NECフィールディング株式会社協働事業 「谷津田再生 レンコンづくりプロジェクト」とは?
① 概要
この事業で取り組む作物であるレンコンは、霞ヶ浦と関りの深い代表的な作物です。霞ヶ浦周辺は日本一のレンコン生産地であるため、レンコン栽培による湖への水質汚濁の負荷が大きいという課題を持っています。そこでこの取り組みでは霞ヶ浦を代表する作物であるレンコンに着目し、湖への流入負荷を削減し、霞ヶ浦再生につながるレンコンづくり、そのブランド化を通して、霞ヶ浦の再生と活性化を図る取り組みです。
霞ヶ浦で古くから栄えてきた歴史あるまち、土浦にある水源地谷津田をレンコンづくりで再生・保全します。土浦は霞ヶ浦の中でももっともレンコン栽培が盛んで、その栽培によって地域の農業が成り立っている一方で、霞ヶ浦への水質汚濁負荷が大きいとされています。そこで耕作放棄された谷津田をハス田(レンコンの水田)として再生、無農薬・無化学肥料は当然のこと、流出負荷もできる限り削減していく農法で水源地を保全していきます。さらにハス田は年間を通じて水が切れる時期がなく、(農法や収穫時期にもよりますが)冬も水を張っておく必要があるため、水の中で冬を越す生きものたちが暮らす場所として適しています。さらに水田に比べて湖との連続性が維持されているため、ハス田には湖から多くの魚類が産卵にやってきます。ハス田には、湖内では失われた浅い水域があるので、湖の生物多様性の保全・回復を図っていく場としても高いポテンシャルを有する場所であるといえます。
霞ヶ浦の水源となる谷津田では、農業の効率化が重視されて機械化が進むに従って、農地としての生産性が低い土地として耕作されなくなり、荒れ放題となって耕作放棄地が増えたことによって、水源地が持つ水の供給機能だけではなく、生物多様性の低下(メダカやホタルなどはほとんど見られなくなってきてしまっています)、里山の原風景の喪失といった問題も発生しています。耕作放棄地にはごみの不法投棄や残土の投棄など社会問題も起こってきている。そこで荒れてしまった水源地谷津田を再生させ、保全する取り組みのひとつとして霞ヶ浦を代表する水田作物であるレンコン作りにNECフィールディング株式会社のみなさんと2012年9月から取り組んでいます。
② 特徴
霞ヶ浦を特徴づける作物、レンコンづくりを通して、湖の環境保全への関心を高めていくことができる特徴を持つ取り組みです。また社員ボランティアが月1回集まって、耕作放棄された水田の再生作業から、その後のレンコン作りまで社員ボランティアが主体となって進めていく、社員参加による事業運営度が高い事業です。またつくば支店などから社員ボランティアが参加するなど企業活動のエリアと今回の取り組みの活動場所が重なるという点で初めての取り組みです。
③ 効果(見込みも含む)
・耕作放棄地の解消・・・まずは1300㎡の再生を目指します。今後の谷津田再生に生かすため、ボランティなどの人手による効率的な再生手法を作っていきます。
・生物多様性保全・・・ハス田は年間を通じて湛水状態なので、水辺の生きもののすみかとしての機能を持っています。その機能を発揮できるようなレンコンづくりを行うことで、多くの生きもののすみかとして機能するようになることが期待されます。生物多様性保全を図るこのモデルが広まることで、ハス田が持つ湖の周囲に多く分布する浅い湿地としての機能が活かされ、生きものの一大生息地となります。またこの場所は霞ヶ浦と川を通って生きものが行き来できる場であるので、それを活かし、湖と行き来する魚も呼び込み、産卵場となるなどの効果も期待されます。
・地域活性化・・・環境負荷の高いレンコン栽培で環境保全を図ることで、霞ヶ浦の主要作物であるレンコンに付加価値をもたせる新しいブランド化を進めます。これまでのレンコンづくりとは発想が異なる取り組みを行うことで、レンコンづくりに新たな流れを起こし、湖の環境保全、活性化を図ります。
④ 活動内容
月1回、社員ボランティアによる現地の生物調査とフィールドの再生と保全作業を行っています。2012年秋から草刈り、土中に無数に伸びた根を抜き取るなどの再生作業に取り組んでいます。2013年春に、再生できた部分でレンコンの植え付けを行い、無農薬でレンコンづくりに取り組みました。瞬く間に多くの生きものが見られるようになりました。そして2014年春に最初の収穫を迎えることが出来ました。今後は面積の拡大と生物層の充実、質の向上を目指して現場をよく観察しながら活動を続けていきます。
⑤ 位置づけ
・地域活性化:霞ヶ浦の再生につながるという文脈づくりを通して生まれる価値を地域ブランドであるレンコンに付加することで、新しい発想に基づくコンテキストブランドの創出につながります。コンテキストブランドの創出により、多くの人々との価値の共有が可能になります。
・社会を変える:地域経済を支える主力作物レンコンに新たな価値(霞ヶ浦の再生)を付加することで、人々の価値観を変えていくことにつながります。
・環境教育: 地域を代表する資源を湖の自然とのつながりをとおして再評価することで、物語(付加価値の連鎖)を持つブランドを作ることができるという事例を学習する場となります。地域の環境保全と活性化を同時に進めることができるということを学ぶ場になります。
・企業との協働: レンコンづくりを通して、企業活動では構築できなかった地域とのつながりを作ることができ
ます。この新たなつながりから新たな展開が生まれる可能性があります。
・循環型社会: 地域の中でサービス展開する企業、そして社員が循環型社会の構造が残る谷津田でこのような取り組みを行うことで、流域内で空間展開している企業活動と里山の循環がミックスされた新しい循環型の取り組みが生まれる場になるポテンシャルがあります。
・自然再生・生物多様性: ハス田は生産の場としての機能のみが注目されていますが、年間を通じて湛水状態にあること、湖に連続した浅い湿地として捉えることができることなど、湖の生物多様性の保全を図るための高いポテンシャルを有していると考えられます。そこでその機能を今回の取り組みで証明し、流域に広がるハス田に広がることで流域の自然再生を図ります。