってしまった者かもしれない。次に、鬼は強い。確かに、鬼は有り余る力を持ち、自分の力だけを頼りに生きようとしている。そんなイメージがある。よく鬼に金棒というが、金棒はまさしく武器だ。(鬼の力の源にあるものは何か、これが問題だ。鬼達は力を背景にした交渉ディールを対話だと思っている。だから、みな金棒を持っている。)そして、鬼はさびしそう。確かに、鬼は強いのに幸せそうではない、孤独で何かもの哀しい。
みんなの意見をまとめてみるとこうなった。鬼は、有り余る力を持つがゆえに、コントロールできなくなった力に支配されて生きている悲しい存在。その鬼が支配する場所が鬼ヶ島ということだ。その鬼が島には鬼しかいない。他の存在を排除して鬼だけが集まって暮らしている。そこは、究極の◯◯ファーストの世界だ。そして、鬼ヶ島で暮らす鬼たちは、集団内にいながら孤独で幸せそうではない。(鬼は差異の自然を楽しむことができない。選別と排除を鉄則に集合しているからだ。ついでに言うと、わたし達がよく使う違いを乗り越えるや違いを克服するなどという言葉の陰にも狡猾な鬼が潜んでいる。違いや差異は元々乗り越える必要も克服する必要もないものだからだ。差異を楽しむことができず、このまま差異を劣化させていけば、世界はますます貧しくなる。だから、差異の自然を創造的に豊かに生きる新しい生き方が必要である。)
それではと、生徒達に質問した。鬼のように有り余る力を持ってしまい他を排除して同類だけで生きようとしていて、幸せそうに見えないものは何だろう。すぐに、男の子が答えた「人間!」確かにそうだね。絶句しそうになったが、ここは何とかこらえて聞き直してみた。みんなと色々な所に探検に行ったけど、その時に鬼に成ってしまって悲しそうに見えたものはなかったかな。しばらく沈黙が続いたので、聞いてみた。みんなの学校の近くにも、鬼が島に成ってしまった所があるかもしれないね。ちょっと教室の窓から外の景色を見てみよう。
窓から覗くと直ぐにみんなの目に入ってきたのは、学校の裏山を覆い尽くそうとする放置竹林。藪に成ってしまった竹林だ。手入れをされなくなった竹が勢いを増し広がり続け周囲の森を侵食し、山全体が竹で覆い尽くされそうになっていた。竹が密集し見るからに息苦しい。殺伐としている。まさに、鬼ヶ島だ。
桃太郎探検隊は教室を出て鬼が島に向かった。鬼ヶ島化した竹林、つまり放置竹林の中に入って見ると、竹が占有し他の植物はほとんど見えない。おまけに枯れた竹が四方八方に倒れ掛かり空間を埋めていて歩くのもままならない。竹林の奥に入った子ども達は、生きている竹さえ苦しそうな殺伐とした光景に囲まれた。
これは大変、鬼退治をしなければ。たまたま持ってきたノコギリが一丁あったので、みんなが交代で竹を切って間引くことにした。何本か竹を切ると地面に日が当たるようになり風も通るようになった。短時間の作業だったが、竹林の中が少し心地良くなったことで、子ども達は、細やかな多様性、差異の自然が蘇ったことに気づいた。
今回の桃太郎探検隊では、多くの気づきがあった。鬼退治とは、鬼に成ってしまったものを力への呪縛から解放してあげること。そして、桃太郎についても。桃太郎は、世界に満ち溢れる差異を自然に受け入れ、多様な存在と対話し協力し合うことができた。つまり、桃太郎は、多様性あるいは差異の自然という新しい世界観によって鬼を退治(解放)することができた。(桃太郎の力は個の中からではなく、差異の自然や多様さの中から湧き上がってきたものだった。わたし達が未来に向けて必要とする感性とは、様々な力の有り様やその源泉に対する研ぎ澄まされた感性である。)
この気づきは、子ども達の世界を見る目を変えたかもしれない。そして、世界を変える魔法を手に入れた子もいたかもしれない。物語の中で、桃太郎は鬼ヶ島からたくさんの宝物を持ち帰った。この日、子ども達は切った竹を宝物のように大事に抱えながら山から降りて行った。 2018年1月15日 アサザ基金 飯島 博
かつて、北海道全域に生息していたシマフクロウの保護活動を行っているNPO法人シマフクロウ・エイドの皆さんと、シマフクロウと共生する地域づくりをテーマにした総合学習を、浜中町の小学校で実施しました。
学習のねらい
地域が抱える問題や課題を、シマフクロウを支える「海〜川〜森」にある多様な環境要素を大きな繋がり(広い視野)の中で捉え直し、自分の方法で文脈化体系化し、地域特性を「地域を支える基本構造」として捉え直すことで、地域への理解を深め、問題解決能力や生きる力を子ども達に育む。
総合学習を軸にした各教科との関連づけを意識しながら、地域特性を生かした問題解決や街づくりの提案へと発展させていく。
地域の問題や課題を構造的に捉える科学的かつ論理的な思考を身に付けることで、具体的で説得力のある提案を作り上げる力を養う。
自分たちの提案を実現するために生かせそうな地域の産業や生産物を見つけ出し、それらに新たな価値づけを行い新たな地域ブランドの創出につなげる。地域で生きることへの展望を持つ若者を育てる。
サケやマスが遡上する川の環境を観察して、シマフクロウが生息しやすい環境を調べる。シマフクロウが生息する環境を体感した。
