従来の公共事業は個別型自己完結型事業の典型であり、湖の環境や社会を分断しバラバラにする役割を果たしている。このような公共事業が継続され続ける限り、湖と共存するための社会システムを構築することは困難である。従来の公共事業は決まった点と点を結ぶ事業であり、各省庁の縦割りが反映されるため、他の事業との関連性がなく、そこには利権も生じやすい。
もうひとつは、行政が過去に決定した公益に基づいて公共事業が実施されることで、環境破壊を引き起こしているという問題である。「公益との調整」は自然保護の展開を阻む大きな壁となっている。公益の見直しを避けては、真の自然保護や環境保全は実現できない。わたしたちの社会における公益とは固定したものではなく、社会変化(ネットワーク型循環型社会の構築)に伴いそのあり方は大きく変わるものである。
社会に循環を生み出すためには、個々の取り組みや技術が自己完結しないことが重要である。取り組みが取り組みを連鎖的に生み出しながら、ネットワークが生成されるような展開が必要となる。それにより、公共事業も分野の境界を越え、地域全体に波及効果を及ぼすことができるようになる。これによって、公共事業が根本的に変わる。
市民型公共事業は、ある事業の波及効果が広域ネットワークをとおして地域全体に、自然のネットワークと重なり合うように、既存の枠組みを越えて広がる公共事業であり、生活者の視点をもったNPOがコーディネーターとなって展開するものである。