京都

京都ハグロトンボの道
~涼のネットワークづくりの提案~

概要 「京都だからできる涼のネットワークづくりを提案します!」

自然環境を考えるとき都市の問題は避けて通ることが出来ません。
自然と切り離された空間としての都市を、自然(生きもの)と対話する都市へ、どのようにして変容させていくのか。21世紀の地球的課題です。
わたしたちは、その取り組みのモデルとなる都市のひとつが京都だと考えます。
京都議定書が目標とする地球温暖化の防止という課題にも、自然(生きもの)と対話する都市への変容が不可欠です。自然(生きもの)と対話する都市は、温暖化防止の達成目標も単なる数値目標ではなく、具体的な生きものとの共存として示すことができます。
生きものとの対話は、都市の歴史や文化、自然特性、立地条件、コミュニティ機能等を再評価することへと導きます。生きものとの対話は、人々に豊かなイメージを与え、行動を促します。生きものとの対話は、新たな結び付きを生み、都市を活性化(内発的発展)するでしょう。

これは、今も京都市中心部で見ることができるハグロトンボをシンボルとしたネットワークづくり(自然・生きものと対話する都市づくり)の提案です。
ハグロトンボは川の中で幼虫(ヤゴ)時代を過ごし、成虫(トンボ)になると川から離れた涼しい木陰などで夏を過ごします。初秋には再び生まれ故郷の川に戻り水草に卵を産みます。
現在の京都市内でもハグロトンボを見ることができるのは、川と木陰を結ぶ涼の道がまだ残っている証拠です。ハグロトンボは涼のシンボルなのです。
現在ハグロトンボを見ることができる都市は極めてまれです。でも、わたしたちは昔の京都にはもっと広がりのある涼の道(ハグロトンボの道)があったと考えています。それは、かつて自然と対話する都市があり、涼を作り出す人々の知恵の生きた都市があったと考えるからです。
この京都で、ハグロトンボとの対話をとおして、自然と共存する都市を創り上げるための文脈を探り当てることができるのではないでしょうか。

背景 「都市の基盤となる歴史と文化、立地条件を活かす」

地球温暖化対策のための議定書が作成された京都で「自然(生きもの)と対話する都市づくり」「涼のネットワークづくり」が行なわれる意味は大きいと思います。
地球温暖化対策やヒートアイランド現象の防止のためには、個別的で部分的な取り組みでは不十分です。
それには都市全体を覆うネットワークが必要です。
さらに、そのネットワークは都市全体を自然と結びつけるものでなければなりません。

京都は緑豊かな山々(生物の供給源)に囲まれ、それらの山々から都心部へ向けて川が流れ込んでいるという立地特性と、寺社(緑地)などの空間配置(ネットワーク)という歴史的背景から、その条件に恵まれた都市といえます。
その条件を示す生物のひとつがハグロトンボです。
涼のシンボルであるハグロトンボのネットワークを復活させることは京都の歴史や文化を活かした温暖化対策となります。

目的 「地域コミュニティ活性化と連動した、“涼”の都市づくり」

人と自然のネットワークを作るためには人と人、土地と土地、人と土地を結びつける文脈づくりが必要です。
わたしたちはこの文脈づくりのシンボルとして、夏の日の涼の風景の一部として人々の記憶に刻まれているハグロトンボを提案します。

「京都ハグロトンボの道・涼のネットワークづくり案」は、ハグロトンボの道(ネットワーク)の復活をとおして、京都から「自然と共存する未来都市」のモデルを世界に発信しようというものです。
このプロジェクトは、都市全体を視野に入れた自然再生事業として位置づけることもできます。都市に自然(生きもの)のネットワークと重なり合う社会のネットワークを構築することを目標としているからです。そのためには、都市の中に新しい結び付きやつながりが求められます。
京都の土地条件や歴史的背景、文化を再評価し、新しい発想で地域コミュニティ、学校教育などをネットワーク化し活性化する取り組みが必要です。
つまり、都市の自然再生は都市の活性化にもつながるのです。 ハグロトンボの道を都市に再生するためには、緑地のネットワークだけでは不十分です。都市全体の廃熱量を抑制し温度上昇を抑えることが不可欠です。
そのためには冷房の温度設定や自動車の利用などライフスタイルの変更も求められます。
これは同時に地球温暖化の防止に都市全体で取り組むことにもつながります。
地球温暖化の防止やヒートアイランドの防止といった取り組みの達成目標はふつう数値によるもので目に見える目標を設定していません。そのことが目標を共有し取り組みを広げることを困難にしている背景にあると思います。