シマフクロウが生息する森と海のつながりを調べるために、昆布を採取している漁師さんから話を聞く。昆布の生育には、森から海に送られてくるミネラルなどが不可欠であることを知る。
地元の酪農家から、酪農が抱える問題や課題や夢について話してもらった。それらを、シマフクロウを通して学習してきた大きな繋がりの中に位置付けて、解決の方法を考えた。
町役場の担当者や酪農家、お菓子屋さんなど、地元の方々を招待して、シマフクロウと共生する地域づくりの提案をして、意見交換をした。
霞ケ浦から国境をこえて
「生きものの道・地球儀プロジェクト」に平和を託したい
アサザ基金の事務所が牛久市南に移転したのが2012年の2月。東日本大震災の翌年ですからよく覚えています。デスクワークの部屋(リビング)の大きなガラス越しに、当時植えた1本の細いソメイヨシノは13年の月日を経て立派な桜の大木に近づいています。その枝葉は2階のベランダにもお隣さんの屋根にも届く勢い。この時期は豊かな葉を茂らせ、風にそよいで直射日光を防いでくれています。隣の楠木にはアオスジアゲハがヒラヒラと訪れ、今朝は駐車場でハグロトンボを見かけました。小さな池があるためかキジバトなどいろいろな鳥たちが水を飲みに訪れます。事務所の飼い猫は目をギラギラさせながら窓越しに狙いをつけているのが凄い迫力。
霞ケ浦の波打ち際で黄色い花をユラユラさせるアサザ群落がみられなくなってから、随分久しくなりました。今年は事務所の玄関上がり口に睡蓮鉢を置き、そこでアサザがお花を咲かせてくれています。I’m here と言っているように。その隣の鉢では稲の穂が実りの秋を迎えています。
湖と森と人を結ぶ霞ケ浦再生事業<アサザプロジェクト>が始まって30年。しかしながら、湖の再生にはまだまだ時間がかかりそうです。というか、地球の自然環境を取り巻く社会情勢は、まるで再生とは反対の方向にシフトしていると思えてなりません。世界を見渡せば、戦争をしている国もあります。もう何年も続いているのですから、こんなのんきな事を言っている自分が恥ずかしくてなりませんが。戦争など誰も望まないのに、世界各国は競うように軍備を増強し戦禍は収まるどころか拡大の方向。こんなことを言ったらきっと笑われるに違いありませんが、これは、きっと悪魔の仕業に違いない。
さて、10代から「生きずらさ」を漠然と胸に抱き、それは自分の性格や生き方に問題があるのでは?といろいろ思い悩んだこともありました。しかし、最近になってそれは自然環境が破壊された結果、なんだかぎゅうぎゅう詰めの住宅や車一杯、何処に行くにもアスファルトにおおわれ暑苦しい道路や車、やかましいテレビなど、決して心地よくない状態が日常化したこと。金銭でしかモノを取得できない拝金主義の世の中のしくみ。このような社会が少なからず要因しているのではと思うになりました。この生きづらさを子ども達には残したくないなあ。少しでも改善するにはどうしたら良いのでしょうか?
いきなり社会は変えられないですしねえ。
アサザプロジェクトには幻のプロジェクトがあります。もう10年以上前に作成した素敵なパンフレットにはこのような文言が・・・・
国際社会は、国家や民族、宗教の違いなどによる対立がやみません。
世界は、憎しみの連鎖におおわれようとしています。
戦争は最大の自然破壊です。
地球の営みのひとつに、野生生物の渡りや回遊があります
地球上には渡り鳥をはじめカエルなど身近な生きものにいたるまでの
壮大な生きものの道のネットワークが張り巡らされています。
いまは対立している国や地域どうしも、実はこの生き物の道で結ばれています。
このことを、子どもたちや地域間の交流によって再発見し
日々の暮らしの大切さを理解し合い、結びつき、平和な世界を築いていこう
どうでしょう、このプロジェクトを進めていくことが悪魔払いのきっかけになるのではと願います。
霞ヶ浦の水源となる谷津田でみなさんと一緒に取組んでいる米作りフィールドも、古民家のある里山の暮らしも生き物の道につながっています。そして実は、地球上のすべての人々、生き物にとっても、お互いの地域同士は生き物の道で結ばれているはずです。生き物の一員として私達人間も平和のメッセンジャーになりたいものです。
Let’s try ! Let’s begin !
2025年10月 諏訪
ノーモア・メガソーラー宣言および、いばらきエネルギー戦略の抜本的見直しを求める要望書を茨城県知事に提出しました。茨城県は、県内全域でメガソーラーを導入促進する計画です!このままでは、森林率が14%台にまで減少している霞ヶ浦をはじめ県全域に深刻な影響が及ぶことになります。未来に禍根を残さないためにも、早急に計画の見直しが必要です。
霞ヶ浦の水源地再生や里山の生物多様性保全、環境保全型農業、環境教育等に取り組んでみたい方、関心のある方は、ぜひご応募ください。
週1日から5日まで、一人一人のライフスタイルに合わせた多様な関わり方が可能です。お気軽にご相談ください。
事務作業や広報など組織運営に関わるスタッフも募集中です!
詳しい内容は、下の欄の採用情報をご覧ください。