ハグロトンボという具体的な生物を目標として示すことで、地球温暖化防止などへの取り組みを人々がより身近に感じることができ、日常化できるのではないでしょうか。

手法 「ハグロトンボに学ぶ都市の中のネットワークづくり」

①現在のハグロトンボ分布調査(市民・観光客対象) 温度分布・風の道、環境調査の実施。
②かつてのハグロトンボ分布調査(市民対象“聞き取り”アンケート、古文書類)
③目標設定 「○○寺の庭園にハグロトンボのいる景観を再生する」
④③に沿って、○△川から○○寺までハグロトンボが移動するための道を作る。
※各学区単位における総合学習の一環として行う。
⑤子ども達と地域住民、専門化が一緒に道づくり(涼のネットワークづくり)を考える。
・例えば、学校ビオトープ、小緑地、屋上緑化、壁面緑化、ヨシズ、打ち水など。
・例えば、冷房などの排熱の抑制(生活の見直し、CO2削減計画)
・例えば、涼を作る伝統的な暮らしから学ぶ。涼を作る建築など。
・例えば、ハグロトンボの生息する川の環境改善。ハグロトンボの生息に必要な沈水植物は水の汚れに弱い。
⑥各学区(地域コミュニティ)ごとに道づくり案を作り、市内の小学校同士で報告しあう。
⑦それらの提案やデータを基に涼のネットワークづくりの提案を行なう。
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ハグロトンボとは

京都市内では都心でもハグロトンボの姿を見ることができる。
それは京都が山々に囲まれ、それらの山々から都心部に向けて川が流れ込んでいるため。川は生きものの道なのです。
都心と山々とが川で結ばれている都市のシンボル、それが ハグロトンボ 。
幼虫時期(ヤゴ)を水草のある流れの中で過ごしたハグロトンボは成虫(トンボ)になると川からいったん離れ木陰や日かげのある緑地へと移動する。
霞ヶ浦流域ではハグロトンボの移動距離は500m程度。
あまり遠くまでは飛んでいけない。涼の飛び石が必要なのです。

体のつくり

体長 7cm~9cm 全身が光沢の強い金緑色、黒い羽を持つ

生態

主に平地や丘陵地のヨシやミクリなどの抽水植物やエビモ、クロモ、セキショウモなどの沈水植物が繁茂するゆるやかな流れに生息する。
幼虫は主に流れに揺らぐ藻などの茂みで、植物につかまって生活している。

羽化

抽水植物に定位して夜半から早朝に行う。

未熟個体

羽化水域からやや離れた薄暗い林地に移って木漏れ日が差し込むような林生でしばらく生活する。
初夏の頃、神社のこんもり茂った薄暗い森影でたくさん見かけるのは全て未熟な固体である。飛翔は活発でない。

成熟個体

成熟すると水辺に戻り、比較的明るい岸辺や抽水植物あるいは沈水植物の水辺から突出した部位などに止まって縄張りを確保する。このときは飛翔も活発である。
(以上、北海道大学図書刊行会「原色日本トンボ幼虫・成虫大図鑑」より引用)
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茨城県牛久市で撮影

展開状況

2010年5月より、京都市立紫竹小学校が、この学習プログラムを実施しています。
今後この学習をとおして、賀茂川を軸とした未来の京都市を提案する予定です。

ハグロトンボ分布図(イメージ図)と、涼のネットワーク(イメージ図)

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